投資信託のコスト(1)信託報酬のワナ
トウシル / 2021年1月23日 8時0分
投資信託のコスト(1)信託報酬のワナ
信託報酬の「高い」「安い」で比べがちな投資信託だけど…
信託報酬をはじめとする、投資信託の「コスト」は、誰が見ても同じ料率で分かりやすいため、つい複数の商品(ファンド)を並べて「高い」「安い」と比べたくなります。
しかし、あまねく投資信託の良しあしを信託報酬だけで判断できるかというと、残念ながらそういうわけではありません。
今回は、投資信託にまつわるコストの中でも特に誤解の多い、信託報酬に焦点を当てて解説をします。
ところで信託報酬とは?
信託報酬とは、投資信託の運用期間中に間接的にかかる費用のことで、どの販売会社で購入するかは関係なく、一律の料率が適用されます。実際には、目論見書に記載されている年率の値が日割りされ、基準価額の計算時に費用として投資信託財産から支払われています。
つまり、毎営業日公表される投資信託の基準価額には、すでに信託報酬が反映されており、投資家が別途手数料を支払う必要はありません。
では、ここで、信託報酬の理解度をチェックするために、1問クイズを出題します。
※1は日経平均株価に連動した投資成果を目指すインデックス型ファンド、2はTOPIX(東証株価指数)をベンチマークとしたアクティブ型ファンドです。
※いずれも、販売手数料は無料(ノーロード)であると仮定した場合。
※データはいずれも2020年12月末時点。騰落率は分配金再投資後のトータルリターン。両ファンドとも、記載されている信託報酬以外の手数料はかからないものとします。
信託報酬控除後の運用成績がよかったのは、どちらのファンド?
解答
2:One国内株オープン
運用成績よりも先に信託報酬の値に目がいってしまった方は要注意です。インデックス型の「たわら」のほうが信託報酬は圧倒的に低いですが、年率1.760%のコストをかけて運用した「One国内株オープン」のほうが、最終的に10ポイント以上高いリターンをあげることができました。
信託報酬に目を奪われて、リターンを逃すファンド選びのワナ
繰り返しになりますが、信託報酬は、基準価額の計算時に投資信託財産から日々支払われています。つまり、毎営業日公表される基準価額にはすでに信託報酬が反映されているため、「騰落率」として示されている数値がそのまま投資家のリターンになります。
最初から信託報酬の水準を条件にしてファンドを絞り込むことは、アクティブ型の醍醐味(だいごみ)である、超過リターンの可能性を放棄することにつながります。
そもそもインデックス型とアクティブ型を信託報酬率で比べることほど無意味なことはありません。
アクティブ型の場合、インデックス型のように運用方針が「完全一致」した商品というのは決して多くありません。運用方針が異なれば、期待されるリターンも、背負うリスク量も異なるため、コストだけで商品を比較するのには限界があるのです。
正しくアクティブ型を見極めるには?
アクティブ型の優劣を見極める指標としては、単純な騰落率の他、シャープレシオや各種のファンドスコアなどがあります。前提はあくまでも結果としてのリターンであり、コストは副次的な要素として参考程度に確認するにとどめておいた方がよいでしょう。
インデックス型は信託報酬が安いものを
ただし、インデックス型同士の比較だと事情が少し異なります。同じベンチマークに連動するインデックスファンド群から商品を選ぶ際は、基本的に信託報酬が安いものを選んで差し支えありません。インデックス型の場合、投資期間が長期になればなるほど、信託報酬率の差が運用成績の差として反映されるためです。
以上をまとめると、信託報酬で商品を絞り込んでよいのはインデックス型のみということになります。
コストに関する正しい知識を身に付けることは、優良な投資信託を選ぶためにも重要です。まずはコストへのこだわりにがんじがらめになっていないか、ご自身の投資判断を見直すところから始めてみましょう。
(篠田 尚子)
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