日経平均・NYダウの「下げない強さ」に揺らぎ。この乱気流は中期的な転換点か?
トウシル / 2021年2月1日 13時17分
日経平均・NYダウの「下げない強さ」に揺らぎ。この乱気流は中期的な転換点か?
下方向の意識強まる日経平均。反発の可能性も残る
1月最終週となった先週の国内株市場ですが、29日(金)の日経平均は2万7,663円で取引を終えました。週足ベースでは5週ぶりに反落し、その下げ幅(968円)も大きくなっています。とりわけ、週末にかけての下落が印象的でした。
■(図1)日経平均(日足)とMACD(2021年1月29日取引終了時点)
あらためて先週の日経平均の動きを振り返ってみると、5日移動平均線を挟んだ小動きの展開から、週末にかけての2日間で株価水準を切り下げる展開となりました。そして、29日(金)に出現した大きな陰線によって、25日移動平均線を下抜けています。さらに、下段のMACDについても、27日(水)にシグナルを下抜けるクロスが出現しており、日足ベースでは下方向への意識が強まりつつあります。
その一方で、29日(金)の株価は、昨年10月末からの上場相場の上げ幅に対する23.6%押し(2万7,556円)の辺りに位置しており、「テクニカル的な押し目でいったん下げ止まっている」という見方もできます。ちょうど年末年始の株価水準でもあり、目先の株価が反発していく可能性も残されています。その場合、27日(水)~28日(木)に空けた「窓」を埋められるかが焦点になります。
反対に、先週からの下げが続くのであれば、次の38.2%押し(2万6,675円)が下値の目安として意識されることになりますが、これは昨年11月末から12月半ばにかけて3週間ぐらいもみ合いを続けていた株価水準です。
トレンドは維持されているが、転換の兆しが出現
続いて、週足チャートでもトレンドに変化がないか確認していきます。
■(図2)日経平均(週足)の線形回帰トレンドとMACD(2021年1月29日取引終了時点)
週足のチャートでは、先週の下落によって、上放れしていた線形回帰トレンドの+2σ(シグマ)のあたりまで押された状況です。また、下段のMACDについても、下向きに方向を変えているものの、シグナルとのクロスはまだ実現していません。クロスが発生するまでは、トレンドが転換したと判断するには早いと言えそうです。
ただ、強いて言えば、先週と前週のローソク足の組み合わせが「抱き線(包み足)」となっている点には注意が必要です。一般的に、天井圏での抱き線の出現は転換の兆しになりやすい形とされています。
今週から2月相場入りとなりますが、引き続き国内外の企業決算動向をにらみながらの展開となる中、月初恒例の米雇用統計が週末に控えているほか、7日(日)に期限を迎える国内緊急事態宣言の解除・延長の議論、さらに翌週には中国の春節を迎えるというタイミングでもあります。
「材料やイベントが多いことで、方向感が出にくくなりそう」というのが基本的な想定シナリオになりますが、米株市場で発生した、個人投資家による一部の投機的な取引をめぐる動きが警戒材料として浮上してきたことは気掛かりです。
NYダウも下げ足を早める
■(図3)米NYダウ(日足)とMACD(2021年1月29日取引終了時点)
NYダウも週末にかけて下げ足を早める格好になっています。その前は3万1,000ドル近辺でもみ合う展開が続いていたため、丸く山を描くような天井圏(ラウンドトップ)を形成しているように見えます。株価と移動平均線との絡みでは、25日移動平均線の下放れと75日移動平均線への接近、5日と25日移動平均線の「デッド・クロス」、そして、下段のMACDも、前週に下抜けクロスが出現し、その後も下向きに推移しています。
■(図4)米NYダウ(週足)とMACD(2021年1月29日取引終了時点)
また、週足でみたNYダウは、株価水準は13週移動平均線がまだサポートとして機能しているほか、MACDの下抜けクロスもギリギリのところでまだクロスになっていません。一応、NYダウも日経平均と同様にまだトレンド自体は崩れていないと言えますが、MACDから見るとあまり楽観できない状況です。
米個人投資家の投機的な取引が下落に拍車をかけた
日米ともに「下げ切らない強さ」を幾度となく発揮してきたこれまでの相場は、先週になってまとまった下げを久々に見せたわけですが、今後の展開を予想する上で最大のポイントになるのは、先週の株価下落に拍車をかけたのが、新型コロナウイルスでも企業決算でもなく、米個人投資家による一部の投機的な取引と、それに伴う状況だったという点です。
この投機的な取引とは何かを簡単に整理すると、個人投資家がSNSなどを通じて連携し、空売り残高の多い銘柄に集団で買いを仕掛け、空売り残高を積み上げていたヘッジファンドに損失を発生させて圧力をかけるというものです。
実際に、ターゲットとなった銘柄の株価が上昇し、ヘッジファンドが損失を抱え、買い戻しや追加担保の確保に迫られる事態となりました。それに伴い、対象の銘柄も企業の本来の実力とはかけ離れた株価になっています。
こうした事態は、一部の銘柄による局所的な動きであり、「相場への影響は一時的」という見方が多いようですが、今回の個人投資家の行動が「共謀や株価操作にあたるのか」をはじめ、個人の大量の注文が殺到して「取引システムの障害が相次いで発生した」こと、個人投資家に対して取引制限を実施した「ネット証券会社の対応の是非」や、その証券会社のひとつであるロビンフッドの「ビジネスモデル(顧客の注文データを機関投資家やマーケットメーカーに提供して収益を得る)の正当性」など、さまざまな論点や問題、課題が浮き彫りにされています。
さらに、資金を確保するためにヘッジファンドが他の銘柄を売却するなど、他の銘柄にも影響が出ているほか、投機的な値動きを敬遠する投資家の株式市場離れ、そして、こうした事態を生み出す遠因となった金融緩和自体に対する批判などに発展してしまうことも考えられ、思ったよりも影響が長引く可能性があります。
いずれにしても、これまでの「下げない強さ」に揺らぎが生じ、今週の日本株は大きく上下に振れる乱気流に立ち向かうことになります。目先で反発する場面があったとしても、これまでのような積極的に上値を追う展開にはなりにくく、神経質な値動きを意識しておく必要がありそうです。
(土信田 雅之)
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