予想を上回る好決算発表、上値余地がある米国株5選。大型テックはマイクロソフトが優位
トウシル / 2021年2月2日 4時0分
予想を上回る好決算発表、上値余地がある米国株5選。大型テックはマイクロソフトが優位
先週決算を公表した銘柄から、売上高、EPS(1株当たり利益)共に市場予想を上回り、市場平均の目標株価とかい離がある銘柄を5銘柄紹介します。このうち3社は、大型テック銘柄のマイクロソフト、アップル、フェイスブックですが、好決算だったとはいえ今後の見通しには差が出る見込み。新型コロナウイルスの特需やその反動を切り抜け、長期的な成長トレンドを最も強く描けるのはマイクロソフトと考えています。そのほか、住宅建設大手のD.R.ホートン、ヘルスケアのアボットラボラトリーズに注目しています。
1.マイクロソフト
2.D.R.ホートン
3.アップル
4.フェイスブック
5.アボットラボラトリーズ
1.マイクロソフト(MSFT):つながりが深い大手企業の効率化ニーズを取り込み高成長中
2021年2Q決算は、前年同期比17%増収、29%営業増益。前四半期の11%増収、25%営業増益から成長速度が加速。全てのセグメント(「プロダクティビティ&ビジネスプロセス」「インテリジェントクラウド」「モアパーソナルコンピューティング」)で増収率が加速。特に、「Azure」などのコマーシャルクラウドが34%増収と高成長。会社側は現在の事業環境について、「各企業や各産業でデジタルトランスフォメーションの第二波が到来しつつある」とコメントした。
「Azure」の売上高は50%増。クラウドとオンプレミス(自社設備による情報システム)のハイブリッド利用を促進する「Azure Stack HCI」や「Azure Arc」が、クラウドに完全移行していない伝統的な大企業を取り込んでいるもよう。企業向けアプリケーションソフトウエア大手のSAPとの提携拡大も進めており、今後も利用企業の拡大が期待できる。
その他、コミュニケーションツールの「Teams」やゲームも堅調だが、伸び代としてローコーディング(最低限のコーディング)でデータの収集や解析・予測ができる「Power Platform」に注目したい。足元ではワクチン配布の効率化に向けて、ミネソタ州、ネブラスカ州、オクラホマ州が同プラットフォームを活用しているもよう。使い慣れたエクセルのように簡易なコーディングで分析できる点と、同社の他のサービスと連携している点に強みがあることから、「Azure」と同様に大企業の需要を取り込む可能性がある。
2.D.R.ホートン(DHI):住宅建設首位、値ごろ感ある価格帯が購入希望者の需要を掴む
2021年1Q決算は、前年同期比48%増収、84%純増益。販売住宅数は56%増、契約数は45%増。住宅市場が活況に推移するなか、値ごろな価格帯に強みを持つ同社が住宅需要を取り込んだ。平均販売価格314,200ドル。同社によると1月も販売が堅調のもよう。利益率も改善しており、販売価格の値上げ等を背景に、住宅販売の粗利益率は前年同期4.1ポイント上昇の24.1%、販売管理費比率は前年同期から1.3ポイント改善した。
今後のリスクは原材料の値上がりだが、会社側は「原材料の値上がりは値上げで吸収できる見込みであり、2Qの粗利益率も1Qと同等になるだろう。今後も、販売価格、販売インセンティブ、そして住宅提供のペースをコントロールすることによりリターンの最大化を図る」とコメントしている。
中長期的には、住宅購入が遅れていた若者の新居購入、バイデン政権による移民規制の緩和等、相対的に値ごろ感のある住宅を求める人々の需要に期待が持てる。販売価格の上昇は彼らにとってネガティブだが、住宅購入者は自宅が必要のため購入をする面があり、彼らが提供できる金額でいかに満足度の高い住宅を提供できるかが焦点となる。
※D.R.ホートンの詳細記事はこちら
3.アップル(AAPL):全カテゴリー好調。フィットネス体験等、時代の新しいニーズがチャンスに
2021年1Q決算は、前年同期比21%増収、31%営業増益。売上高は過去最高となり、各プロダクトカテゴリーが2桁成長となった。地域別でも全てのエリアの売上高が過去最高を更新。インストールベースのアクティブディバイス数は16.5億台に拡大した(そのうちiPhoneは10億台)。
カテゴリー別では、iPhoneが、新作「iPhone12」の寄与により17%増収。そのほか、「iPad」も、教育ツールとしての活用が広がったこと等から41%増収と好調。会社側によると「iPad」はドイツや日本の学校での導入が進んでいるもよう。さらに、今後の成長軸として注目が集まる「ウエアラブル、ホーム&アクセサリー」も、最新の「Apple Watch」「AirPods」「HomePod」が寄与し30%増収となった。ただし、2Q以降は、前期にコロナウイルス特需や「AirPods」のヒットがあった反動でハードルが高くなる点に注意が必要。
今後特に注目したいサービスは、月額9.99ドルのサブスクリプション型フィットネス体験サービス「Apple Fitness+」。12月に米国で開始しており、今後はこれが「Apple Watch」購入の動機になる可能性がある。「Apple Fitness+」では、世界トップクラスのインストラクターが提供するさまざまなエクササイズ動画と「Apple Watch」を連動させることができ、ユーザーは心拍数や消費カロリー、カウントダウンタイマーを動画画面に表示することができる。オプションで他のユーザーのパフォーマンスと比較することもできるようだ。
4.フェイスブック(FB):着地は良かったが、会社側は今後の見通しに慎重
2020年4Q決算は、前年同期比33%増収、44%営業増益と好調。フェイブック・デイリーアクティブユーザー数は11%増の10.84億人まで拡大した。
ただし、会社側は今後の見通しに慎重。新型コロナウイルスの拡大とワクチン接種が同時に進むなか、IT関連製品やガジェットなどの人気が一巡する一方、旅行業などのサービス業態は本回復まで時間を要する可能性があり、広告主の需要の先行きが見えづらい状況のようだ。それに加え、プライバシー関連の規制の影響にも不透明感が残る。
個人的に注目していたオンラインショッピングサービス「Shops」については、会社側は堅調とコメントしながらもまだスタートして間もないということで、具体的な数字やエピソードが確認できず物足りなさが残る。
5.アボットラボラトリーズ(ABT):医療機器や新製品の寄与により、新型コロナ特需で終わらない高成長を目指す
2020年4Q決算は、29%増収、75%営業増益。同社は、ジェネリック薬、診断製品、栄養製品、および医療機器を展開するヘルスケアカンパニーだが、2020年は新型コロナウイルスの拡大により医療機器の販売が低迷した一方、感染診断の関連製品に特需が発生した。
会社側は2021年について強気の見通しを公表。EPSを前年比35%増の5ドル以上にすると発表した。これは、パンデミック前の2019年度の50%以上の水準にあたる。これを達成する要素として、(1)ワクチン接種が進むなかでも、引き続き診断製品の需要が発生すること、(2)新型コロナウイルス感染の病床率が改善することによって、前年に苦戦した医療機器の需要が回復に向かうこと、(3)栄養製品の「Nutrition」(乳幼児等、大人を対象にした各種栄養補助剤)が引き続き伸びること、(4)パイプラインや新製品の寄与、を挙げている。例としては、今月、連邦医療保険プログラムのメディケアが、心臓の弁を修復する当社の「MitraClipG4」の補償範囲を拡大している。
(松村 梨加)
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