日経平均3万円でも「日本株は割安」と判断する理由(その2)
トウシル / 2021年3月10日 7時40分
日経平均3万円でも「日本株は割安」と判断する理由(その2)
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 [動画で解説]日経平均3万円でも「日本株は割安」と判断する理由」
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今日は、昨日のレポートの続きです。昨日のレポートは、以下からお読みいただくことができます。
2021年3月9日:日経平均3万円でも「日本株は割安」と判断する理由
「失われた20年」から「復活の20年」へ
日経平均3万円を「バブルだ、いつか来た道だ」と言う人がいますが、私はそうは思いません。私は過去25年日本株ファンドマネージャーをやってきた経験があり、30年前のバブルも見てきました。
今と30年前では、同じ日経平均3万円でも日本企業の財務内容や利益水準がまるで異なります。30年前の日経平均3万円は利益や配当で説明できないバブルでしたが、今は利益や配当の価値で説明できる水準と言えます。
日本企業は平成に入ってから「失われた20年」を経験しましたが、その時に行った構造改革の成果で今「復活の20年」に入っていると考えています。
平成・令和の日経平均推移:1988年12月末~2021年3月(9日)
平成最後の10年間(2010~2019年)は、構造改革の成果によって、日本企業が新たな飛躍を始めたと考えています。令和の最初の10年(2020~2030年)は、その成果を刈り取っていくタイミングと予想しています。
日本企業をよみがえらせた平成の構造改革
リーマンショックを経て、復活の10年が始まりました。日経平均が一時3万円を超えたのは、失われた20年で行った構造改革の成果と考えています。その内容は、以下の通りです。
1998~2005年の構造改革
◆輸出企業は海外生産主体に
今の日本企業は原則として、海外現地生産・現地販売を徹底しています。アジアで生産して欧米へ輸出するパターンもあります。日本で生産して輸出するものは、日本特有の高付加価値品に限定するようにしています。
そうすることに、2つのメリットがありました。まず、米国などとの貿易摩擦が起こりにくくなったこと。1987年には日米貿易摩擦が激烈になり、一時は米国議員が日本製品を議会で金づちで叩き壊すといった感情的な対立に発展していました。今の米中貿易摩擦に似た状況でした。
ところが、日本企業はその後米国での現地生産を拡大させたため、今は米国と貿易摩擦が起きにくくなっています。
海外現地生産には、もう1つのメリットがあります。日本の輸出企業が、円高でもダメージを受けにくくなったことが挙げられます。さらに、日本で工場労働者が集まりにくくなった問題も、海外現地生産を拡大することで解決しています
中国企業もこれからは米国での現地生産を増やして、米国との摩擦を避けることが必要です。ところが、米中の政治対立が激化して、それができにくくなっています。日本企業は早くから、海外での現地生産を立ち上げてきたことで米国社会に溶け込みましたが、中国企業には当分、それができそうにありません。
◆金融危機を克服
10年以上かかりましたが、日本の金融機関は、不動産バブル・不良債権の処理を完了しました。大手銀行の破綻や合併が相次ぎ、13行あった都市銀行は、3メガ銀行グループに集約されました。今、3メガ銀行グループとも、強固な財務を手に入れています。
◆生き残りをかけた合併・リストラが進む
金融・化学・鉄鋼・石油精製・セメント・紙パルプ・医薬品・小売業などで、生き残りを賭けた合併・リストラが進みました。1998~2005年は、戦前からのライバル企業がどんどん合併・経営統合し、経済史に残る「大合併時代」となりました。
◆財務体質を改善
日本中の企業が借金返済にまい進。借金過多のバブル時より財務が大幅改善。無借金企業も増えました。財務余力を使って、増配や自社株買いなどに積極的に取り組む企業が増えました。
◆省エネ・環境技術をさらに進化
日本は1970年代以降、省エネ・環境技術で常に世界をリードしてきました。2000年代の資源バブルでさらに技術優位を広げました。今、自然エネルギーの活用で出遅れていますが、化石燃料の効率活用では世界トップクラスの技術を維持しています。
2006~2013年の構造改革
◆内需産業が海外で成長
内需産業(小売り・食品・サービス・化粧品・金融・陸運など)が海外(主にアジア)に進出。日本の厳しい消費者に鍛えられた日本の内需産業は、アジアでは高品質サービスで高い競争力を持つことができるようになりました。
その成果で、人口が減る日本の内需産業である、小売業・食品業には、アジアで売り上げを拡大する成長企業が多数出るようになりました。
◆ITを活用した技術革新が進む
ITを駆使した成長企業が増えてきました。AI(人工知能)・IoT(モノのインターネット)の本格的な活用が始まりました。製造業でも、サービス化・IT化に対応した「脱製造業」のビジネスモデルが広がりつつあります。サービスロボットを活用した、サービス産業の生産性向上も進み始めています。
◆海外で巨額のM&Aを仕掛ける
日本企業が大型M&A(合併・買収)を次々と実施し、海外企業を買収。海外進出を加速しています。
◆働き方改革・ガバナンス改革
まだ道半ばですが、労働生産性を高める働き方改革、ガバナンス改革が、急速に進んでいます。コロナ禍で、リモートワーク・リモート会議が広がっていることも働き方改革の加速に貢献しています。
令和で「飛躍の10年」に
令和に入り、世界はコロナショックに見舞われました。2020年4~6月の世界景気は「戦後最悪の落ち込み」となりました。それでもワクチンが一定の効果を発揮すれば、2021年の後半にはコロナが収束に向かう期待が出ています。
コロナ変異種の拡大もあり、いつまでにコロナが終息するか見通せない状況ですが、20~30年の長いタームで見ると、コロナショックですら後から振り返って「一時的なショック」とレビューされることになると考えています。その「一時的」が1年なのか2年なのか、現時点では明確にわかりません。ただ、いずれ人類はコロナを克服し、世界経済を正常化に向かわせると思います。
私は、令和に入って最初の10年、平成の構造改革の結実によって、日本株がさらに飛躍する時期になると予想しています。
(窪田 真之)
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