FRB金利見通し。ドル/円はガス欠に?一連の中央銀行の政策委員会後に注目
トウシル / 2021年3月17日 15時10分
FRB金利見通し。ドル/円はガス欠に?一連の中央銀行の政策委員会後に注目
16日の米ダウは8日振りに反落しました。それまでは7日連続上昇し、4日連続で最高値を更新する大活況でした。米長期金利も高止まり状態となっており、ドル高が持続し、ドル/円は109円前後で底堅い展開となっています。
今週は、FOMC(米連邦公開市場委員会:16~17日)、MPC(英国の金融政策委員会:17~18日)、日銀政策決定会合(18~19日)が開催予定で中央銀行週間となっています。従って、発表までは動きづらいところですが、ドルの底堅い展開は続きそうな気配です。
FOMCでテーパリングはどう語られるか?
FOMCで注目されているのは、FRB(米連邦準備制度理事会)がテーパリング(資産買入れ額の縮小)や利上げまでの道筋を示すのか、あるいはテーパリングまでだけの道筋を示すのかどうかという点です。ただ、FRBの大方針である「2%超のインフレ率と雇用の最大化という政策目標のためにゼロ金利政策と量的緩和政策を長期間続ける」との姿勢は引き続き表明することが予想されるため、道程の具体的な表現は示さないかもしれません。しかし、具体的な表現で示さなくても、FOMCメンバーによる経済見通しの中の金利見通しがそれらのことを示唆する可能性があるため、金利見通しを特に注目する必要があります。
FRBは「2023年末までゼロ金利維持」というメッセージを発していますが、昨年12月時点の金利見通しでは、このメッセージ通り、FOMCメンバー17名中12名が2023年末までのゼロ金利維持を予想していました。しかし、今回は、景気の早期回復の期待から2023年の利上げ見通しのメンバーがどの程度増えるのかが注目されています。2023年の前に利上げを予想するメンバーも出てくるかもしれません。今回、利上げ予想の人数と時期によっては、金利の一段高を誘引する懸念がありますが、FRBとしては、少なくとも利上げの前段階であるテーパリングが早期に実施されるとの観測を抑える必要があります。『ゼロ金利政策と量的緩和政策を長期間続ける』との大方針を強調し、長期金利上昇の黙認姿勢との整合性をどのように整理して、マーケットが不安定にならないような強いメッセージを発信することができるかどうかが注目されます。
パウエル議長は2013年のバーナンキ時代の失敗(「テーパータントラム(Taper tantrum)」)を避けるために、FOMC後の記者会見では利上げやテーパリングについて何も触れないことは予想されず、少しでも期待の高まりのガス抜きをしていく行動を取るものと予想されますが、かなり難しい対応になるものと思われます。マーケットとの対話でボタンを掛け違えると、マーケットは大混乱になり、値が飛びやすくなるため注意する必要があります。
(*)「テーパータントラム(Taper tantrum)」とは、2013年5月に当時のFRBバーナンキ議長が資産買入れ額の縮小を示唆したことから、金融・株式市場が大きく混乱したことを表現したもの。「テーパー」は縮小、「タントラム」はかんしゃくの意味。特に新興国市場では米国からの投資資金が引き上げられるとの観測から、通貨安と金融市場の大きな混乱が生じた。
米銀資本規制の緩和は延長されるのか?
そしてもう1つ注目されているのが、米大手銀行への資本規制(SLR、補完的レバレッジ比率)の緩和が延長されるかどうかという点です。2008年のリーマンショック後、米銀は資本規制が導入され、リスク資産の計上が制限されていました。しかし、新型コロナウイルスの対応として流動性を確保するため、2020年4月に1年間の特例で規制を緩和しました。その期限が3月末に到来します。もし、延長されなければ、国債購入が減ったり、米国債を含めたリスク資産を圧縮するとみられており、長期金利上昇につながる可能性があります。2月末に米長期金利が急上昇した局面では、この思惑や警戒感があったのではないかとの見方もあります。期限が延長されれば、安心感から米長期金利は低下する可能性がありますが、米民主党左派勢力からの延長反対も強く、パウエル議長は難しい判断を迫られており、マーケットは注視しています。
日銀政策決定会合は波乱材料になるか?
日本銀行の決定会合では金融政策の点検が発表されますが、波乱材料になりそうなため注意が必要です。見直しの柱は、(1)長短金利操作の運営方法、(2)ETF(上場投資信託)などの資産買入れ手法、の2点ですが、日銀の雨宮副総裁は、8日のオンライン講演会で「長短金利の引き下げは重要な選択肢」と述べ、資産買い入れについても株高局面でのETF購入抑制も示唆し、点検見直しによる政策修正の方向性を示しました。
点検見直しでは、マイナス金利の深堀りの余地にも触れる可能性があるかもしれません。現状よりも一段の金融緩和を目指す修正が発表されると、円安要因となるため注意する必要があります。
17~18日にはBOE(英中央銀行)のMPCが開催されます。BOEは時として他の中央銀行に先行して発言したり、行動指針を示す時があるため注目しています。
これら一連の中央銀行の政策委員会が終わって、中央銀行がマーケットとの対話に成功すれば、米長期金利の上昇は安定を取り戻し、ドル/円も2月以来の推進力がなくなり、ガス欠となるかもしれません。
(ハッサク)
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