金利上昇で上がる株・下がる株。成長株、景気敏感株、金融株が動く理由
トウシル / 2021年3月25日 12時0分
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金利上昇で上がる株・下がる株。成長株、景気敏感株、金融株が動く理由
金利上昇で成長株の株価が下がっている理由
金利上昇により、成長株の株価が軟調になっています。足元では多くの個別銘柄が上昇トレンドになっていますが、成長株の中には下降トレンドのものが目立ちます。
成長株の株価が下がっている理由を理論的に考えると、次のようなことが言えます。
成長株の株価の理論値が下がるため
一つは前回も少しお伝えした「割引現在価値」からのアプローチです。
株価の理論値を計算するとき、まず、その会社が将来得るであろう利益やキャッシュ・フローを、いま現在の価値でどれくらいになるか求めます。これを「割引現在価値」と呼びます。
割引現在価値は、例えば、10年後の100円の価値は、いま現在の価値と同じかどうかを考えるときと同様の枠組みです。皆さんも経験上、いまと10年後の貨幣価値は異なると考えるのではないでしょうか。
物価上昇により、10年後の貨幣価値は現在より低下し、ざっくりわかりやすく言うと5年後には95円、10年後には90円の価値となります。これに金利上昇の影響が加わると、将来の貨幣価値はより低下し、5年後には90円、10年後には80円となります。現在から将来へ向かうほど、割引現在価値も低下するのです。
では成長株について考えてみましょう。将来の業績が大きく伸びると期待されている成長株は、1年後2年後より、5年後とか10年後の方がより大きな利益を獲得できるという前提で、株価が形成されています。しかし、これも金利上昇により、割引現在価値が大きく下押ししてしまいます。
これが、金利上昇によって、成長株の株価がより大きく下落しやすいと言われる理由です。
成長株は益回りが小さい
もう一つのアプローチが「株式益回り」の観点です。益回りとはPER(株価収益率)の逆数のことで、下記で計算されます。
1株当たり利益÷株価=益回り
・PER 10倍の株:益回り10%
・PER 20倍の株:益回り5%
・PER100倍の株:益回り1%
では、債券の金利が上昇したとき、より大きく反応するのはどれだと思いますか。
長期金利が、例えば0.1%から1%に上昇したとき、PER10倍の株や5倍の株はそれほど大きな影響を受けません。1%の長期金利より益回りの方がはるかに高いからです。
ところが、PER100倍の株は、益回りが1%しかありません。同じ1%を得るのなら、リスクが高い株式よりも、債券を選択する、ということにおそらくなるはずです。そのため、株式の益回りが債券と同じ1%ではさすがに低すぎるだろう、ということで株価下落につながるのです。
例えば株価が2分の1になれば益回りは2倍の2%になります。このときのPERは50倍ですが、このように株価下落でPERが低下し、益回りが上昇する形で株価調整が入りやすくなると言われています。
実際はそこまで単純な話ではないとは思いますが、少なくともPERが極めて高い、例えば100倍を超えているような銘柄については、株価は上がりにくいでしょうし、逆に下押し圧力には十分注意すべきでしょう。
景気敏感株は金利上昇で株価も上昇?
一方、金利上昇により軟調な値動きとなっている成長株とは裏腹に、景気敏感株の多くは株価が順調に上昇しています。
景気敏感株とは、景気の変動に応じて業績が大きく変化する業種の株で、鉄鋼、化学、機械、海運などが挙げられます。
実は景気敏感株は、金利が上昇すると株価も上昇しやすいといわれています。金利上昇の局面では景気も回復していることが多いので、景気敏感株の業績向上が期待できるためです。
実際、筆者の過去の経験からも、金利上昇の局面では、景気敏感株の株価が上昇する傾向にあると感じています。
さらには、日本の長期金利よりも米国の長期金利の上昇にプラスに反応することが多いともいわれています。景気敏感株は輸出の比率も高く、米国経済が好調であればあるほどより大きな恩恵を受けることができるためです。
銀行株も金利上昇はプラス
銀行株も、金利上昇はプラスに働くといわれています。
銀行の収益源である貸付金の金利は、債券の長期金利が上昇すれば同じように上昇します(変動金利の場合)。そのため、金利収入が増え、業績が向上し、それが株価上昇にもつながっていきます。
これまでは、超低金利が当面の間続くという前提で、より金利負担を減らそうと変動金利で借り入れるケースが多かったと思われます。特に住宅ローンはその傾向が強いと感じます。
しかし、今後金利が上昇に転じたならば、変動金利の貸付金の金利もそれに連動して上昇することとなり、銀行にとっては利ザヤが増え、収益の拡大につながることになります。
また、景気がよくなれば貸し出しも増え、それだけ金利収入が増えるため銀行株は景気敏感株と同じような動きをすることが多いのです。足元でも、銀行株の株価は上昇傾向にあります。
教科書より株価のトレンドフォローを
前回と今回とで金利と株価の関係についてお伝えしましたが、筆者が最も言いたかったことは、株式投資の教科書に書かれているような「金利が上昇すると株価は下落する」とは必ずしもならない、という点です。
実際に過去の金利上昇局面では株価が上昇したケースもありますし、金利上昇が株価にプラスに働く業種も数多くあります。
理屈にとらわれることなく、実際に起こっている事実に目を向けつつ、株式投資を実践していただきたいと思います。そのためには「金利上昇=株価下落」と盲目的にとらえるのではなく、金利が上昇していても株価が上昇トレンドなら買って保有を続けるのが実践的な対応です。
(足立 武志)
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