バフェットも資本参加!中国新エネ自動車関連が熱い!注目銘柄と中国市場展望・後編
トウシル / 2021年4月26日 7時0分
バフェットも資本参加!中国新エネ自動車関連が熱い!注目銘柄と中国市場展望・後編
トップダウンで邁進する中国
執筆:田代尚機
≫前編へ「中国14億人の大消費力と加速する経済成長!注目銘柄と中国市場・前編」
中国の注目セクターは新エネルギー自動車関連です。
前編で自動車市場のことを書きましたが、この市場は現在、グローバルで、産業始まって以来の大きな技術革新の波に包まれようとしています。化石燃料自動車から、新エネルギー自動車へと全面的に移行する時期に差し掛かっているのです。
中国経済の最大の強みはトップダウンにより、よく練られた計画を元に、資本、技術を特定産業に集中させることができるといった点にあります。今年から始まった第14次五カ年計画では、引き続きイノベーションに重点が置かれており、重点分野の一つが新エネルギー自動車となっています。
中国国務院弁公庁は2020年11月2日、「新エネルギー車産業の発展計画(2021~2035年)」を発表しましたが、この計画では、2025年までに新車販売における新エネルギー車の割合を20%前後に引き上げ、2035年までには新車販売の主流を純EV(電気自動車)とすることが目標となっています。この目標を実現させるために、中央政府、地方行政は補助金を支給し、産業投資ファンドは積極的にスタートアップ企業に投資し、重要プロジェクトとして政府から承認された企業は銀行から多額の融資を引き出すことができます。国家を挙げて新エネルギー自動車の発展を促進しようとしています。
イノベーションを加速する新エネ自動車関連の注目銘柄は?
そんな新エネルギー自動車関連の注目銘柄は以下の5銘柄です。
BYD(香港株:01211)
バフェットが資本参加
ウォーレン・バフェットが2008年から戦略投資家として資本参加する、本土を代表する電気自動車メーカーです。
1995年設立直後はリチウム電池メーカーとして電動工具などのバッテリーを製造していましたが、電池技術を生かしたEVの開発をにらみ、2003年、自動車メーカーを買収。現在の売り上げ構成(2020年12月期)は自動車・部品が53%、携帯端末部品・組み立てが39%、2次充電電池・太陽光発電設備などが8%となっています。
2020年12月期業績は26%増収、162%増益でした。上期は新型コロナ禍で減収を余儀なくされましたが、下期に入り、基幹車種「漢」、SUV(多目的スポーツ車)「唐」のモデルチェンジなどによりEVを中心に自動車・部品の売上が急回復し、業績をけん引しました。利益率の高い新車種の寄与などから粗利率が改善、販管費の伸びを押さえたことから大幅増益を達成しました。グローバルで電動化の動きが加速している中で、中国政府による新型エネルギー車の推進政策もあり、高成長が続く見通しです。
吉利汽車(香港株:00175)
親会社はボルボを買収、ダイムラーの筆頭株主
本土を代表する民営の自動車メーカーです。実質的な親会社である浙江吉利控股集団は2010年、ボルボ・カーズを買収、2018年にはメルセデス・ベンツを傘下に持つダイムラーの筆頭株主となっています。
2020年12月期業績は5%減収、32%減益でした。コロナ禍の影響で上期の販売台数は19%減少、下期は回復し11%増加したものの、通期では3%減となりました。全国規模で値引き競争を展開、販売強化によるコスト増もあり、大幅減益を余儀なくされました。
2015年、5年以内に新エネルギー自動車(ハイブリッド車などを含む)の生産台数比率を90%にすると発表しましたが、2020年の新エネルギー自動車の販売台数は6万8,142台にとどまっています(全体の販売台数は132万217台)。とはいえ、新エネルギー自動車への転換を全力で進めているといった点に変わりはありません。バイドゥと親会社は1月、合弁でEVメーカーを設立すると発表。こうしたグループ全体の積極経営を評価したいと思います。
北京汽車(香港株:01958)
10分間の充電で197キロ走行可能な自動運転車を投入
北京市政府系の準大手自動車メーカーです。ダイムラー、現代自動車と合弁。「北京ベンツ」「福建ベンツ」「北京現代」のほか、独自の「北京」ブランドを展開しています。
2020年12月期業績は1%増収、59%減益でした。合弁比率の大小などにより、「北京」ブランド、「北京ベンツ」は売り上げ計上され、残りの2ブランドは持ち分利益が計上されます。売り上げの96%を占める「北京ベンツ」は9%増収となったのですが、「北京」ブランドが64%減収となり、業績の足を引っ張りました。その他2ブランドは損失拡大、こちらも業績不振の要因となりました。各ブランドで新エネルギー自動車を投入しているものの、その比率はまだ小さく、コロナ禍の影響を大きく受ける結果となりました。
同社は4月17日、ファーウェイの自動運転技術が搭載された中大型車「ARCFOX-アルファS」を発売すると発表。自動運転ソフトウエアはファーウェイの開発した鴻蒙OS上で作動、ファーウェイの高速充電技術が使われていて10分の充電で197キロメートルの走行が可能です。積極的な新エネルギー自動車の展開を評価したいと思います。
ウェイチャイ・パワー(香港株:02338)
政府系・自動車部品、商用自動車メーカー
山東省政府系の自動車部品、商用自動車メーカーです。
部門別売上高(2020年12月期)では、天然ガス、ディーゼル油用のエンジン、発動機、大型トラックや、ギアボックスなど関連部品が59%、フォークリフト、物流システムが33%、水素エネルギー電池発動機、油圧機器、自動運転システムなどが8%。輸出が35%。2020年12月期業績は13%増収、1%増益でした。
コロナ禍に対する景気刺激策としてインフラ投資拡大政策が採られたこと、環境基準が強化されたことなどから、エンジン、発動機、ギアボックス、大型トラック需要が拡大、2桁増収に寄与しました。
一方、フォークリフト、物流システムは需要の低迷から業績の足を引っ張り、全体で微増益にとどまりました。第14次五カ年計画では新エネルギー自動車の普及が加速。中でも水素エネルギー振興政策が重点的に強化されると予想します。
隆基緑能科技(上海A株:601012)
発電所建設も行う太陽電池メーカー
陝西省西安市に拠点を持つ民営の太陽電池メーカーです。多結晶シリコン粉末を加工し単結晶シリコンを作り、そこからチップ、モジュール、太陽電池を製造、さらに集中式、分散式発電所の建設まで行っています。
部門別売上高(2020年12月期)では、太陽電池モジュールが66%、シリコンチップ、単結晶シリコンが28%、太陽光発電所建設、運営サービスが2%、電力販売などが4%。米国、欧州、アジアなどでの海外売上が39%です。2020年12月期は66%増収、62%増益でした。新型コロナ禍の生産への影響は軽微でした。本土に加えグローバルでカーボンニュートラルに向けた取り組みが進んだことで太陽電池に対する需要が拡大、高成長につながりました。新エネルギー自動車の普及に伴い電気スタンドの需要も拡大。電気スタンド用に太陽光発電所の需要が高まると予想します。
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田代尚機(たしろ・なおき)
中国経済エコノミスト、中国株アナリスト。
大和総研勤務当時、1994年から2003年にかけて代表として中国・北京に駐在。その後、内藤証券を経て独立、TS・チャイナ・リサーチを設立。リサーチのほか運用助言も行った後、2020年10月、事業を譲渡。現在は、フリーランスとしてマスコミ、金融機関などに情報提供を行う。投資メディア「トレード・トレード」でブログ「中国株なら俺に聞け!!」、「マネーポストWEB」で「田代尚機のチャイナ・リサーチ」などを連載中。
(田代 尚機)
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