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お宅の食卓直撃必至!?穀物・食用油価格が爆騰中!関連銘柄に注目

トウシル / 2021年5月4日 5時0分

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お宅の食卓直撃必至!?穀物・食用油価格が爆騰中!関連銘柄に注目

マヨネーズ、サラダ油、マーガリン価格の上昇が相次ぐ。食用油価格は半年で約2倍に。

 食卓に、コモディティ価格高が忍び寄ってきています。

 4月26日、キユーピー(2809)は、7月1日出荷分から、家庭用のマヨネーズ価格を引き上げることを発表しました。

 マヨネーズの原料にもなる食用油(植物油が主な原料)においては、今年2月時点で、昭和産業(2004)J-オイルミルズ(2613) 日清オイリオグループ(2602) の食用油主要3社がこぞって、3月から4月にかけて、値上げすると発表していました。

 また、植物油を主原料とするマーガリンは、主要メーカーであるカネカ(4118)ミヨシ油脂(4404) が、3月1日納入分より、値上げをするとしていました。

 この春、相次いでいる植物油と関わりが深い品目の値上げ発表の背景には、植物油の国際価格の急騰があります。以下のグラフは、植物油の価格の指標とされる、菜種(キャノーラ)油、パーム(アブラヤシ)油、大豆油の価格動向を示しています。

図:植物油の国際価格の推移 2005年1月を100として指数化

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 昨年(2020年)半ばから、急激に上昇し始めました。足元、どの油種も、記録的な水準に達しており、本格的に上昇しはじめた昨年6月比で、菜種油がおよそ1.9倍、パーム油が1.8倍、大豆油が2.1倍です。歴史的とも言える急騰劇を受け、植物油に関わりが深い各社は末端製品の値上げを余儀なくされたわけです。

 各社、値上げの直接的な背景を「主産地の天候不順による生産減少懸念や、中国をはじめとした世界的な需要拡大」などとしています。今後、徐々に、わたしたちがスーパーで購入するマヨネーズ、サラダ油、マーガリンの価格(小売価格)は、値上がりしていく可能性があります。

鶏肉、豚肉、牛肉はすでに上昇が始まっていた!?

 マヨネーズ、サラダ油、マーガリンといった、豊かな食生活を送る上で欠かせない食品の小売価格が、今後上昇する可能性があることについて書きました。一方、実はすでに、コモディティ価格高が、わたしたちの食卓を襲い始めている例があります。各種食肉と鶏卵です。

図:日本の人口15万人以上の都市における各種品目の小売価格(平均)の騰落率
2020年6月と2021年3月を比較

※各種食肉100g、マーガリン1kg、鶏卵 1パック・10個、マヨネーズ 1本・450g、食用油 1本・1,000g、小麦粉 1袋・1kgあたりの税込小売価格
※参照した都市は人口15万人以上の81都市(特別区含む)
出所:総務省統計局 小売物価統計調査より筆者作成

 食肉のうち、特に鶏肉の価格上昇が目立っています(+2.9% 132.78円→136.57円)。その他、豚肉(国産バラ)(+1.0% 238.28円→240.56円)、牛肉(国産)(+0.2% 843.48円→845.44円)も値上がりしています。また、鶏卵も上昇しています(+0.6% 217.89円→219.16円)。

 食肉と鶏卵価格の上昇の要因は、穀物価格の上昇が挙げられます。穀物は、主に家畜のエサに用いられます。穀物価格の上昇が、エサのコストを上昇させ、その結果、食肉と鶏卵価格が上昇していると、考えられます。以下は、鶏肉小売価格とエサとなる配合飼料価格の推移です。

図:鶏肉小売価格と配合飼料価格(推定)の推移

出所:総務省統計局 小売物価統計調査およびJA全農のプレスリリースなどより筆者作成

 鶏肉価格(結果)が配合飼料価格(原因)を先導しているようにみえますが、実際には、配合飼料価格は3カ月に1回、改訂されるため、配合飼料価格を決定する最も重要な根拠である海外の国際指標(シカゴトウモロコシ先物価格)と、鶏肉価格はこの間、ほぼ連動するように動きました。

 一部の食肉では価格上昇が起きており、そして今後、植物油関連の食品でも、本格的な価格上昇が起きる可能性があります。穀物価格、それに関わりが深い食用油価格は、なぜ上昇しているのでしょうか。そして今後、どうなりそうなのでしょうか。

天候不順、旺盛な需要が価格上昇の主な要因。生産国の「武器」としての使用も!?

 穀物価格と植物油価格の上昇要因に、先述の食用油製品メーカーが述べた「主産地の天候不順による生産減少懸念や、中国をはじめとした世界的な需要拡大」が挙げられます。ただ、これだけではないと、筆者は考えています。

図:穀物価格の上昇要因

出所:筆者作成

 上記のとおり、複数の主要生産国での天候不順(1)の他、アルゼンチンの輸出関税の引き上げ(2)、中国などの需要回復(3)、緩和マネーの流入(4)、植物油では大豆油高によるその他植物油高、(6)新需要への期待、などがあげられます。筆者が特に注目しているのは、(2)と(4)、そして(6)です。

(2)の南米の主要生産国アルゼンチンでの輸出税引き上げについてですが、原則、輸出の際、輸出する業者が納める税金が増えることを意味します。このような策は、自国内の食料確保を優先する場合にとられることがあります。新型コロナの感染拡大により、国内情勢が混乱する中、食糧を確保したい思惑があるとみられます。

 加えて、穀物相場を上昇させたい思惑もあると、筆者は考えています。中国という、大消費国がいる中、量をさばくことができても、単価(市場価格)が安ければ、収入は思ったように伸びません。そこで、人為的に、自国からモノが流出する量を減らす策を講じて、需給バランスを引き締める態度を示し、市場に上昇圧力をかけるわけです。これは、OPECプラスの原油の減産に似ています。自らが持つ資源を「武器」にするわけです。

(4)の金融緩和について、以下の騰落率のグラフのとおり、穀物と植物油価格が急上昇した昨年6月以降、実は、主要株価指数、ドル以外の通貨、暗号資産(仮想通貨)、金以外のコモディティ(商品)の価格がいずれも上昇していました。

 単にコロナショックからの景気回復だけではなく、同時期から本格化した米国をはじめとした主要国による金融緩和がきっかけとなった「緩和マネー」が、穀物や植物油を含む、幅広い分野の投資商品の価格を大きく上昇させるきっかけとなったと考えられます。統計で確認できるいわゆる「投機筋」だけでなく、報告義務のない小口も含め、幅広い投資家の動きが活発化したと考えられます。

図:2020年6月30日から2021年4月27日の騰落率

出所:ブルームバーグより筆者作成

今回の価格は「散発的な価格上昇」と「長期的な底値引き上げ」の同時進行によるもの。

 穀物や植物油相場の上昇要因として筆者が特に注目しているのは、(2)の南米の主要生産国アルゼンチンでの輸出税引き上げ、(4)の緩和マネーの流入、(6)新需要への期待であると述べました。このうち(6)は、やや他と性質が異なります。時間軸が長い点です。

「環境配慮」の動きは、コロナ禍がきっかけで急拡大しています。コロナ禍において、環境配慮をビジネスチャンスとする企業が増えていることなどが要因とみられます。大規模な選挙の際、コロナ禍というピンチの中で、環境配慮を前面に打ち出すことで票を稼ぐリーダーもいます。

「環境配慮」をブームにとどまらせず、実際に二酸化炭素の排出量を低減させる具体策を講じる上で、穀物が一定の役割を果たします。米国やブラジルで一般化した、トウモロコシなどの農産物を原料としたバイオ燃料は、二酸化炭素のもととなる化石燃料であるガソリンや軽油に添加して、ガソリンスタンドで販売されています。

 パリ協定への復帰を掲げて選挙戦を戦い、就任後即時に復帰を実現したバイデン米大統領は、EV(電気自動車)が一般化するまでの間、オバマ政権時と同様、バイオ燃料の利用を推奨する可能性があると筆者は考えています。

 バイデン政権下では、石油業界寄りだったトランプ政権時に話し合いがとん挫したとされる、ガソリンへのバイオ燃料の添加上限である10%を15%に引き上げる議論が、進展する可能性があります。この議論が進展すれば、米国国内のトウモロコシの需要が増加するとみられます。

 また、「環境配慮」と穀物相場を語る上で、「代替肉」というテーマも欠かせません。代替肉とは、植物などの動物以外の生物を原料として作られた人工的な肉のことです。世界的に食肉需要は増加する傾向にありますが、その増加分の一部をこのような肉で代替することは、実は、エコに貢献する側面があります。

図:穀物相場の長期視点での注目材料

出所:筆者作成

 温室効果ガスは二酸化炭素だけではありません。体積が同じだった場合、二酸化炭素よりも温室効果が高いとされるメタンもまた、温室効果ガスの一つです。そのメタンの主な発生源は農業分野とされています。微生物の活動によって水田の泥から発生したり、家畜の反すう運動(げっぷ)、排泄物から発生したりします。

 食肉の需要増加に応じて家畜の頭数が増加すれば、それだけメタンの排出量も増加することになります。肉の需要を満たしながら、メタンの排出量を低減させ、「環境配慮」を実現するための手段に「代替肉」が挙げられると、筆者は考えています。

 世界規模の「環境配慮」ブームの中、今後、家畜由来のメタンの排出低減の必要性が高まれば、代替肉の需要は各段に増加する可能性があります。この時、大豆やトウモロコシを中心とした穀物需要の構造が、根底から変わる可能性があると、筆者はみています。

 こうした、需要構造の根底からの変化は、以下に示した「長期的な水準切り上げ」に貢献する材料と言えます。天候や輸出税などの生産国側の要因も、消費国側の要因も、数年や数十年単位の地殻変動のような根底からの水準切り上げ(パラダイムシフト)の要因になったことはありません。

図:シカゴトウモロコシ価格(期近 月足 終値) 単位:セント/ブッシェル

出所:ブルームバーグより筆者作成

 現状を考えれば、現在の穀物相場の上昇は、生産国と消費国それぞれがきっかけとなった「散発的な価格上昇」と新しい需要が発生する期待がもたらす「長期的な水準切り上げ」が同時に起きていることによって、発生していると言ってよいと、筆者は考えています。

 天候だけ、消費だけ、ではなく、長期的な視点に立ち、新しい需要が発生する期待を含めて、材料を俯瞰してはじめて、現在の穀物や植物油相場の急騰劇を説明できると思います。

 目先、短期的には、主要産地の米国が天候シーズンに入っているため、寒波などの影響で、さらに上値を伸ばす、それにつられて食用油の価格も上値を伸ばす可能性があると、考えています。長期的には、バイオ燃料、バイオプラスチック、代替肉など、環境配慮や新しい食文化が本格的に浸透する期待が膨らみ、長期的な底値切り上げが起きる可能性があると、現時点では、考えています。

[参考]具体的な穀物関連銘柄

国内株

丸紅 8002

海外ETF

iPath シリーズB ブルームバーグ穀物サブ指数
トータルリターンETN
JJG

外国株

アーチャー・ダニエルズ・ミッドランドADM

ブンゲBG

商品先物

国内 トウモロコシ 大豆

海外 トウモロコシ 大豆 小麦 大豆粕 大豆油 もみ米

(吉田 哲)

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