投機的行動がピークに達するとレバレッジは逆回転を始める
トウシル / 2021年5月20日 15時50分
![投機的行動がピークに達するとレバレッジは逆回転を始める](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushiru/toushiru_32260_0-small.jpg)
投機的行動がピークに達するとレバレッジは逆回転を始める
暗号資産市場でミンスキーモーメントが発生
暗号資産(クリプトカレンシー)が急落し、19日の市場は混乱に見舞われた。大規模ロスカットが発生。パニック相場で各国の大手取引所のサービスの一部がダウンやまたは接続障害に見舞われた。
この暗号資産の急落は典型的なミンスキーモーメント(信用循環または景気循環において、投資家が投機によって生じた債務スパイラルによりキャッシュフロー問題を抱えるポイント)と言えるだろう。
投機的行動がピークに達すると、レバレッジは逆回転を始めるダークサイドを持つ。ある時点で、投資家心理が市場の流動性に関連するレバレッジと衝突するミンスキーモーメントだ。
マクロ流動性はブームとバブルをあおっている。だが、市場の非流動性が、究極的には暴落と崩壊の引き金を引くことになる。
2022年末までジャブジャブ!?世界のGDP(国内総生産)の0.7%にあたる流動性が毎月追加されている
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最近はイーロン・マスクのツイッター発言によってビットコインの価格が乱高下している。イーロン・マスク率いるテスラが、保有するビットコインを売却する可能性があるか、売却したことがツイッターで示唆されると、ビットコインの価格は急落した。
テスラ車の購入においてビットコインによる支払いを受け入れないことを表明したり、人気テレビ番組「サタデー・ナイト・ライブ」に出演し、冗談交じりにドージコインを「詐欺」と呼んだり、イーロン・マスクのツイートや発言によって暗号資産市場が右往左往している。
暗号資産市場を動かす影響力を持ったイーロン・マスクのツイートは本気か冗談かわからないものも多いが、暗号資産の相場操縦者のような存在になっている。
ビットコイン/ドル(日足)
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ドージコイン/ドル(日足)
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ビットコインによるテスラ車の購入をストップした理由について、マスク氏は「マイニングと決済のための化石燃料、特に石炭の使用が急増していること」を指摘した。
そもそも、地球環境への負荷を減らし、持続可能なエネルギー社会への移行を加速させることを目的とする企業であるテスラが、採掘するのに多大なエネルギーを必要とするビットコインに投資を行なっていることについての整合性には疑問が残っていた。
一方、暗号資産に対して強気の姿勢を示していたダブルラインキャピタルのジェフリー・ガンドラックは、ビットコインに関して心変わりをしたようだ。
過去にビットコインが低水準で取引されていたとき、ガンドラックは暗号資産に対して強気の姿勢を示していた。
しかし、「突然1万5,000ドルを突破し、突然2万3,000ドルになった。それが、今では2倍になっている。明らかに上昇が早すぎてニュートラルになった」、「1999年に収益もないのに市場に出てきて大成功を収めたドットコム・バブルの時代のようだ。それはまさに暗号資産だと思う」と、暗号資産のバブル(デジタル・チューリップ化)に警鐘を鳴らしている。
莫大(ばくだい)な電力を使用するビットコインでテスラを購入することはできないが、イーロン・マスクの言っていることが本当であれば、そのビットコインをテスラは依然として大量に保有している。
テスラは2021年第1四半期に、保有するビットコイン15億ドル分のうち、2億7,200万ドル相当を売却して1億100万ドルの収益を上げた。まだ12億ドルほどのビットコインを保有しているとすれば、ビットコインの価格動向によって、テスラの業績に影響を与えることになる。
ビットコイン/ドル(黒)とテスラ(赤)の日足の推移
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FRBの秘められたマンデート
現在、市場ではインフレが予想を超えて上昇していることを示すデータに注目が集まっている。その一方で、FRB(米連邦準備制度理事会)がドルの購買力を絶え間なく低下させるという、明確に語られてはいないが、確実な目標を持っていることに気付いている人はいないだろう。
FRBは、新しいお金を印刷し、それを経済に押し出すことによって、ドルの価値を弱め、モノの値段を押し上げている。FRBが2%の物価目標を達成した場合、米ドルの購買力は下がっていくことを意味している。
通貨の購買力は、1単位の通貨で購入できる商品とサービスの量である。たとえば、1933年には1ドルで10本のビールを購入することができた。
現在、1ドルで購入できるものはマクドナルドのコーヒー1杯だ。ドルの購買力(購入できるものの観点からの価値)は、価格水準が上昇するにつれて時間とともに減少を続けてきた。
ドルの購買力の推移(1913~2020年)
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FRBが設立された1913年当時、1ドルでハーシーズのチョコレートバーを30本買うことができた。より多くのドルが流通するようになると、ドルの購買力が低下する一方で、商品やサービスの平均価格が上昇した。
1929年までに、消費者物価指数は1913年当時より73%高くなり、1ドルで購入できるものはトイレットペーパー10ロールとなった。
1929年から1933年にかけて、デフレとマネーサプライを縮小させたことにより、ドルの購買力は一時的に増加したが、その後、再び減少に転じる。1944年には、ブレトンウッズ協定の下でドルは世界の準備通貨となり、35ドル/オンスのレートでゴールドに固定された。
一方、米国は第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争の戦費を賄うためにマネーサプライを増やした。1944年に20本のコカコーラに相当した1ドルの購買力は、1964年にはドライブイン映画のチケットに減少した。
ニクソン大統領は1971年に金本位制を停止する。当時、1ドルで17個のオレンジを購入することができた。
金融市場におけるイベントとドルの購買力
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COVID-19パンデミックによって増幅され、米国のマネーサプライは、ここ数年で急増している
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そうした中、カナダ中央銀行は先週、「QE(量的緩和)など、COVID-19のパンデミックに対処するために使用している金融政策ツールのいくつかは、富の不平等を拡大する可能性がある」と認めた。
先月下旬には週40億カナダドルの国債購入を、30億カナダドルに削減し、主要国の中銀でいち早く金融緩和の正常化に動き出している。さらに、カナダ中銀は2021年の経済成長率を6.5%、2022年は3.75%と予想。
失業の減少によって2022年後半には物価上昇率が2%程度に達する見通しを示した。時期は明言していないものの、経済が予想通りに回復すれば利上げを進める可能性が指摘されている。
こうした流れを受けてカナダドルは堅調地合いとなっている。
ドル/カナダドル(日足)
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カナダドル/円(日足)
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同様に強さの目立つのがイギリスポンドである。ポンドについては上昇の理由をさまざま探しているが、なかなか明確な理由が見つからないのが現状である。
ポンド/ドル(日足)
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ポンド/円(日足)
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カナダもポンドもADXや標準偏差ボラティリティというトレンド指標を見ていると、ここからはいったん調整相場に入ってもおかしくないが、米国との金融政策の差異から今後もトレンドが発生しやすい通貨ペアであろう。
5月19日のラジオNIKKEI『楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー』
5月19日のラジオNIKKEI『楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー』は、武田則孝さん(楽天証券FXディーリング部)をゲストにお招きして、「これからの未来図は!?」・「なぜ、我々は運用をするべきなのか?」・「全体主義は必然的にインフレに向かう」というテーマで話をしてみた。ぜひ、ご覧ください。
第4の転換と帝国のサイクル
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ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。
5月19日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー
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(石原 順)
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