「物価上昇は一時的」から受ける印象は実態と違う?今後の米国消費者物価に注目!
トウシル / 2021年6月24日 5時0分
「物価上昇は一時的」から受ける印象は実態と違う?今後の米国消費者物価に注目!
6月10日に発表された5月の米国消費者物価指数は前年同月比で+5.0%と、4%台を通り越し、大幅な上昇となりました。物価が大幅に上昇してきている中、今回の米国のインフレが一時的か否かがここ最近ずっと言われていますが、「一時的」という言葉から皆さんが受ける印象と、実態とが違っているのではと思うところがあります。
それはどういうことかというと、例として「足元で物価が5%上昇しているのは一時的だ。1年後には2%に下がる」と言われると、「1年前に100円だったものが5%上昇して105円になっているけれども、それは一時的で、1年後には102円に戻るんだ」という印象を持つのでは、ということです。
実態は異なっていて、1年前に100円だったものが、5%上昇して現在105円、1年後は2%上昇するので107.1円となります。
物価が上昇しているのはあくまでも米国での話ですが、102円であれば生活に対する影響は少ないけれども、107.1円となると、コロナ禍において、仕事だけでなく生活面でもきつい状況に追い込まれる方が増えてしまうのではと思います。
さすがにこのところの物価上昇を意識するように、6月15~16日に開かれたFOMC(米連邦公開市場委員会)で公表された経済見通しにおいては、あくまでもメンバーによる金利予想ですが、利上げの時期がこれまでよりも早まる方向となっています。
テーパリングや利上げ時期を予測する上では今後の物価動向は重要なので、しっかりと米国の消費者物価指数とPCEデフレータについてチェックしていきたいと思います。
消費者物価指数予測:6月から10月まで4%以上、コア指数は6月から10月まで3%以上
まずは、消費者物価指数について見ていきましょう。直近の2021年5月の値は前年同月比+5.0%と大幅上昇、コア指数も+3.8%と目安である2%を大きく上回った値となっています。
米国消費者物価の推移(2019年1月~2021年5月)
今後を予測する上ではコロナウイルス感染症の影響を低減させるために、食品・エネルギーを除いたコア指数の1年前の値である+1.2%と直近値である+3.8%の平均値の+2.5%で上昇していくものと仮定します。また、本来であれば季節調整をすべきですが、ここでは季節調整はしないものとします。
今後の予測は次のようになります。
消費者物価指数は4%台の高水準が続く形となっています。コア指数のほうも3%台の高水準が続き、目安である2%を大きく上回る値となっています。
PCEデフレータ予測:5月から9月まで3%以上、コア指数は5月から9月まで2.5%以上
次にFRB(米連邦準備制度理事会)がより重視していると言われているPCEデフレータをみていきましょう。直近の2021年4月の数値は前年同月比+3.6%、コア指数で+3.1%となっています。
米国PCEデフレータの推移(2019年1月~2021年4月)
今後の予測においては、コア指数の1年前の値である+0.9%と直近値の+3.1%の平均値の+2%で上昇していくものと仮定します。また、季節調整はしないものとします。
PCEデフレータは3%台が続く形になっており、コア指数のほうは9月においても+2.6%と、目安である2%を上回る2%台後半の推移となっています。ちなみに、FRBの6月の経済見通しにおいては、2021年のPCEデフレータは+3.4%、コア指数で+3.0%となっています。
商品指数は少し調整、生産者物価指数は今後の消費者物価指数の上昇を予想させる
今後の動向を推測していく上で、消費者物価指数の先行指数と言われている商品指数と米国生産者物価指数についても見ていきましょう。
ダウ・ジョーンズ・コモディティ指数の推移(2019年1月~2021年6月)
商品指数は4月以降、再度上昇して水準を切り上げましたが、直近は少し調整してきています。
米国生産者物価指数の推移(2019年1月~2021年5月)
生産者物価指数の5月の値は、前月比+0.8%、前年比+6.6%と大幅に上昇し、今年に入ってから前月比で高水準が続いています。
商品指数と生産者物価指数、消費者物価指数の関係を見てみると、川上である商品指数の動向が2カ月遅れで生産者物価に影響し、さらに2カ月遅れで消費者物価に影響している傾向があります。
4~5月の生産者物価指数が大幅に上昇していることから、6~7月の消費者物価指数の値は、前述の予測値以上の高いものになることが想定されます。
これまでFRBのパウエル議長は「物価上昇は一時的」という発言を繰り返してきましたが、今回のFOMC後の記者会見においては、あくまでも一時的を強調してインフレを放置するのではなく、多少インフレを意識した発言に変わってきています。
今後、利上げ観測がさらに早まることになるのか、引き続き、物価動向には注目していきたいと思います。
(白石 定之)
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