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原油と生活と経済を左右…OPEC総会を考える(1)

トウシル / 2017年10月27日 16時0分

原油と生活と経済を左右…OPEC総会を考える(1)

原油と生活と経済を左右…OPEC総会を考える(1)

原油の値動きに大きな影響を及ぼす「OPEC総会」11月30日を開催

 11月30日(木)に開催されるOPEC(石油輸出国機構)総会で、実施中の“減産”の期間延長が決定されるとの思惑が広がっています。※OPECについてはこちらをご参照ください。「生産の4割!原油価格を動かす「OPEC」の舞台裏とは?

 減産とは、原油生産国が「意図的に」生産量を絞ること、増産とは、「意図的に」生産量を増やすことです。

 一時的な供給障害や、油田の老朽化で生産が減少する自然減は、意図して減少させたわけではないのでここで言う“減産”には当てはまりません。たとえば、原油の生産地の自然災害、紛争などにより生産施設を閉鎖で生産が減るのは“減産”ではありません。

 世界の原油生産シェアがおよそ4割のOPECが、自らの意思で生産量を減らすと決めると、需給が引き締まるという思惑が働き、原油価格の上昇要因となります。

 最近では、OPECの議長を務めるサウジアラビアのファリハ産業鉱物資源相が、減産を実施して実現するとした世界の石油在庫を過去5年平均まで引き下げることについて「できることは何でもする」と強い口調で語りました。このような発言は投機筋をあおる要因になります。

 現在実施中の減産は、OPEC単独ではなく、ロシアを中心としたOPECに加盟していない原油生産国10カ国も参加した合計24カ国による協調減産となっているため、減産の効果は大きいと報じられています。

 

「減産延長決定→原油価格上昇」のシナリオが実現する期待大

 原油やそれに連動する石油製品の価格が上昇すれば、石油関連企業が保有する在庫の評価が上がります。また、採掘コストが変わらなければ、採掘を手掛ける企業にとっては原油価格の上昇分が利益となります。

 石油関連企業にとって、原油価格の上昇は大きなメリットです。したがって原油価格の上昇は、石油関連企業の株価上昇の要因になります。

 また、原油価格が上昇することで、広い意味で別のメリットがあります。

 原油価格の上昇は、世界景気の好転を示すバロメータの役割があると考えられます。乗り物、暖房、火力発電所等の燃料、衣類・プラスチック製品等の原材料になる原油の価格が上昇していることは、それだけ世界中でモノや人の往来が活発で、相応の需要を根拠としたモノの製造・販売が行われていることを印象付けます。

 一方、原油価格の下落はデフレ懸念を生じさせ、金利の引き上げプロセスに水を差す要因となります。景気が好転していることを前提とする金利の引き上げが先送りされれば、景気の回復が遅れていることを連想させるきっかけになります。

 このように考えると、原油価格は高すぎては困るが、ある程度上昇していた方がムードが良い、ということになります。

 当然のことながら、原油価格の上昇は原材料高の要因になりますので、行き過ぎた原油価格の上昇は、製造業や私たち消費者にとって大きなマイナス要因となります。

 原油は“経済の血液”と呼ばれるように、世界中の生産者と消費者の間の隅から隅まで浸透しているコモディティ(商品)です。このため、原油価格は上昇しても下落しても世界中にさまざまな影響をもたらします。

 ただ、今のところ、原油価格はかつての100ドル時代に比べれば半値程度の水準にあります。その意味では製造業や消費者にとっては一時に比べればコストは軽減していると考えられます。

 原油価格が月次平均で130ドル/バレルを超えていた2008年7月は、ガソリンスタンドのレギュラーガソリンの価格(全国平均)は180円/リットル(諸税抜きで116円程度)を超えました。しかし、2017年9月時点で原油価格は49ドル/バレル強、ガソリンスタンドのガソリン価格は131円/リットル程度(諸税抜きで65円程度)となっています。

図:WTI原油先物価格(期近 日足)とガソリン小売価格(全国平均 諸税抜き)

※ガソリン税+石油税が1リットルあたり56.34円として計算。
出所:CMEおよび資源エネルギー庁のデータより筆者作成 

 一方、生産者や石油関連企業において、あるいは原油価格の動向を株価の指標や景気のバロメータと考える人においては、現在の原油価格はまだ満足のいく価格に上昇していないと感じているかもしれません。

 主要な株価指数のさらなる上昇にはエネルギー関連株の上昇が必要、景気動向が徐々に熱を帯びてきていることの証として原油価格のさらなる上昇が望まれる、という考え方です。

 昨年からの米国の株価指数の上昇や今週まで続いた日経平均の連騰など、株価の上昇ムードが強まる中、原油価格の上昇を望む声は少なからずあると筆者は感じています。

 

現在の減産には課題あり。解消されないままの延長は混乱が生じる可能性

 このようなタイミングだからこそ、サウジアラビアなどの産油国が減産の延長によって需給バランスを引き締め続ける強い意思を強調していることがマーケットで好感されています。11月のOPEC総会で、減産延長→原油価格上昇というシナリオが描かれることを期待して注目が集まっているのです。

 OPECが、現在実施中の減産を継続して今後も世界の原油需給を引き締める考えがあることを世界中に示せば、原油価格が一段高となるかもしれません。

 一方で、減産がはじまって10カ月が経過しましたが、ここ4カ月間、OPEC14カ国は上限と決めた生産量を上回って生産を行っています。減産開始以降に急増した、減産の対象とはならない二次供給も高水準のままです。その他にも現在の減産には解消されなければならないさまざまな課題があります。

 OPECが、世界の石油市場の安定化という大義名分のもと、原油価格を上昇させて自らの利益を確保するため、かつ原油価格が上昇することを望む向きの期待に応えるための決断をするとどうなるでしょう。解消しなければならない課題がその後も置き去りにされれば、原油市場は混乱する可能性があると思います。

 とかく今回のOPEC総会は“減産延長”への期待が高まっていますが、延長の決定よりも足元の課題の解決のための議論、そして何よりもその施策の実践が必要であると考えます。総会前の水面下での交渉・調整、そして総会では課題の解消のための積極的な議論がなされることが望まれます。

 以下は総会までの主な石油関連の指標発表や会合のスケジュールです。※臨時で産油国の会合が行われる場合があります。

図:OPEC総会までの石油関連の指標発表・会合のスケジュール
 

出所:各種情報をもとに筆者作成

 11月30日(木)の総会でOPECはどのような決断をするのか?総会までの4週に渡り、OPECの減産に関連し、以下の点についてレポートしていきます。

・実施中のOPEC・非OPECの減産の現状
・現在の減産が抱える課題
・減産の大義名分と合意内容
・過去の減産との比較
・減産中の原油価格の動向
・総会で想定されるOPECの選択肢
・想定される減産の出口
・減産と米国の関係

など

(吉田 哲)

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