日本株「買い場」の判断継続:止まらない原油上昇、日本の景気・企業業績への影響は?
トウシル / 2021年7月13日 7時42分
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日本株「買い場」の判断継続:止まらない原油上昇、日本の景気・企業業績への影響は?
12日の日経平均は反発、2万8,000円台を回復
7月12日の日経平均株価は、前週末比628円高の2万8,569円となり、2万8,000円台を回復しました。
日経平均は先週、日本の景気回復の遅れを嫌気し、一時2万7,419円まで売られました。しかし先週末、米国の主要3指数(NYダウ、ナスダック総合、S&P500)がそろって史上最高値を更新したことを受けて、さすがに12日は買い戻しが入りました。
NYダウと日経平均の推移:2020年10月1日~2021年7月12日(NYダウは7月9日まで)
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ワクチン接種の遅れから、日本の景気回復がもたついていますが、先週はそれに追いうちをかけるように、「五輪無観客」「東京に4度目の緊急事態宣言」が発表され、日本の景気回復がますます遅れると嫌気した外国人投資家の売りが出たと考えられます。
そうはいっても、日本もいつかワクチン接種が進めば、いずれ米国のようにリベンジ消費(コロナ禍でできなかった消費がまとめて出ること)が盛り上がる局面が来るはずです。景気回復の「遅れ」を理由に売られている日本株は、今「買い場」と判断しています。
ところで、目先の日経平均に大きな影響があるのが、これから本格化する4-6月決算発表です。ポジティブ・サプライズ(良くて驚き)の決算を発表する銘柄が急騰し、ネガティブ・サプライズ(悪くて驚き)を発表する銘柄が急落する、決算の季節に入ります。
内需サービス産業が不振なのはわかっていますが、米国・中国景気回復の恩恵を受ける製造業の業績がどれだけ回復しているかが注目点です。
今、原油価格をはじめとした資源価格が一斉に上昇しています。今日は、それが日本の企業業績に及ぼす影響について書きます。
止まらない原油上昇、投機筋の買いが影響?
WTI原油先物の上昇が続いています。世界景気回復にともなう需要回復によって上昇しているのですが、中東・ロシアなどに潜在的な供給余力が残っていることを考えると、1バレル70ドル台への上昇は、やや行き過ぎとの見方もあります。
WTI原油先物の動き:2018年12月末~2021年7月9日
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コロナ・ショックが起こった直後の2020年4月には、需要急減で行き場のない原油が投げ売りされる不安から、WTI原油先物(5月限)は一時史上初のマイナス価格となりました。大口取引価格がマイナスとなった事実はないのですが、投機筋の買い建てがたまっていた原油先物は、4月20日にマイナス37.6ドルをつけました。
あれから1年3カ月たちました。今度は、原油先物の上昇が止まらないことが驚かれています。私は、ここでも投機筋の動きが影響していると思います。金融商品として原油に投資するマネーが世界中で膨張しているため、実需で説明できる範囲を超えて、原油先物が上昇している可能性があると思っています。
原油上昇は、短期的に日本の企業業績にプラス
日本は、原油など資源の輸入国です。本来なら、原油価格の上昇は、日本の景気・企業業績にマイナスのはずです。ところが、原油が急ピッチで上昇した場合は、事情が異なります。短期的には、資源の輸入国である日本の企業業績に、原油価格の上昇がプラス影響を及ぼします。
原油上昇がなぜ、原油の輸入国である日本の企業業績にプラスになるのでしょう。それは、主に在庫の影響によるものです。原油が急上昇した時、日本には以下の2つのプラス影響が及びます。
【1】資源事業にプラス影響
海外に資源権益を有する大手総合商社・非鉄などで、利益が拡大します。
【2】在庫評価益
石油精製業では70日分の原油備蓄が義務づけられています。安値で仕入れた在庫を持ったまま、石油製品の価格が上昇するため、巨額の在庫評価益が発生しました。原油だけでなく、鉄鋼石・石炭・銅・ニッケルなどの資源価格がいっせいに上昇していますので、非鉄・石油化学など素材産業全般で、安値で仕入れた在庫が業績を押し上げる要因となります。
これから本格化する4-6月決算で、原油など資源価格上昇の恩恵を受ける総合商社・化学・石油・鉄鋼・非鉄産業は業績好調が予想されます。ただし、半導体不足の影響で生産が停滞する自動車産業の業績モメンタムが低下している懸念もあります。決算発表に注目です。
長期的には資源価格上昇は日本の景気・企業業績にネガティブ
原油価格の上昇が短期的に日本の企業業績にプラスになるという話をしました。ただし、それはあくまでも短期的な話です。原油価格が大きく上昇してから1~2年たつと、安値在庫はなくなり徐々に最終製品にコスト高が転嫁されていきます。そうなると、消費にじわじわと悪影響が及ぶようになります。
小売価格への転嫁が早いのが、ガソリンです。既に、レギュラーガソリン全国平均がリッター当たり160円に迫っています。経験則では、160円を超えると、日本の消費に悪影響を及ぼします。
レギュラーガソリン小売価格(リッター当たり、全国平均):2000年1月5日~2021年7月5日
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/6/0/-/img_60951afc41b606851ab7db601796d1df47568.jpg)
日本は資源輸入国ですから、長期的には原油価格上昇のネガティブ影響を受けます。
原油価格上昇が、企業業績にプラス影響を及ぼすのは、価格が上昇してから1~2年までです。
ただし、自動車産業をはじめとした日本の製造業の国際競争力にとっては、原油が高騰した方が良いという面もあります。日本は省エネ技術で世界トップクラスにあるからです。
ガソリン価格が高騰すると、日本の自動車産業の競争力が一段と高まります。燃費が良く、性能の良い日本車が世界で見直されるからです。近年の原油価格下落は、日本の自動車産業にとってマイナスの影響を及ぼしています。
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