ウィンブルドン、ユーロ2020、東京五輪…スポーツイベントが為替相場に影響?
トウシル / 2021年7月14日 14時0分
![ウィンブルドン、ユーロ2020、東京五輪…スポーツイベントが為替相場に影響?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushiru/toushiru_33050_0-small.jpg)
ウィンブルドン、ユーロ2020、東京五輪…スポーツイベントが為替相場に影響?
ドル高円高とドル安円安の週替わり相場
先週のドル/円は、8日(木)がドル高円高、9日(金)がドル安円安と、週後半に日替わり相場となりました。このようなドル高円高、あるいはドル安円安という組み合わせの相場は時々起こります。
ドル高であれば、通常ドル/円では円安になりますが、ドル/円以外の通貨でみれば、例えばユーロだと、ドル高はユーロ安となります。従って、ユーロ/円でみると、ユーロ安の動きはユーロ安・円高となります。「ドル高→ユーロ安→ユーロ安・円高」という構図です。
そして、ドル高・円安に比べてユーロ安・円高の勢いの方が強い時には、ドル/円も円高方向に引っ張られやすくなり、ドル高と円高が同時に起こることになります。先週の8日の動きはこのような動きでした。
そして、9日の動きはその逆の動きでした。先程のユーロの例でいうと、「ドル安→ユーロ高→ユーロ高・円安」という構図です。そして、ユーロ高・円安の勢いの方が強い時には、ドル/円も円安方向に引っ張られやすくなり、ドル安と円安が同時に起こることになります。
「クロス円」のいわれ
ドル以外の通貨の対円通貨は総称として「クロス円」と呼ばれています。なぜ「クロス」なのかといいますと、まだ、マーケット規模が大きくない時にスイス/円やカナダ/円などのレート(プライス)は、ドル・スイスとドル/円のレート、あるいはドル・カナダとドル/円のレートから算出していました。
例えば、スイス/円の買いのレートは、ドル・スイスの「売り」のレート(ドル売り・スイス買い)とドル/円の「買い」のレート(ドル買い・円売り)を使って、スイス買い・円売りのレートを算出していました。このようにそれぞれの通貨の「売り」と「買い」のレートをクロスすることによって算出していたため、「クロス円」と呼ばれていました。
スイス/円は、ドル/円をドル・スイスで割って算出するため、割り算通貨とも呼びますが、ポンド/円や豪ドル/円は、「掛け算通貨」と呼ばれています。
例えば、ポンド/円の買いは、ポンド・ドルの「買い」のレート(ポンド買い・ドル売り)と、ドル/円の「買い」のレート(ドル買い・円売り)を掛け算して、ポンド買い・円売りのレートを算出します。「買い」と「買い」のレートを使うため、クロスしていませんが、これら掛け算通貨も合わせて「クロス円」と呼ばれています。
なかなかややこしい話ですが、こういう仕組みになっているのだなと読み流していただければ十分です。
今や、電子取引で自動的に瞬時に計算されるため、あるいは、クロス円単体でのマーケット規模が大きくなっており、算出しなくてもクロス円のプライスが立つマーケットができあがっているため、その仕組みを理解する必要はないですが、昔は、為替ディーラーが最初に直面する青春の門でした。「(計算が)遅い!」と何回も怒られたものでした。
さて、8日と9日の相場の話に戻りますが、8日にドル/円が110円を割れ、109円半ばまで円高になったのは驚きましたが、それまでに111円以上を買い過ぎたために反動で大きく円高に動いたのかもしれません。また、クロス円の円ショートポジションが巻き戻されたことが、円高を後押ししたようです。
先週お話したIMM(米国シカゴにある通貨先物市場)の円ショートは、6日時点ではほとんど減っていない状況でしたが、主要8通貨に対するドルの売り越し規模は、4月中旬以来およそ3カ月ぶりの低水準となっています。FRB(米連邦準備制度理事会)の政策変更によるドルの先高観から、ドルの売りポジションの解消が続いているようです。
ドルの売り越しとは他の通貨の買い越しになります。ドルの売りポジションの解消とは、ドルの買い戻し、他の通貨の売り戻しとなります。クロス円でいうと、クロス円の買いを解消するために売るということになります。ドル/円が思いもかけず109円台半ばまで下落したのは、クロス円の売りも後押ししたようです。
スポーツイベントが為替相場に影響!?
ドル/円とクロス円の上げ下げの値幅をみていると、9日の円安への反発は、ドル/円の戻りの値幅よりもクロス円の戻り幅の方が大きい動きとなっています。前日の反動によって買われ過ぎたかもしれません。特にポンド/円は買われ過ぎの印象が強いです。
テニスのウィンブルドン、サッカーのユーロ決勝戦の群集をみていると、英国で再び感染者が増えそうな気配ですが、これらの2大スポーツイベントが終わっても、19日のロックダウン解除の方針は変わらないようです。マーケットはこの方針を歓迎し、ポンドは買われているようです。
現状の英国は、コロナウイルス感染による重症者や死者が減ってきていますが、いくら重症者や死者が減っていても、2大スポーツイベントの影響や19日のロックダウン解除後に感染者が急増すれば、景気回復への期待は後退し、相場に影響を与えかねません。ユーロ決勝戦で優勝したイタリアも例外ではなさそうです。
クロス円の円安の戻り幅が大きかった背景として、もう一点気になったのは、東京五輪開催2週間前に発出された、日本の緊急事態宣言です。この宣言が影響したのかもしれません。
ただ、首都圏では無観客になることや、ワクチンが供給不足に陥っているとはいえ、1日100万回以上の接種スピード(12日のTV番組に出演した河野大臣が力説していました)を考慮すると、東京五輪が始まる頃から感染者が抑制されてくるかもしれません。
ドル/円は109円台から110円台半ばに戻ってきていますが、鈍い動きが続いています。こういう状況でクロス円の円高が再び進めば、ドル/円の上値を抑えてくるかもしれません。ドル高円高の世界が再び起こるかもしれません。ドル/円は値幅の狭い中でも、当面はクロス円の動きに左右されるような相場展開が続きそうです。
(ハッサク)
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