下向きムード優勢の日本株は「買い」が正解?米国株の「変調」にも注意!
トウシル / 2021年8月23日 14時41分
下向きムード優勢の日本株は「買い」が正解?米国株の「変調」にも注意!
足元の日本株は下向きムード
先週末8月20日(金)の日経平均株価は2万7,013円で取引を終え、前週末終値(2万7,977円)からの下げ幅が964円となりました。前週の2万8,000円台乗せをうかがう状況から、2万7,000円台割れが意識される展開へと転じた格好です。
足元の日本株は下向きムードが優勢になりつつある印象ですが、いわゆる「夏枯れ」の薄商いの中で売りが目立ったという見方もあり、ここが買いのタイミングと捉えて良いのか、判断が難しいところでもあります。
まずは、いつものように足元の状況から確認していきます。
(図1)日経平均(日足)とMACD(2021年8月20日取引終了時点)
あらためて先週の日経平均の値動きを振り返ると、週を通じて下げ基調が続く展開でした。
週初の16日(月)に「窓」空けで一段安となり、5日と25日移動平均線を下抜けてしまいました。その後も、その下抜けた5日移動平均線に上値を抑えられる格好で株価浮上のきっかけをつかめず、週末20日(金)には、これまでの年初来安値だった1月6日の2万7,055円も更新しています。
もっとも、週末の先物取引市場で、日経225先物が大取で2万7,240円、CME(シカゴ・カーマンタイル取引所)が2万7,255円で取引を終えているため、今週は反発スタートが見込まれます。
とはいえ、下段のMACD(移動平均収束拡散手法)がシグナルを下抜けているほか、先週の下落基調のローソク足が200日移動平均線から下放れしているように見えることもあり、「まだ下げてもおかしくない」形状です。
そもそも、先週末時点の5日移動平均線が2万7,365円のため、仮に今週の日経平均が先物取引の株価水準で始まったとしても、さらに5日移動平均線を超えるだけの買いの勢いが求められることになります。
TOPIXも同じく下向き形状
また、チャートの形状の悪化はTOPIX(東証株価指数)についても当てはまります。
(図2)TOPIX(日足)の動き(2021年8月20日取引終了時点)
先週のTOPIXも日経平均と同様に、週を通じて下落基調を描きました。
ここ何回かのレポートでも紹介してきたように、TOPIXは日経平均よりもチャートの形状が良い状況が続いていたのですが、そのTOPIXも、ついに先週の下落によって200日移動平均線にタッチするところまで下落してしまいました。
このまま200日移動平均線がサポートとして機能するかが今週の焦点になる一方、いわゆる「三角保ち合い」を下抜けている格好のため、TOPIXの下げ余地を感じさせています。
日本株は今、買いの好機か?
このように、日足チャートからみた日本株は下向きへの意識を強めていると言えます。では、現在の株安局面は買いの好機となるのでしょうか?
実際に、先週末時点の予想PER(株価収益倍率)は、日経平均で12.59倍、TOPIXで14.83倍と、過去の推移から見て比較的割安水準であると同時に、米国株(S&P500の約22倍)と比べても出遅れ感があります。
ただし、足元の日本株は、新型コロナウイルスの影が相場の重石となっています。国内の感染者拡大や、海外諸国と比べて劣後するコロナ対応力に加え、先週はトヨタが、半導体不足とアジアでの感染状況の影響によるサプライチェーンの滞りを理由に、9月の世界生産を4割削減すると発表したことで、景気や企業業績への警戒感が高まり、株価下落の要因となりました。
「割安感と出遅れ感の修正による日本株買い」というシナリオは、まだ健在ではあるものの、直近で増えてきた不安要素によって、もう少し下値を探る展開も考えられるため、「いったん見送る」のが無難かもしれません。
想定が外れて日本株が上方向に向かったとしても、積み上がった信用残などの需給要因が、戻り待ち売り圧力として存在していることもあり、慌てなくても買いのチャンスは今後も訪れると思われます。
また、目先の日経平均の値動きの目安としては、25日移動平均線乖離(かいり)率のボリンジャーバンドの各ラインが参考になりそうです(下の図3)。
(図3)日経平均の移動平均線乖離率(25日)のボリンジャーバンド
その中でも、下値として強く意識されそうなのは▲1σ(シグマ)あたりです。
20日(金)時点で計算した株価は2万6,925円なのですが、2万7,000円台の節目割れで買いが入りやすいことや、昨年10月30日から今年2月16日にかけての上昇幅に対する「半値押し」の株価水準(2万6,831円)に近いことがその理由です(下の図4)。中長期的なスタンスであれば、打診買いもアリかと思われます。
(図4)日経平均の押し目水準
ジャクソンホール後に株価が大きく動く可能性も
さらに、今週は米国で「ジャクソンホール会合」(米カンザスシティ連銀主催の経済シンポジウム)が週末にかけての26日(木)から28日(土)にかけて開催されます。
足元の米国株市場は、「FRB(米連邦準備制度理事会)がテーパリング(量的緩和縮小)をいつ始めるか?」という観測で、株価が上下しているため、同会合で予定されているパウエルFRB議長の講演に注目が集まっています。
ジャクソンホール後に株価が大きく動く可能性もありますので、最後に米国株市場の状況についても確認したいと思います。
(図5)米NYダウ(日足)とMACD(2021年8月20日終了時点)
先週のNYダウは、週初の16日(月)に最高値を更新した後、売りに押される展開となりました。5日移動平均線に上値が抑えられたり、25日移動平均線を下抜ける場面があったり、MACDがシグナルを下抜けたりしているものの、3万5,000ドル台の高値圏を維持しています。
ここ数週間の米国株市場を見ても、主要株価指数(NYダウ・S&P500・NASDAQ)がそろって高値圏での推移を保っているわけですが、バイデン政権のインフラ投資計画の前進や、過度なインフレ懸念の後退、小売り企業決算への期待などが好材料になったかと思えば、米経済指標でさえないものが増えはじめ、経済急回復の一服感や新型コロナの影響、中国の景気減速や、タリバンが国土を制圧したアフガニスタン情勢などの地政学的リスクの高まりなどの悪材料も併存しています。
こうして見ると、株価がもう少し上下に動いてもおかしくはないのですが、実際には目立った株価の「調整」も「爆上げ」もないまま上昇基調を描いています。
日々の株価の上げ下げは、材料を織り込んでいるというよりは、バリュー株やグロース株、ディフェンシブ株、金融株などの循環物色の口実となっている面があり、「多少の材料にもブレない堅調な相場」と見ることができる一方、「楽観ムード優位でリスクに無関心な相場」という見方もできます。
とはいえ、材料に鈍感な相場は、いずれやって来る調整局面のサインを読みにくいことでもあり、厄介と言えます。米国株については強気の見方が依然として多いですが、だからこそ、今週のイベントが米国株市場の潮目が変化するきっかけになるかもしれず、注意が必要かもしれません。
(土信田 雅之)
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