グレート・リセットの到来!?次の基軸通貨は?
トウシル / 2021年8月12日 14時58分
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グレート・リセットの到来!?次の基軸通貨は?
ゴールド相場のフラッシュクラッシュ
祝日で日本のマーケットがクローズしていた8月9日、ゴールド相場でフラッシュクラッシュが起きた。ゴールドにつれる格好でシルバーも急落し、ゴールドのスポット価格は一時4%、シルバーは一時7%も下落する動きとなった。
ゴールドCFD(日足)
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シルバーCFD(日足)
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先週末の米雇用統計が市場予想を上回る強い内容となり、米経済の順調な回復ぶりが示されたことがきっかけとの報道がある。
また、米ダラス連銀のカプラン総裁が、大規模な債券購入が過剰なリスクテークにつながっているとして、FRB(米連邦準備制度理事会)はすぐにでも資産購入のテーパリング(段階的縮小)を開始すべきだとの見解を示したことなども材料視されたと伝えられている。
このフラッシュクラッシュが起きる以前、ゴールド価格のボラティリティは極端に低下していた。
前述の報道にあるような理由というよりも、おそらく流動性が低下していたところにテクニカル的な要因が重なり一時的に激しい値動きを伴う調整が起きたということだろう。
ゴールドのボラティリティは極端に低下していた
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今月末に開催されるジャクソンホール会合において、テーパリングについての何かしらのシグナルが出される可能性がささやかれているが、FRBには主体的にテーパリングに踏み込む余地は残されていないと考える。
もしFRBがテーパリングに踏み出すとすれば、金利を含めた市場動向の混乱によって後追い的なテーパリングにならざるを得なくなるのではないだろうか。
米国は過去にも大きな政策転換に追い込まれたことがあった。50年前のニクソン・ショックである。
トランプ政権で始まった政策はバイデン政権で具現化された
1971年8月15日のニクソン・ショックから今年で50年目を迎える。ニクソン・ショックによって第2次世界大戦以降続いていたブレトン・ウッズ体制が終焉(しゅうえん)し、世界が変動相場制へと移行、歴史的な転換点となった。節目の50年を迎え、また世界は再び大きなターニングポイントを迎えているのかもしれない。
米国のニクソン大統領(当時)が米ドル紙幣とゴールドの兌換(だかん)を一時停止することを宣言した背景にあったのは莫大(ばくだい)な借金である。
1960年代から積み上がった貿易赤字とベトナム戦争の長期化によって財政赤字が急増し、ドルに対する信任が低下、1949年に245億ドルあった米国の金保有高は1970年には111億ドルと半分以下に減少した。
GDP(国内総生産)に対する米国の財政赤字の割合
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FRBのバランスシートはGDPの42%の水準まで拡大
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米国において懸案となっていた5,500億ドル(約60兆6,000億円)規模のインフラ包括法案を巡り、手続き上の最後のハードルが解消され、最終採決が行われる見通しとなった。この法案の通過で財政赤字の額はさらに積み上がることになる。
バイデン政権が誕生してから8カ月が経過した。意外なことにバイデン政権の政策は、ライバルであったトランプの政策との共通点が多い。むしろ前任者であるトランプ政権下で無秩序に始まったさまざまな政策がバイデン政権下で具体化されている。
ニューヨーク大学のヌリエル・ルービニ教授は、今のところバイデン政権は問題をはるかにうまく処理しているが、それはリスクを伴う危険なものであると指摘している。プロジェクトシンジケートに掲載されていた記事「Biden's Neo-Populist Economic Doctrine(バイデンのネオポピュリスト経済学ドクトリン)」から一部をご紹介しよう。
米国の莫大な双子の赤字を考えると、バイデン政権は強いドルの政策を追求することをあきらめた。トランプのように公然と弱いグリーンバックを支持するわけではないが、米国の競争力を回復し、国の急増する貿易赤字を減らすことができる通貨シフトを気にはしていない。
巨額の民間および公的債務は、FRBが債務の罠にとどまることを意味している。さらに、経済は脱グローバル化、米中デカップリング、社会の高齢化、移民規制、企業部門の抑制、サイバー攻撃、気候変動、およびCOVID-19パンデミックによる負の供給ショックに対して脆弱になっている。
緩和的な財政および金融政策は、今のところ労働者の収入のシェアを増やすのに役立つかもしれない。しかし、時間の経過とともに、同じ要因がより高いインフレまたはスタグフレーションを引き起こす可能性がある(上記のような急激な負の供給ショックが発生した場合)。不平等を減らす政策が私的および公的債務の持続不可能な増加につながる場合、夏の初めに警告したような停滞した債務危機の舞台が設定される可能性がある。
インフレに対処するために非伝統的な政策を段階的に廃止し、政策金利を引き上げれば、大規模な債務危機と深刻な不況を引き起こすリスクがある。しかし、緩い金融政策を維持すれば、二桁台のインフレに陥り、次の負の供給ショックが発生したときに深いスタグフレーションに陥るリスクがある。
中央銀行は事実上独立性を失っており、債務危機を回避するために巨額の財政赤字をマネタイズするしかなくなっている。公的債務も民間債務も急増しており、債務の罠に陥っている。今後、インフレ率が上昇するにつれ、中央銀行はジレンマに直面する。
次の基軸通貨は!?通貨の「グレート・リセット」に向けた動きが加速!
今年の6月11~13日に英国で開催されたG7サミットでは、低所得国のCOVID-19危機への対策として、IMF(国際通貨基金)の特別引出権(SDR)を1,000億ドル割り当てることが承認された。
『AFTERMATH 金融クライシスから財産を守る7つの秘策』の著者であるジェームズ・リッカーズの『「グレート・リセット」の到来、その1:世界的なインフレーションの新設計図』というレポートによると、通貨市場の方でも長年期待されてきた「グレート・リセット」に向けた動きが加速しているようだ。
「IMFの特別引出権(SDR)の基本的な考え方は、ドルを中心とした世界の通貨システムは本質的に不安定であり、改革が必要であるというものだ。ロバート・トリフィンは、支配的な基軸通貨の発行者が貿易赤字を出し、世界の他の国々がその通貨を十分に保有して、発行者から商品を購入し、世界貿易を拡大する必要があるとした。しかし、赤字を長く続けていると、やがて破綻してしまう。これは、1960年代初頭にドルについて言われたことだ。SDRはトリフィンのジレンマを解決してくれる。今後数年の間に、国連や世界銀行などの多国籍組織にSDRが発行され、民主的に選出された機関の監督下にない気候変動インフラやその他のエリートのペットプロジェクトに使われることになるだろう。私はこれを「世界インフレの新設計図」と呼んでいる」
(ジェームズ・リッカーズ)
2009年以降、IMFは、SDRを大量に新規発行するためのプラットフォームを構築し、SDR建て資産の深い流動性プールを確立するために、ゆっくりとしたステップを踏んできた。
SDRは、IMF加盟国に大量に発行することができ、将来的には、国際収支の決済、石油価格の決定、エクソン・モービル、トヨタ、ロイヤル・ダッチ・シェルなどの世界最大の企業の財務会計など、世界で最も重要な取引の一部に使用することができる。
ドルの購買力の推移(1913~2020年)
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バイデン政権による追加の、かつ大胆な支援策によって、家計収入全体に占める政府給付金の割合は過去最高となる34%まで上昇した。言い換えれば、現在、米国の世帯収入の3分の1は国からの給付によるものだということになる。
米国に続いて英国もテーパリングに及び腰になってきた。もう緩和中毒の中央銀行は何もできないということだ。ただ資産を押し上げ、行けるところまで行くということだろう。インフレに言及する企業の数が急増しており、インフレはすぐそこにまで迫っている可能性が高い。
「認識されている価値が失われることによる痛みは、ここから価格が上昇するにつれて、さらに激しくなるだろう。要するに、ボルカー以来のFRBはかなり無知であり、今もそうである。しかし、より注目に値するのは、資産バブルへの対処が明らかに無能であるにもかかわらず、これら4人のFRBのボス全員に示された持続的な信頼である」と、GMOのジェレミー・グランサムは述べているが、より注目に値するのは、資産バブルへの対処が明らかに無能であるにもかかわらず、グリーンスパン、バーナンキ、イエレン、パウエルという4人のFRBのボス全員に示された持続的な信頼である。
FRBの政策は小手先のみで、麻薬(おカネ)を注射しまくって一過性、一時の元気を与えるだけという緩和依存症に陥っている。「世界インフレの新設計図」はすでに奥の院によって用意されているのかもしれない。歴史と論理に従えば、ばらまいたおカネはいずれインフレ、増税、通貨切下げなどで減価していくだろう。
「言い換えると、実物資産と勤労だけが価値の蓄えになる。株式も債券もすべての会社が潰れてしまえば、無価値になる。債務者は破産し、残された名目的価値はインフレですっかり無くなってしまう。ゲームのスタートオーバーになるかもしれないが、今までいたプレイヤーはすべて吹っ飛ばされてしまっている」
(ジェームズ・リッカーズ)
8月11日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」
8月11日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、土居雅紹さん(楽天証券 株式・デリバティブ事業部長)をゲストにお招きして、「ここからの株式市場の見通しと注目銘柄」・「高配当銘柄と複利運用」というテーマで話をしてみた。放送をぜひ、ご覧ください。
配当貴族指数銘柄の配当利回りランキング「トップ30」
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ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。
8月11日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー
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(石原 順)
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