為替は首相交代よりもFOMCに関心
トウシル / 2021年9月15日 14時4分
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為替は首相交代よりもFOMCに関心
先週はドル全面高、円全面高の展開
先週はドル全面高、円全面高の展開でした。ドル/円は、株高と金利上昇を受けて1ドル=110円台半ばに上昇しましたが、結局勢いは続かず、再び109円台に下落しました。その後110円を挟んで動いていましたが、14日の米8月CPI(消費者物価指数)を受けて、109円台半ばまで下落しました。
米8月CPIは、前年比+5.3%でしたが、コアCPIが+4.0%と前月よりも鈍化し、予想も下回りました。コアCPIの前月比も+0.1%と前月+0.3%から上昇率が鈍化し、物価の一服感を示すような結果となりました。この数字を受けて金利は低下し、ドル安となりました。
そうはいっても、これまでの中心レンジ109.50~110.50円をブレイクしていない状況ですが、CPI発表後上昇したNYダウがその後下落した動きをみていると、レンジをブレイクするような気配はありそうです。米議会民主党が発表した増税案が重しになったという見方があるようです。
今週は14日(火)の米CPIの他に、16日(木)米小売売上高、17日(金)ミシガン大学消費者信頼感指数と重要指標が続きます。小売売上高は前月マイナスでしたが、改善されるのかどうか、あるいはデルタ株の感染拡大を受けて消費行動に影響がでているのかどうか注目です。
また、先月、10年振りの低さだったミシガン大学消費者信頼感指数は、前回の修正があるのかどうか、あるいは前回の反動で大きく改善するのかどうか、それともデルタ株の影響で同じような水準もしくは悪化するのかどうかに注目です。
そして来週には9月のFOMC(21~22日)が開催されます。FOMC(米連邦公開市場委員会)を控えているため、これらの重要指標によって相場は大きく動かないかもしれませんが、FOMCの判断を占う上でも重要な指標となります。14日の米CPIは、インフレは一時的とするFRB(米連邦準備制度理事会)の認識のひとつの確認材料になったかもしれません。
日経平均は、31年振りの高値を付けました。首相交代による経済政策への期待や、感染者の減少と米国に迫る接種率の上昇を受けて株は買われているとのことですが、ドル/円には直接的な影響は出ていないようです。ドル/円にとっては政局よりも来週のFOMCへの関心が強いようです。
景況感と金利見通しに注目
テーパリング開始時期については、年内11月か12月に開始とマーケットの見方は分かれていますが、ダラス連銀のカプラン総裁は、8日、現在のデータは9月のテーパリング発表と10月の開始が適切であることを示唆していると発言しました。マーケットの見方よりも早い開始時期の見解ですが、カプラン総裁は今年のFOMCで投票権は持っていません。
一方でデルタ株の感染拡大の影響によって、テーパリングは年明け開始との見方も浮上してきています。
来週のFOMCでテーパリングの発表がなくても失望からマーケットが荒れることはあまり想定出来ませんが、それよりもFRBが現在の景気をどのように認識しているのか、また、金利見通しに変化があるのかどうかが注目材料となりそうです。
8月27日のジャクソンホール会議でパウエルFRB議長は、「ここ数カ月、労働市場の見通しはかなり明るくなった」と指摘していましたが、9月3日に発表された8月米雇用統計の非農業部門雇用者数が23.5万人と予想(75万人)を大きく下回ったことを受けてどのような労働環境や景気認識を示すのか注目です。
また、9月8日にFRBが発表した地区連銀経済報告(ベージュブック)では、感染力が強いデルタ株の感染拡大が響き、7月上旬から8月にかけて、景気回復が「緩やかなペースへとわずかに鈍化した」との認識を示しました。前回7月に報告した「米経済は力強さを増した」から、景気判断を引き下げました。
「地区連銀経済報告」は、米国内の12の地区の連邦準備銀行が、それぞれ管轄する地区の経済状況をまとめた経済報告です。表紙の色がベージュ色であることから、「ベージュブック」と呼ばれています。年8回開催されるFOMCの2週間前の水曜日に発表され、金融政策を変更するかどうかの検討資料となりますが、今回のFOMCにどのような影響を与えるのか注目です。
テーパリング後の利上げ時期に注目
今回のFOMCではテーパリングの開始時期が注目されていますが、テーパリング後の次の段階となる利上げ時期、すなわち金利見通しにもより注目が高まっています。
前回6月のFOMCでは、それまでのゼロ金利政策を2023年末迄継続するとの見通しから、
- 18人の内13人が2023年末までの利上げ再開を見込み、0.25%幅で2回の利上げ見通し
- 2022年の利上げ見通しも、それまでの4人から7人に増加
と、ゼロ金利政策の解除時期を前倒しし、2023年中とする見通しを示しましたが、今回、前回よりも利上げ時期をさらに前倒しで見るメンバーが増えるかどうかにマーケットは注目しています。
つまり、2022年、2023年に利上げを見通すメンバーが増えるかどうか、また、その先2024年の利上げ見通しがどうなるかにも注目しています。今回、テーパリングについての決定が何もなくても、金利見通しが前回よりタカ派的であれば、金利は上昇し、ドル高に反応することが予想されます。
今回のFOMCでは、前回7月からの環境の変化、すなわち、労働市場の改善から足踏み、景気の停滞感、株の高値圏での足踏み、物価の一服感という変化の中でどのような判断や見通しになるのか注目です。また、デルタ株の感染拡大はパウエル議長もリスクとして認識していますが、特に子供への感染が拡大している中でどういう判断になるのか注目です。
米国では9月の新学期を迎え、学校の再開が本格化しています。NY市ではこれまでは対面かオンライン授業かを選択できましたが、13日からはオンライン授業を取りやめ、対面授業が全面再開しました。感染対策として公立校の全職員に対してワクチン接種を義務化したほか、学校でのマスク着用を求めています。
ただ、州によって感染対策の差は大きい状況のため、学校の全面再開が感染拡大のきっかけにならなければよいのですが、米国小児科学会(AAP)の調査によると、9日までの1週間で子どもの感染者は24万人を超え、過去2番目の大きさとなっているそうです。
BSのワールドニュースを見ていると、連日、米国の子供の感染問題がトップニュースに挙げられています。それを見ていると、いずれ日本にも起こるのではないかと懸念されます。
(ハッサク)
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