急落した日本株は買い場となるか?足元の買いは「深追いしない」程度に
トウシル / 2021年10月4日 12時30分
急落した日本株は買い場となるか?足元の買いは「深追いしない」程度に
日経平均は2万9,000円割れ。反発か調整か、25日移動平均線がカギ
「月またぎ」で10月相場入りとなった先週末1日(金)の日経平均は2万8,771円で取引を終えました。前週末終値(3万248円)からの下げ幅は1,477円と大きくなったほか、節目の3万円や2万9,000円も下回っています。
足元の相場地合いは、中国恒大集団の債務問題をきっかけに雲行きが怪しくなっていましたが、先週は、FOMC(米連邦公開市場委員会)後の10年債利回りが急ピッチで上昇していたことや、デットシーリング(債務上限)をめぐる米議会の動向への警戒などを背景とした米株市場の下落が日本株にも波及して、下げが加速した格好です。
とはいえ、先週末の日経225先物取引が大取で2万9,050円、シカゴCMEで2万9,055円と上昇して終えたこともあり、今週の日本株は下げ止まりから反発への攻勢を強められるかが焦点になるわけですが、であるならば、今が絶好の「買い場」なのか否かの判断が重要になってきます。
まずは、いつものように、先週の振り返りから始めていきます。
■(図1)日経平均(日足)とMACDの動き(2021年10月1日取引終了時点)
あらためて、先週の日経平均の値動きを振り返ると、上の図1を見ても分かるように、週を通じて下落基調が続き、5日連続の前営業日比マイナスとなりました。
週初の27日(月)と翌28日(火)の取引では3万円台を保っていたのですが、自民党総裁選の投開票が行われた29日(水)に、「窓」を開ける格好でその3万円台を割り込み、25日移動平均線あたりまで株価水準を切り下げていきました。
さらに週末の1日(金)には一段安となって、2万9,000円水準を下抜け、下段のMACDも下向きを強めています。
その一方で、何とか75日・200日移動平均線がサポートとして機能しているように見えるほか、冒頭でも触れたように、先物取引が上昇していたことを踏まえれば、株価の反発シナリオも見込まれます。
その場合、25日移動平均線がカギとなります。
ここを超えて本格的に戻りを試しにいくのか、それとも、再び跳ね返される「リターン・ムーブ」となって、もうしばらく調整局面が続くのかの分かれ目になるわけですが、相場の高値圏では、株価が下抜けした移動平均線を早い段階で回復できず、リターン・ムーブの動きによって、天井が形成されてしまうことがよくあります。
1日(金)時点の25日移動平均線は2万9,516円です。移動平均線の値は日々変化していきますが、少なくとも、日経平均は先週末終値からもう一段階、株価水準を底上げする必要があります。
目先の値動きの範囲
そして、25日移動平均線への注目度が高まりそうなため、目先の値動きの範囲については、前回のレポートと同様に、25日移動平均線乖離(かいり)率をボリンジャーバンド化したものが、目安として機能しそうです(下の図2)。
■(図2)日経平均25日移動平均線乖離率のボリンジャーバンド(2021年10月1日時点)
先週末1日(金)時点で計算すると、プラス2σの3万2,376円から、マイナス2σの2万8,884円が目先の値動きの範囲となります。
フィボナッチ分析とエリオット波動:先週の冷静さは失われつつある
また、前回のレポートでは、最近の慌ただしい値動きについて、「分足チャートで見ると意外と冷静」ということを指摘しましたが、先週の急落によって、新たな変化が出てきたかについても確認していきます。
■(図3)日経平均(60分足)のフィボナッチ分析とエリオット波動(2021年10月1日時点)
先週の日経平均の値動きを60分足で振り返ると、9月30日(木)まではフィボナッチ・ファンの38.2%ラインと61.8%ラインを意識しながら推移していたのですが、1日(金)の取引によって、61.8%ラインを下放れする格好となりました。
今週の日経平均が反発する展開となった場合には、まずは61.8%ラインへ復帰できるかが焦点になります。
このように、フィボナッチ・ファンで見た場合の日経平均は値動きが崩れたような印象になっています。
確かに、フィボナッチ・ファンがサポートとして機能しなくなってしまいましたが、週末にかけての下落局面は、エリオット波動の第3波の上昇幅の押し目(オレンジ色のライン)が意識されていたことが分かります。
このあたりの株価水準は、ちょうど図1の75日や200日移動平均線の水準でもあります。
エリオット波動論において第4波の許容範囲は広く、第1波の頂点の株価水準(緑色のライン)を下回らない限りは第4波が継続とみなすことができますので、下値の余地も残されており、そのため、足元の状況はまだ第4波の途中にあると考えることができます。
先週の値動きも一応、テクニカル分析の節目が上げ下げのポイントになってはいるものの、下値の目安が次々と切り下がって不安定さが増し、前回までの冷静さが失われつつあるような印象です。そのため、しばらくは不安定な相場展開が想定されそうです。
米株市場はNYダウ、NASDAQともに「リターン・ムーブ」で下落
そして最後に、先週の日本株の下落の要因となった米株市場の動きもチェックします。
■(図4)米NYダウ(日足)とMACDの動き(2021年10月1日取引終了時点)
上の図は米NYダウ平均株価(日足)とMACDの推移を示したものです。移動平均線は25日と米株市場でよく使われる50日移動平均線を描いています。
前回のレポートでは、25日と50日移動平均線のデッド・クロスが出現する中で、株価が移動平均線を上抜けできずに跳ね返されてしまうリターン・ムーブに注意と指摘していましたが、その注意すべきリターン・ムーブの動きとなってしまいました。
今週も引き続き、株価が25日や50日移動平均線を上抜けできるかが焦点になりますが、先週のように、再びリターン・ムーブの動きが出てしまうことや、25日移動平均線が下向きとなっている点には注意が必要です。
■(図5)米NASDAQ(日足)とMACDの動き(2021年10月1日取引終了時点)
先週のNASDAQについても、株価が25日移動平均線を上抜けることができるかが焦点でしたが、結局はNYダウと同様に25日移動平均線で跳ね返されるリターン・ムーブで下落となったほか、50日移動平均線も下抜けてしまいました。
これにより、過去にチャートをさかのぼったときの2つのパターン(5月の上昇と3月の下落)のうち、後者の3月のパターンの値動きに近くなってしまった格好です。
今週の株式市場は、米国の債務上限問題をめぐる米議会の動向や、新たに誕生する国内政権の陣容などの政治的材料が注目される中、週末のオプション・mini先物取引のSQ日を控え、株価が上にも下にも大きく動きやすい地合いとなります。
株価が思ったよりも勢いよく反発する展開も考えられるのであれば、今が絶好の買い場となるのかもしれません。
ただし、株価の先高感の理由とされる、「米国のテーパリング開始は織り込み済み」、「米国の物価上昇は一時的にとどまる」、「中国恒大集団の問題は限定的」、「企業業績の回復基調は続く」、「国内政治への期待は買い」という前提シナリオについて、これらを揺るがすような材料が増えはじめてきています。
シナリオ修正の動きとなれば、株式市場も本格的に調整する展開が想定されます。テクニカル分析的にも、日米の株価指数がそろって、リターン・ムーブの動きを見せているのも気掛かりです。そのため、足元の買いは「短期間で深追いしない」程度にとどめておくのが無難かもしれません。
(土信田 雅之)
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