日経平均、目先の戻り期待と次の下落~決算シーズン到来でどうなる?
トウシル / 2021年10月11日 12時53分
日経平均、目先の戻り期待と次の下落~決算シーズン到来でどうなる?
日経平均は3週連続下落。週末にかけてやや持ち直す
先週末10月8日(金)の日経平均株価終値は2万8,048円でした。前週末終値(2万8,771円)からは723円の下落、週足ベースでも3週連続の下落となりました。
今週の国内株市場は、「アフター米雇用統計」で迎えるわけですが、その米雇用統計に対する米国株市場の初期反応が小幅安と微妙なものとなっています。
それもあって、引き続き、中国恒大集団の債務問題や、米長期金利の動向とその背景にある資源価格の高止まりや、サプライチェーン(供給網)の企業業績への影響などをうかがいながら株価水準を探る展開となりそうです。
とりわけ、今週は米国では大手金融機関、日本国内では大手小売・国内消費関連企業の決算が予定されています。
米国のテーパリング(量的緩和縮小)への道筋がほぼ明確になり、日米の決算シーズンが本格化しつつある中、今週の企業決算を受けた株式市場の動きは、金融相場から業績相場へのスムーズなバトンタッチができるかの試金石になりそうです。
まずは、いつものように足元の状況から確認していきます。
■(図1)日経平均(日足)とMACDの動き(2021年10月8日取引終了時点)
あらためて、先週の日経平均の動きを振り返ると、下げ幅が拡大する動きから、週末にかけてやや持ち直す展開となりました。
具体的に見ていくと、週初の4日(月)の取引は反発し、節目の2万9,000円台を回復するスタートとなったのですが、その後に失速してマイナスに転じ、結局この日は株価が75日・200日の移動平均線を下抜ける、いわゆる「2本抜け」となって、さらなる下落を暗示する形となりました。
実際に、翌5日(火)は「窓」を空けて下落し、2万8,000円台を下回ってしまいました。続く6日(水)も反発でスタートしたのですが、売りの勢いにあらがえず、週間の安値となる2万7,293円をつける場面もありました。
週末にかけての7日(木)と8日(金)は、さすがに下げのペースが急ピッチだったこともあって、買い戻される動きとなりました。2万8,000円台は何とか回復しましたが、両日のローソク足は上ヒゲの長い「コマ足」となっており、売りの強さが感じられます。
そのため、先週の日経平均の推移は、目先の反発期待よりも、ポジションを外す動きの方が強かったと思われます。
先週の動きによってポジション整理の動きが一巡できていれば、今週は大きな株価の戻りも期待できますが、今度は短期の利益確定売りが上値を抑える可能性があり、75日・200日といった移動平均線や、節目の株価水準あたりでの攻防が焦点になりそうです。
日足・週足チャートは目先の戻りを期待させる印象
次に、週足チャートでも日経平均の動きを確認します。
■(図2)日経平均(週足)のフィボナッチ・ファンとMACD(2021年10月8日時点)
上の図2は、週足の日経平均に、昨年(2020年)の3月19日週と今年(2021年)の2月19日週を起点とした「フィボナッチ・ファン」を描いたものです。
まず、足元のローソク足ですが、13週・26週移動平均線の「2本抜け」と同時に、52週移動平均線がサポートとなっており、中期的な相場はまだ崩れずに持ちこたえているように見えます。52週移動平均線は直近の8月や、昨年6月と7月にもサポートして機能しています。
さらに、このサポートとなっている52週移動平均線が、ちょうどフィボナッチ・ファンの50%ラインとも重なっていることが分かります。8月のケースでは株価がフィボナッチ・ファンの38.2%ラインまで戻して年初来高値を更新しました。
このように、日足と週足チャートからは、目先の株価の戻りを期待させる印象となっています。
「次の下落局面」に要注意
また、前回のレポートでは、分足(60分足)チャートで、「まだ下げ余地があるものの、下値の目安が次々と切り下がって不安定さが増し、冷静さが失われつつある」と述べました。そのため、先週の値動きによって、見方に変化が生じていないかも検証したいと思います。
■(図3)日経平均(60分足)のフィボナッチ分析とエリオット波動(2021年10月8日時点)
前回のレポートでは、「日経平均が8月20日の年初来安値を起点に、エリオット波動の「上昇推進」のリズムとなっており、足元は下落修正の第4波を描いている最中」、また、「この第4波の許容範囲は広く、上昇推進第1波の高値を下回らなければ大丈夫」と述べました。
しかし先週の下落によって、その第1波の高値を下回ってしまい、第4波が崩れてしまいました(ピンク色の線)。
そのため、今度は前回までの「上昇推進」のリズムから、「下落推進」のリズムに移った可能性があります。その場合、年初来高値を更新した9月14日を起点に、波動をカウントしていくことになります(オレンジ色の線)。
となると、先週の値動きによって、下落推進の第3波から、上昇修正の第4波に差し掛かりつつある状況と考えられ、この上昇修正第4波が終了した後に、下落推進の第5波が訪れることが想定されます。
つまり、目先の相場で気を付けなければいけないのは、「次の下落局面」ということになります。
TOPIXも上昇推進のリズムが崩れる
もっとも、先週は週末にオプション取引・mini先物取引のSQが控えていたため、先物取引の需給の影響を受けやすい日経平均にとっては、市場心理の揺らぎが大きかった面を考慮する必要があります。そこでTOPIX(東証株価指数)についても見ていきます(下の図4)。
■(図4)TOPIX(60分足)のフィボナッチ分析とエリオット波動(2021年10月8日時点)
TOPIXについても日経平均と同様に、先週の値動きによって、上昇推進のリズムが崩れてしまっており、「次の下落局面」に注意という状況となっています。
ただし、週足のTOPIXの状況を見ると、日経平均よりはかなり堅調と言えます(下の図5)。
■(図5)TOPIX(週足)のフィボナッチ・ファンとMACD(2021年10月8日時点)
週足のTOPIXは26週移動平均線がサポートとなっています。また、フィボナッチ・ファンで見ても、まだ38.2%ラインが意識されている段階です。
10月中旬に差し掛かると、日米で企業決算シーズンが本格化します。企業業績への注目度がより一層高まることを踏まえると、一部の銘柄の動きに左右されやすい日経平均よりも、TOPIXの方が日本株全体の温度感を測る上で重要になってきます。
NYダウ、S&P500、NASDAQいずれも50日MAの回復が焦点に
最後に米国株市場についても見ていきます。
■(図6)米NYダウ(日足)とMACDの動き(2021年10月8日取引終了時点)
■(図7)米S&P500(日足)とMACDの動き(2021年10月8日取引終了時点)
■(図8)米NASDAQ(日足)とMACDの動き(2021年10月8日取引終了時点)
米株市場では、NYダウ平均株価、S&P500、NASDAQの主要3指数のいずれも50日移動平均線の回復が焦点になります。しかも、直近で一度跳ね返される「リターン・ムーブ」の動きを見せているため、再チャレンジになります。
今回も50日MAが抵抗となって跳ね返されてしまった場合には、米株市場全体が下値を探るというシナリオも浮上するため、米株市場の動きにも注意しておく必要がありそうです。
(土信田 雅之)
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