日経平均は「積立投資」に最適な暴れ馬。NYダウより上げも下げも大
トウシル / 2021年10月21日 7時50分
日経平均は「積立投資」に最適な暴れ馬。NYダウより上げも下げも大
荒れる日経平均、NYダウより値動きが荒い
日経平均株価の乱高下が続いています。日経平均を動かしているのは、過去30年間、外国人投資家です。外国人は、日本株を売るときは下値を叩いて売り、買うときは上値を追って買ってくるために、日経平均の値動きを荒くしています。
外国人投資家から見ると、日本株は「世界景気敏感株」です。世界中で何か不安材料が出ると、とりあえず外国人は日経平均先物を売ります。日本にとってあまり関係のない地域で紛争が起こっても、世界の金融市場に不安が広がれば、外国人の売りで日経平均が下がります。
2013年5月バーナンキ・ショック【注】が起こった時も、震源地の米国株があまり下がらなかったのに、日経平均は直前高値からその後の安値まで21%も下落しました。
【注】バーナンキ・ショック
2013年5月22日、当時FRB(米連邦準備制度理事会)の議長だったバーナンキ氏による「将来、金融緩和を縮小する可能性がある」との発言が伝わると、世界中で株が急落しました。この時、主要国株価指数の中でもっとも下落が大きかったのが日経平均でした。NYダウ(ダウ工業株30種平均)の下げは相対的に小幅でした。
外国人によって日経平均が乱高下するのは今も続いています。中国恒大の不安、米国債務上限問題がこじれる不安などが高まると、欧米株があまり下がらなくても、日経平均は外国人売りで大きく下がります。
そして、不安が薄れたときには、外国人の買い戻しで日経平均が大きく上昇します。日経平均インデックスファンドに積立投資をしている人には、落ち着かない日々が続いているかもしれません。
私は、日本株は今も割安で、積立投資を続けることで、中長期で資産形成に寄与する資産と考えています。ただ、非常に値動きが荒く、投資タイミングをはかるのが難しいアセット(投資対象)です。
アベノミクスがスタートした2013年以降の日経平均とNYダウの値動きを比較したグラフをご覧ください。
日経平均とNYダウの値動き比較:2012年末~2021年10月20日(NYダウは19日まで)
日経平均がNYダウより値動きが荒いことが、わかります。
日経平均は、アベノミクスが始まった2013年を起点としてNYダウと比較すると、NYダウを上回る上昇率となっています。ところが、下げ局面(上のグラフで1から9まで番号をつけた所)だけ見ると、日経平均はNYダウより大きく下落しています。
日経平均は、上げるときも下げるときもNYダウより値動きが大きく、それだけにいつ買ったら良いのか、タイミング判断がむずかしいと思います。
値動きが荒いアセットへの投資では、積立投資が効力を発揮する
これから資産形成を考えている個人投資家は、月々1万円とか2万円とか、金額を決めて、積み立てていくのが良いと思います。積立投資は、日経平均インデックスファンドなど、値動きの荒いアセットへの投資で効力を発揮します。
積立投資の威力を理解いただくために、簡単な例を作りました。まず、以下のクイズを解いてみてください。
【クイズ】
以下の投信A・投信Bに、1カ月後と2カ月後に1万円ずつ投資したとして、3カ月後の資産価値は、どちらが大きいでしょう?
◆値動きの乏しい投信A
1万円でスタート、1カ月後・2カ月後・3カ月後も1万円のまま。
◆値動きが激しい投信B
1万円でスタート、1カ月後に1万2,000円(スタート時より+20%)に上昇、2カ月後に8,000円(スタート時より▲20%)に下落、3カ月後にスタート時の1万円に戻る。
どちらも、1万円でスタートして、3カ月後に1万円です。ところが、投信AとBに積立投資した場合、3カ月後の資産価値に差が生じます。
【答え】
投信Bに投資した方が得です。投信Aでは、投資した2万円が、3カ月後に2万円のままですが、投信Bでは、投資した2万円が、3カ月後に2万800円に増加します。
【解説】
投信Bに、1万円ずつ投資し続けると、価格が上がったときには少ない量しか買えませんが、価格が下がったときにたくさん買えます。高いときに少し買い、安いときにたくさん買う運用が、自然にできていることになります。
【さらに詳しい解説】
投信Aは、1カ月後に1万円で1単位、2カ月後にも1万円で1単位買えます。合わせて2単位取得できます。その評価額は、3カ月後に2万円です。値動きがないので、損も得もしません。
投信Bはどうでしょう? 1カ月後、1万2,000円に上昇したときは、1万円で0.83単位(10,000÷12,000)しか買えません。
ところが、8,000円に下がった2カ月後には1万円で、1.25単位(10,000÷8,000)買うことができます。合わせて2.08単位取得できます。3カ月後に価格が1万円に戻れば、評価額は、2万800円となります。800円だけ、資産価値が増えています。
ファンドマネジャーにとってもうれしかった「積立投資」
私は、25年間、年金・投資信託などの日本株を運用するファンドマネジャーでした。ファンドマネジャー時代に、とても残念に思ったことと、うれしかったことがあります。
まず、残念なこと。私が運用していた公募投信(日本株のアクティブ運用ファンド)では、日経平均の高値圏で設定(買い付け)が増えるのに、日経平均の安値圏では、ほとんど設定がありませんでした。
株は安いときに買って、高くなったときに売ると利益が得られるわけですが、公募投信では、残念ながら、その逆の動きが見られました。
次に、とてもうれしかったこと。私が運用していたファンドが、DC(確定拠出年金)の運用対象となったことです。多数の企業に採用していただけました。
DCでは、毎月、一定額の設定が入り続けます。加入者の方に、定時定額で積立していただいたことになります。そうすると、日経平均の高値でも、安値でも、淡々と設定が入ってきます。
日経平均が大暴落して世の中が総悲観になっているとき、往々にして、絶好の投資チャンスとなっています。ファンドマネジャーとしては、そんなときこそしっかりと投資を増やしてほしいと思います。ところが公募投信では、そういうときに設定が入ってきません。
私が運用していたDCファンドでは、定時定額の積立投資が入ってきますので、リーマンショックで日経平均が大暴落し世の中が総悲観になっているときでも、淡々と積立が入ってきました。
今年のコロナ危機でも、積立投資では安いところでも、投資が続けられています。
誰でも、株は安いときに買って高いときに売りたいと思うのでしょうが、言うのは簡単でやるのはとても難しいことです。そうするためには、世の中総悲観になっているときに株を買い、みんなが明るくなって強気になっているときに株を売らなければなりません。
それは、少しひねくれた人にしかできないことです。普通の素直な人は、みんなが明るくなっているときは株を買いたくなり、暗くなっているときは株を売りたくなるでしょう。
普通の素直な人は、変にいいタイミングで株を買い、いいタイミングで売ろうとしない方がいいと思います。それでは、どうするべきか? 私は、定時定額(たとえば毎月1万円)の積立投資をしていくべきと思います。
積立投資のもう1つの効果、支出を収入の範囲に収める習慣が身につく
毎月1万円の投資を行うためには、その分、支出を絞らなければなりません。収入を上回る支出を行っていると、積立投資はできません。
積立投資をする習慣を身につければ、自動的に、支出が収入を下回るようにコントロールする習慣を身につけることになります。
(窪田 真之)
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