成人を迎えた確定拠出年金、次の20年はどこへ向かうか?:DC(確定拠出年金)20年史(最終回)
トウシル / 2021年10月27日 10時22分
![成人を迎えた確定拠出年金、次の20年はどこへ向かうか?:DC(確定拠出年金)20年史(最終回)](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushiru/toushiru_34500_0-small.jpg)
成人を迎えた確定拠出年金、次の20年はどこへ向かうか?:DC(確定拠出年金)20年史(最終回)
40年以上かけて成熟を深めた米国の401(k)とIRA、日本はその背中を追う
2021年10月1日、日本の確定拠出年金制度が施行されてから20年の日を迎えました。
厚生省(当時)と自民党の間で法案提出の準備が進められている情報をチェックしたり、国会で法案がなかなか通過せずにやきもきしたりする時代を知る者としては、この制度が廃れることもなく、成人の日を迎えたことをうれしく思います。
日本版401(k)と呼ばれることもあるように、米国の401kプラン(企業型DC[確定拠出年金]に相当)とIRA(個人退職勘定、iDeCo[イデコ:個人型確定拠出年金]に相当)という、1980年代以降大きく普及した制度が日本の制度誕生の参考となりました。言ってみれば、20歳以上の先輩ということになります。
この2制度は、米国では国民の老後資産形成を担う重要な制度として機能しています。過去にも紹介しましたが、平均残高は10万ドルを超えています。2021年6月末の最新データ(フィデリティ・インベストメンツ調べ)によれば、401(k)の平均残高は12万9,300ドル、IRAの平均残高は13万9,000ドルまで上昇しています。
日本も20年かけて、その背中を追いかけています。年金貯蓄制度の特徴として、現役世代の利用者が拡大しているあいだは、資産規模は大きくふくらみ続けます。米国の両制度が20年目から40年目にかけて大きく成長したように、わが国の確定拠出年金制度も、成長を続けていくことになるでしょう。
企業型DCもiDeCoも一体となって加入者2,000万人を目指す
「次の20年」を見据えて、日本の確定拠出年金制度が目指すべき道は、まずは利用者層の拡大でしょう。
1,000万人というのはあくまで通過点であって、まだまだ拡大をしていかなければならない制度です。今のiDeCoは年50万人のペースで利用者数が拡大していますが、企業型DCを含めて、年80万人くらいの規模拡大をこれからも維持していきたいところです。
これが10年続けば、800万人の利用者増を10年で獲得することになり、「加入者2,000万人」が見えてきます。つみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の口座開設状況や国民の老後資産形成への関心の高まりを見る限り、これは決して不可能ではないと思います。
iDeCoについては65歳までの利用を拡大する法改正、企業型DCについては70歳まで加入可能とする法改正(ただし会社が高齢期も加入させる制度改正が必要)が、それぞれ準備されています。
また、iDeCoについては企業型DCとの同時加入についての規制緩和(企業側の制度改正がなくても加入できる)も実施されることから、利用者数増に期待が集まります。
もちろん、すでに加入可能な立場であっても未加入のままでいる人は多く、こうした人たちへの加入促進策も求められるところです。
ただし、制度スタートから20年を迎え、加入者の減少も始まります。今まで積み立ててきた人たちが、60歳以降になって受け取りを選択する時期に来ているからです。
加入者の増減それぞれの要素が生じる中、40年を迎える確定拠出年金は、2,000万人を超えて、成長を続けるステージに立っているでしょうか。
全体としては悪くないポートフォリオも、個人としては二極化
運用についてはどうでしょうか。この20年間については「10%の進化」があったとみています。
制度がスタートして10年、確定拠出年金の投資割合は「元本確保型商品6割:投資信託4割」と説明されてきました。制度の導入形式や導入タイミングなどに影響されるものの、全体としての流れは「投資4割」だったわけです。
近年の統計データなどを見ると「元本確保型商品5割:投資信託5割」になっており、最新の市場動向を勘案すると、「投資5割超え」となっていることが予想されています。
全体としては悪くないポートフォリオです。リスク資産の運用成績が年利4~5%であったとすれば、全体として年利2.5%くらいになり、多くの企業が設定している想定利回り(2.0ないし2.5%のことが多いという)をクリアしています。投資比率がもっと高い個人はこれをはるかに上回る運用成績を確保していることでしょう。
一方で、「安全資産100%」の個人をどう動かすかは次の20年の難問です。米国では行動ファイナンスの研究成果を受けて、401(k)プランを「加入半強制、運用半強制(変更は可能)」という制度とし、結果として国民の資産形成を強く後押しする仕組みになっています。
日本では運用未指図である人について、バランス型ファンドなどを自動的に購入させる指定運用方法(デフォルト商品)の試みなどが始まっていますが、まだ部分的な試みにとどまっています(それでもiDeCoや企業型DCで投資理解が浅い場合にも、投資信託活用の背中を押す取り組みが行われたことは評価できます)。
投資信託の、商品としての投資条件はおおむね良好です。長期的な視点で考えたとき、リスク資産の運用の力を借りることの意義を認め、どう背中を押していくかが問われていく「次の20年」となりそうです。
成人してなおまだまだ変化し続ける確定拠出年金
確定拠出年金制度は20年を迎えてまだ制度の改革を試み続けています。
これまでも、拠出限度額の引き上げやマッチング拠出の導入などを改正で行ってきました。iDeCoの加入要件緩和のように大きな手応えのある改革もありました。
前述のとおり、来年度以降も「企業型DC加入者のiDeCo加入」が無条件で解禁となりますし、「企業年金全体として限度額を考える仕組みの導入(確定給付企業年金が薄い場合、DCの限度額がアップする)」などの改革も用意されています。
これからもおそらく、拠出限度額の引き上げや特別法人税の廃止などの改革がトライされていくことになるはずです。20年後の確定拠出年金は、きっと今の確定拠出年金よりも魅力的な制度に進化していくことでしょう。
20周年といってもまだまだ、成人になったばかり、社会に羽ばたき、世の中のために本当に役立つ制度になっていくのは、これからです。
iDeCoや企業型DCを活用し、ぜひあなたの老後の豊かさを実現する力にしてほしいと思います。
≫DC(確定拠出年金)20年史(その1)を読む
≫DC(確定拠出年金)20年史(その2)を読む
≫DC(確定拠出年金)20年史(その3)を読む
≫DC(確定拠出年金)20年史(その4)を読む
(山崎 俊輔)
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