株投資の勘違い!配当金目的で重要なのは「配当利回り」ではない?
トウシル / 2021年11月4日 6時0分
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株投資の勘違い!配当金目的で重要なのは「配当利回り」ではない?
配当金目的で銘柄選びをする際に重要なのは「配当利回り」ではない!
前回のコラム「配当利回りで投資判断、本当にいいの?失敗しない高配当株の選び方」で、配当金目的で銘柄選びをする際、単純に配当利回りが高いか低いかでの判断は、リスクが高いことをご説明しました。
配当利回りが高いからというだけの理由で、特に深く考えずに株を買ってしまうと、将来的に配当金が減額されて、「配当金ももらえない、株価も大きく下がってしまう」というダブルパンチに見舞われるリスクがあるのです。
配当金目的で銘柄を選ぶときは、配当利回りを参考にしないことはありませんが、実は配当利回りと共に、必ず見ておくべき重要な投資指標があるのです。それが「配当性向」です。
「配当性向」とは何か?
配当性向は、利益のうちどのくらいの割合を配当金に回しているかを表したもので、下記の式で計算されます。
配当性向=1株当たり配当金÷1株当たり当期純利益
例えば、1株当たり当期純利益が100円の場合、1株当たり配当金を60円出しているなら、配当性向は60円÷100円=60%となります。
通常、配当金は会社が当期に得ることのできた利益(=当期純利益)の範囲内で、株主への配当金を支払います。
この配当性向から分かることの一つに「無理をして配当を行っていないか」があります。配当性向が高ければ高いほど、当期純利益のうちの多くを、配当金に回していることになり、無理な配当をしている可能性があります。
ここで、「当期純利益の大部分を配当金に回している、株主に多額の利益還元をするいい会社なのではないか?」と考える方がいらっしゃるかもしれません。
確かに株主に多額の還元をしてくれること自体はいいことなのですが、要はそれを「無理して行っていないかどうか」がポイントなのです。
健全な配当と無理をした配当の違い
もし、1株当たり当期純利益が100円で配当金が30円だとすると、配当性向は30%です。
30%=30円÷100円
仮に、この会社の翌年の当期純利益が半分の50円になったとして、配当金を30円に据え置いても、当期純利益の範囲内で収まります。
60%=30円÷50円
では、1株当たり当期純利益100円で、配当金も100円という会社はどうでしょう。配当性向は100%です。これは、稼いだ利益の全てを配当金に回していることになります。
仮に、この会社が来期以降、利益を減らして1株当たり当期純利益が50円になったらどうでしょうか。もし今までと同様、100円の配当金を出すと、配当性向は200%となります。
配当性向が100%を超えるということは、当期純利益を超えた金額を配当に回している状況を意味しています。これは会社からお金が流出している状況であり、配当政策としてはかなり不健全な状態です。
1~2年くらいなら、今までに上げた利益の蓄積から、当期の利益を超える配当金を出すことも可能でしょう。しかし、いつまでもそんなことができるわけではありません。
となれば、今期の1株当たり当期純利益100円、配当金100円だったのが、来期の1株当たり当期純利益が50円に半減となれば、配当金も50円以下になるケースが多いはずです。
つまり、配当性向が高いと、将来利益が減少したときに配当金を減らされるリスクが他の銘柄に比べて高くなるのです。
高配当利回り銘柄の多くは配当性向も高い
高配当利回り銘柄にはある特徴があります。それは「配当性向が高い」ということです。
配当利回りが高いからお得に見えたとしても、それは配当性向が高いため、将来、配当金が減らされるリスクも高いことを、織り込んだ株価になっている可能性が十分考えられます。
以前、ある銘柄のIPO(株式新規公開)時に、「配当利回りがとても高いんですよ」と証券会社からセールスを受けました。
確かに業績もそれなりに安定していて、配当利回りも高ければ、日々の株価の変動を追いかけるのを嫌い、高い配当金をもらえる株をじっくり持ち続けたいという投資家には、悪くはありません。
ところが、筆者がその勧誘された銘柄の配当性向を確認すると、100%に近い数値となっていたのです。
前回のコラムでもお伝えしたように、配当利回りが高い銘柄が配当金を減らされると、配当金そのものが少なくなるだけでなく、株価も大きく下がってしまう可能性が高まります。
したがって、配当性向が高い銘柄は、配当金が将来減らされるリスクが高いため、配当利回りが高くても安心できない、と考えた方が無難です。
業績連動型の配当性向とする方針の会社も注意
多くの会社は、いつもほぼ同じ金額の配当金を出したり、業績が伸びたら配当金を増やしたりという、アバウトな方針だったりしますが、中には、配当性向を「◯%」とあらかじめ決めている会社もあります。いわゆる業績連動型の配当性向とする方針の会社です。
例えば、日本郵船(9101)は、配当性向25%を目安にすると、決算短信に明記しています。
実は、この業績連動型の配当性向としている会社も、毎年の当期純利益の水準により、配当金が大きく上下にぶれる可能性があるので、注意が必要です。
特に、毎年のように業績が激しく変動する景気敏感株(化学、鉄鋼、海運など)はその傾向がさらに高くなります。
景気敏感株であれば、利益が翌年には5倍になったり、逆に5分の1になったりすることも珍しくありません。時には大赤字となる年さえあります。
極端な話をすれば、今期絶好調で過去最高益、配当利回りも10%近くに達している会社が、翌期は一転して大赤字で配当金ゼロ、ということもあり得るのです。
このように、配当性向の水準をあらかじめ定めている会社は、たとえ配当性向が低くても、利益が半減したら配当金も半減することになります。配当性向が低いから減配リスクが低いということにはならないため、十分注意してください。
個人的には、上記のように配当性向を会社側があらかじめ決めているケースを除き、配当性向が50%以下なら合格、できれば30%以下のものを見つけることが、将来の減配リスクを抑えるためには効果的だと思っています。
≫関連記事:配当利回りで投資判断、本当にいいの?失敗しない高配当株の選び方
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(足立 武志)
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