失敗する投資家が頼る「成功談」。あなたは大丈夫?
トウシル / 2021年11月18日 6時0分
失敗する投資家が頼る「成功談」。あなたは大丈夫?
自立していない個人投資家と話していて感じること
個人投資家には、「自立している人」と「自立していない人」がいます。
自立している人とは、何に投資するか、どれだけ投資するか、いつ買うか、いつ売るかなど、投資に必要なアクションにつき、全て自分自身で判断、決断し、行動することができる人です。
一方、自立していない人は、これらの判断、行動を自分ですることができないため、他の人の意見やアドバイスを鵜呑(うの)みにしてしまいがちです。
筆者は数多くの個人投資家とお話しする機会がありますが、その際感じるのは「自立していない個人投資家が語る成功例」に対する不安です。このような考え方を持っていると、いずれは大きな失敗をしてしまう恐れが大きいからです。
そこで今回のコラムでは、筆者が自立していない個人投資家と話していてよく出てくる「安易な成功談」と、それに対して、なぜ筆者が不安に感じるかをお伝えしていきます。
安易な成功談1:ずっと株価が上がっているから今から買っても大丈夫
最近は個人投資家の方も新聞、雑誌だけでなくネットなどで、投資に関するさまざまな情報を取るようになっています。
するとよく出てくるのが例えば「S&P500に連動するETF(上場投資信託)を10年前に買って保有を続けていたら5倍になった」というような成功談です。
この成功談を聞いて実際にS&P500のチャートを見ると、確かに10年以上価格が上昇し続けていて、さらに今後も上昇しそうに思えてしまいます。
このような状況で、「S&P500に連動するETFを買おうと思っています。ずっと株価が上がっているから今後も上がるだろうと思いますし」とお話しされる方が結構多いです。
でも、確かにここまで大きく上昇してきたのは事実ですが、長期間にわたり上昇が続いていますので、いつ天井をつけてもおかしくないといえます。
また、中身を見ると500社のうち、巨大IT企業のGAFA(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)など一握りの企業の大きな上昇で成し得たものです。それらの株価が今後、天井をつけて大きく下落する可能性もあります。
ですから今の時点で買うこと自体は間違ってはいないと思いますが、もし株価が下がって下降トレンドになったら速やかに売却するべきだと思います。そうしないと株価が天井を付けた後、大きく下落して損失が膨らんでしまう可能性があるからです。
「今まで上がっているからこれからも大丈夫」という保証はどこにもありませんので、無意識のうちに楽観的になっている個人投資家が多いことは気がかりです。
安易な成功談2:Aさんが勧めてくれた株が5倍になったんです!
これもよく聞く話で、「証券会社の担当者が勧めてくれた株が大きく上昇した」とか「友人に教えてもらった株が5倍になった」というものです。
ここで怖いのは、「Aさんが以前勧めてくれた株が大きく上昇した。だから今回勧めてくれた株も大きく上昇するはずだ!」と無意識のうちに思ってしまうこと。もしマーケット環境が悪化し、株価下落が続くようになれば、いくらオススメ銘柄だとしても株価は大きく値下がりしてしまう可能性が大きいのです。
安易な成功談3:3年で100万円の資産を1億円にした投資法があるらしい
自立していない個人投資家は「短期間に」「大きな利益を得られる」という話に弱いものです。例えば「3年で100万円を1億円にした投資法・今だけ無料公開!」という、あおるような言葉を見ると、「そんな素晴らしい話が世の中にはあるのか」と喜んで飛びついてしまうケースも少なくありません。
短期間で資産を何十倍、何百倍にした投資法は、作り話であることも多いのですが、中には本当に3年で100万円を1億円にしたような強者もいます。
では、自立していない個人投資家が、短期間で資産を大きく増やした投資法をまねしたら、うまくいくのでしょうか。残念ながら、そうならない可能性が高いのです。
短期間で資産を大きく増やすためにはマーケット環境が良好である必要があります。そんな中で、例えば信用取引を使ってレバレッジを高め、かつ株価の変動が激しい小型成長株に投資することで、短期間で株価が何倍にも上昇し、高いパフォーマンスの実現が可能となります。
ところが、レバレッジをかけた無謀な勝負に出るとマーケット環境が良好なときは大きな利益を得られる半面、悪いときは逆に大きな損失を被ってしまいます。
でも、自立していない個人投資家は「短期間で資産爆増!」というプラス面だけを切り取って評価してしまいがちなのです。
完全に抜け落ちている視点
上記の3つの話、実は全てに共通する点があります。それは「株価が天井をつけて、大きく下げてしまうような下げ相場になった時にどう対処するか」の視点が完全に抜け落ちているということです。
株価が上昇トレンドを維持しているような、マーケット環境が良好な間は、上の3つの成功例のようなことは実際に起こり得ます。
ところが、これらの成功例には、株価が天井をつけて大きく下落したらどうなるか、という点は一切触れられていません。
これらの成功例を信じて投資した後、株価が下落した場合、致命傷につながるほどの大きな損失を被ってしまう可能性もあると、筆者は感じています。
うまくいった話というのは、「たまたま上げ相場だったから」だけなのかもしれません。まねするならば、株価が下がったときのルールもしっかりと決めておき、確実に実行する必要があります。そうすれば、逆に株価が大きく下がる局面になったとしても小さい傷で撤退することができます。
株式投資はうまくいくときばかりではありません。そうでないときにどう対処するか、事前に決めておくことがとても重要なのです。
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(足立 武志)
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