iDeCoとNISA、夫婦で4口座をもつメリット
トウシル / 2021年11月23日 6時0分
![iDeCoとNISA、夫婦で4口座をもつメリット](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushiru/toushiru_34855_0-small.jpg)
iDeCoとNISA、夫婦で4口座をもつメリット
税制優遇口座は全て活用すべき
夫婦は、同じ価値観を共有する部分と、得意不得意を補い合う部分とがあって、人生のパートナーとなります。
例えば、好きな映画やアーティスト、基本的な政治観などは認め合っていたほうが仲良しは続くことでしょう。一方で、お金の管理や家事分担(料理や掃除の担当)などはお互いの得意分野に委ねたほうがうまくいきます。
なかでもお金の問題は、しばしば完全な役割分担になりやすいテーマです。どちらかが堅実だったり小まめに管理できるタイプで、どちらかは消費意欲が旺盛だったりすると自然と役割が固定化します。
例えば、家計の管理や住宅ローンの検討、契約担当、投資の実行などは夫婦のどちらかが熱心で、一方のパートナーはむしろ無関心だったりします。
それはそれで夫婦のバランスが取れている、ともいえます(夫婦とも浪費癖があったら大変です)。しかし、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)やNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)については、そうはいかないところがあります。iDeCoもNISAも、それぞれ一人一口座、原則として自分の名義でしか開設できないからです。
4口座開設の資産形成効果をシミュレーション
iDeCoで月2.3万円(企業年金のない会社員のケース)、つみたてNISAで月3.3万円(年40万円の1/12として)を満額積み立てたとします。
35~65歳までの30年積み立てた場合、1年当たりの入金額は年67.4万円、30年の元本累計は約2,020万円です(iDeCoは月171円を控除)。年3.0%の運用益を非課税で獲得したとすると、最終受取額は約3,273万円になる計算です(筆者試算)。
複利効果はかなり効きますね。
※iDeCoは2022年5月から原則65歳になるまで加入できるようになる。つみたてNISAは恒久化されたと仮定
これでも十分な資産形成といえますが、これを夫婦二人で同時にダブル口座開設できれば単純に2倍計算で約6,546万円になります。老後は盤石となるでしょう。
この試算ではダブル口座開設のメリットが低いように感じますが、40歳あるいは45歳など、積み立てスタートが遅くなった夫婦ほど、ダブルiDeCo、ダブルつみたてNISAの計4口座を作りたいものです。
たとえば、20年の期間であれば1人分のダブル口座では約1,844万円のところを、夫婦ダブルの4口座で約3,688万円まで積み上げられることになります(筆者試算)。
課題はパートナーの理解と同意。効果的な説得方法は?
夫婦それぞれがiDeCoとつみたてNISAで積み立て投資を行うことが資産形成上、有効なのは間違いありません。「お金のことは私の担当」といっても、パートナーが勝手に代理で口座開設することは好ましくありません。本人が自分名義の口座を開設し、引き落としの指定をする必要があります。 金額的にもそれなりの積み立てですから、知らずに引き落とされる範囲を超えます。月5.6万円も自分の口座から勝手に引き落とされて平気な人はそうそうありません。
また、iDeCoは中途解約の制限がありますし、どちらも投資のリスクを取るわけですから、本人に無断で行うこともまたお勧めできません。
となると、パートナーの理解や同意が必要になります。しかし、「制度のメリット」や「投資の重要性」だけを訴えることはあまりいい方法ではありません。
なぜなら、あなたのパートナーが投資についてうたぐり深い、もしくはそもそも資産管理について関心が薄い可能性があるからです。
そんなときは、次の3つのステップで順を追って説明していくといいでしょう。そう、「税制優遇」はむしろ優先順位が後なのです。
1:資産形成の必要性(マネープランよりも将来の豊かさや楽しさのビジョンを示すこと)
2:積立枠を確保する具体的方法(ボーナスも活用しつつ、節約の具体的計画など)
3:それぞれの口座を選択する意義(税制優遇が「お得」であること)
長期の資
産形成は「未来を二人でつくる」ビジョンの共有
お金の問題でパートナーを説得することは、単なる税制優遇の理解にとどまりません。むしろ長期的な資産形成のビジョンを共有するほうが重要です。
ですから、「いくら貯まる」というテーマより、むしろ「それで何ができるか」のほうに説明の重点を置くといいでしょう。
例えば、家を買うときのお金の問題を考えてみます。「いくら返済するか」という議論はもちろんですが「この広さの家がこのロケーションで手に入り、そこで新生活が送れる」というビジョンが明確であり、ポジティブな夢であるからこそ、大きな借金であっても意見はまとまりやすいわけです。
そこを「住宅ローン減税が終了するかもしれないから」という理由を前面に押し出してローン設定を決断しようとすれば、パートナーも「焦らないほうがいいのでは?」と躊躇(ちゅうちょ)するでしょう。iDeCoやNISAの理解を得るのも同じです。
「よく分からないと思うけど、とにかく口座を作るからここにはんこ押して」という方法は使わず、老後の夢を少し語ることをお勧めします。
iDeCoやNISAで長期資産形成をするのは、多くの場合は老後のためを考えてのことでしょうから、引退後を見据えて「住む場所などの生活スタイル」「趣味や娯楽などチャレンジしてみたい夢」を語り合ってみましょう。
「老後に2,000万円」問題の話をしてもいいですが、誤解に基づく説明ではなく「老後を豊かにする財産は自分たちでつくる」ことを理解してもらいましょう。ふたりが手にする退職金に加え、それ以上の厚みを確保することが楽しいセカンドライフに必要だということです。
「100歳人生時代」というようなキーワードもいいですが、こちらも「長生きするからたくさん備える必要がある」と切り出すと、長生きをマイナスで考える発想法に陥りがちなので話の持ち出し方は注意が必要です。
いずれにせよ、ダブルiDeCo、ダブルNISAを夫婦で考えることは資産形成の強力なエンジンになる一方、なんとなくでは済ませられないことです。
ぜひ、未来の夢やビジョンを話し合ってみてください。きっと苦労するだけの価値はあるはずです。
(山崎 俊輔)
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