二重に課税された分は取り戻せるの?:知っておきたい!米国株の税金(その3)
トウシル / 2022年1月14日 6時0分
二重に課税された分は取り戻せるの?:知っておきたい!米国株の税金(その3)
米国でかかる税金はどうなっているの?
明けましておめでとうございます。本年も個人投資家の皆さまに役立つ税金の知識・情報の提供に努めてまいりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
前回、前々回と米国株の税金についてお話ししてきましたが、今回は主に「米国でかかる税金」と「配当金の課税方法」について取りあげていきます。
■参考記事
>>米国株と日本株で損益通算できるの?:知っておきたい!米国株の税金(その1)
>>為替変動で出た利益や損失、どうなるの?:知っておきたい!米国株の税金(その2)
米国株の譲渡益(売却益)や配当金にかかる日本国内の税金は、日本株と同様の扱いです。譲渡益であれば20.315%が課税されますし、配当金も20.315%が源泉徴収され、その後確定申告をするかどうかを選択することができます。
次に、米国でかかる税金については、譲渡益と配当金とで異なります。
譲渡益については米国の税金はかかりません。日本国内での20.315%の課税だけです。他方、配当金については米国でも課税がされます。これに絡んで、配当金の税金は少しややこしくなっています。
なお、譲渡益は為替差損益を含めて計算することになっています。計算方法については前回のコラムをご覧ください。
米国株の配当金の課税方法は?
米国株の配当金は、まず米国にて配当金の10%の税率で源泉徴収により課税されます。そして残りの90%部分に対して、日本国内で20.315%の税率により課税されます。したがって、手元に届く金額は配当金のおよそ71.7%となります。
取引報告書にて、日本円ベースの配当金や税額が書かれていますので、それを参照いただければ為替レートについては特段気にする必要はありません。
例えば配当金100ドル、為替レート115円のケースで考えてみます。
配当金を円換算すると、100×115=11,500円です。まず米国にて10%が源泉徴収されるので、1,150円が差し引かれて10,350円が残ります。
この10,350円に対して日本国内で20.315%の税率で源泉徴収されますから、さらに2,102円が差し引かれて8,248円が手元に残ることになります。
そして配当金を確定申告するかどうか、確定申告をする場合は総合課税にするのか、申告分離課税にするのかを、それぞれのパターンごとにシミュレーションして、最も有利な方法を選択するのは日本株の配当金の場合と同じです。
所得が少なく確定申告をして還付が受けられるのであれば総合課税で確定申告する、前年から繰り越した売却損と配当金を損益通算して税金の還付を受けるのであれば申告分離課税で確定申告する、というようにです。
米国と日本での「二重課税」を調整する方法
このように、配当金に対しては米国と日本のそれぞれで課税がされることになります。これを「二重課税」と呼びます。
しかし、1つの所得について複数の国で課税するのは好ましくないとされています。そのため、この二重課税の状態を解消する方法として、「外国税額控除」という仕組みが設けられています。
外国税額控除とは、外国にて課税されている所得につき、所定の書類を添付して確定申告することによって、日本での所得税額から、外国で課税されている税額を差し引いてもらえるというものです。
配当金についていえば、すでに源泉徴収されているわけですから確定申告をしない、という選択ももちろん可能です。
ただ、確定申告をしないと、外国税額控除を受けることができないため、米国と日本との二重課税は解消されないままになってしまいます。
もちろん、外国税額控除を受けるために確定申告をする労力に比べて、軽減できる外国税額が極めて小さい、などという場合にはあえて外国税額控除は受けない、という考え方もありだと思います。
(参考)
外国税額控除について(国税庁)
外国税額控除に関する明細書
総合課税と申告分離課税のどちらを選択するか?
外国税額控除の適用を受けることによって、米国内で源泉徴収された税金をどれくらい取り戻すことができるかどうかは、個々人それぞれの他の所得の状況などにより異なります。
そのため、全額を取り戻すことができるケースもありますし、一部しか取り戻せないケースもあります(一部しか取り戻せない場合は、残額を翌年以降3年間繰り越して翌年以降に控除することができます)。
また、配当金について外国税額控除の適用を受ける場合、配当金につき総合課税で申告するか、申告分離課税で申告するかについても、ご自身にとって有利になる方法を選択することが求められます。
他の所得が少ないなどの理由により、配当金を総合課税にした場合の税率が20%を下回るのであれば、総合課税にした方が一般的には有利です。逆に、他の所得が多く、配当金を総合課税にした場合の税率が20%を超えるような方は、総合課税ではなく申告分離課税にした方が有利といえます。
また、株式の譲渡損と配当金を損益通算したいのであれば申告分離課税を選択する必要があります。
いずれにせよ、米国株の配当金につき確定申告をしないと、米国内で源泉徴収された税額につき外国税額控除の適用を受けて取り戻すことができず、二重課税の状態のままになってしまう点は押さえておいてください。
なお、日本株の配当金を含め、確定申告をするとした配当金については、総合課税・申告分離課税のいずれか一方に統一させる必要がありますので、その点も注意してください。
証券税制はただでさえ複雑なうえ、米国株となると為替や外国税額控除の取り扱いも絡むため、かなり難解になります。
本コラムでの記載内容はあくまで一般的なケースを想定しておりますので、これとは異なる結果になる可能性もあります。最終的なご判断は税理士、税務署などに相談の上、ご自身で行うようにしてください。
■(リンク)知っておきたい!米国株の税金
>>米国株と日本株で損益通算できるの?:知っておきたい!米国株の税金(その1)
>>為替変動で出た利益や損失、どうなるの?:知っておきたい!米国株の税金(その2)
(足立 武志)
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