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3期目突入か?習近平が懸念する中国の2022年8大リスク

トウシル / 2022年1月13日 6時0分

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3期目突入か?習近平が懸念する中国の2022年8大リスク

 先週、年明け一本目として、日本人投資家が注目すべき中国8大イベントを解説しました。今回は、その続編として、今秋に開催予定の第20回共産党大会を経て政権3期目突入をもくろむ習近平(シー・ジンピン)総書記が懸念する八つのリスクを、権力基盤の安定と続投に向けた政権運営という観点から考えてみたいと思います。

習近平が懸念する八つのリスク

リスク1:新型コロナウイルス

 新型コロナウイルスの感染状況は今年も世界経済や各国の政権運営を翻弄(ほんろう)していく不確定要素の一つであり続けるでしょう。私自身、年明け以降、日本の経済学者や投資の専門家と議論させていただく過程では、「第6波」の象徴ともいえる変異株オミクロン型は、感染力は強いものの重症化リスクは低い、故に、昨今の感染拡大はある意味「終わりの始まり」だという声が聞こえてきます。

 一方で、オミクロン感染を警戒し、会食が延期になったり、面談がオンラインになったりという状況も出てきていて、予断を許さない状況が続くと実感しています。

 北京冬季五輪まで1カ月を切っている現状、年末年始、陝西省西安市で、ロックダウン(都市封鎖)を強行するほどに集中的に広がった感染拡大を機に、中国各地は、断続的に感染拡大のリスクに見舞われているように見受けられます。

 直近の感染状況を見てみると、1月10日、全国で新たに感染した人数は192人。うち渡航歴があるなど感染経路が海外とみられる事例が82人、国内市中感染が110人(死者はゼロ)。前者では、上海市27人、広東省18人、福建省10人、天津市8人、浙江省7人と沿岸部での感染が目立ちます。

 逆に後者では、河南省87人、陝西省西安市13人と内陸部が目立ちます。特徴としては、全国的に均一に拡大するのではなく、一部地域でクラスターが発生しているというものです。

 中国では、「ウィズコロナ」ではなく、「ゼロコロナ」政策が断固としてとられており、地方の首長はとにかくこの政治的に正しい「感染者ゼロ」を実現すべく、ロックダウンなど極端な政策を実施する傾向にあります。

 ただし、上記のように、オミクロン型は感染力が強いものの重症化リスクは低いとみられています。それでもゼロコロナを実現すべく、サプライチェーン(供給網)や市民の消費活動を含め、経済成長に直結する要素を犠牲にしてまで、「感染者ゼロ」を政治的に目指すのか。オミクロン型が主流になりつつある現状下で、経済成長との有機的両立という観点から、一定のウィズコロナも容認すべきという見方が当然でてくるでしょう。

 ここまでみてきて、私が考えるリスクは、中国当局として、最新の状況に適応してコロナ抑制と経済成長を両立できるかどうか、適切な平衡を保つための政策を打てるかどうかというものです。

リスク2:経済情勢

 2021年の中国経済を振り返ると、中国独自の強権的な政策スタイルで「ゼロコロナ」を実現しつつ、水際措置は断固厳しいものにすることで、V字回復を狙ってきたと言えます。ただ、上記のように、コロナ抑制と経済成長はどっちを取るかというトレードオフの関係ではなく、いかに両立させるかという段階に移行しているように思います。

 2022年の経済政策として、習氏は安定最優先、成長重視という明確な方針を打ち出しています。財政出動や金融緩和を通じて景気を支えていく、特に、それらのマクロ政策が実体経済の活性化、企業収益の拡大に直接つながるように「実質有効性」を高めていくとしています。中国当局は、政策のアクセルとブレーキを臨機応変にだしてきますから、政策で景気をどう支えるか、という点についてはある程度の自信をもっているでしょう。

 そう考えると、最大のリスクの一つはコロナ抑制との有機的両立でしょう。私が見る限り、中国国民は基本的に当局のコロナ政策を支持していますが、ロックダウン策の度が過ぎたり、それによって国民経済に悪影響が出てくるようになれば、習氏の政権基盤にヒビが入らないとも限りません。「第二の武漢」が出てきても何ら不思議ではないということです。

リスク3:自然災害

 マクロ政策の実施にある程度の自信をのぞかせているとはいえ、さすがの習氏にも自然災害を止めることはできません。昨年夏、河南省で発生した大規模な洪水では300人以上の死者を出しました。同省だけで被災者は約1,400万人に達し、被害額は約2兆円に上ったとされています。

 地震、洪水を含め、不測の災害リスクにどう対応するかは、強権的に政策を動かし、中央と地方の統率を取りやすい中国共産党にとって「得意分野」の一つとは認識していますが、それでも、北京冬季五輪、党大会など世紀の政治イベントを控え、安定的な経済成長が求められるなか、一つのリスク要因と考えるべきでしょう。

リスク4:北京冬季五輪

 開幕式まで残り1カ月を切った北京冬季五輪。年明けの1月4日、五輪の会場や選手村を視察した習氏は「中国の準備は整った」と高らかに宣言しました。大会に向けて念入りな準備を進め、開催期間中も総力を挙げて運営していくでしょうから、各競技の運営自体はある程度円満に進むと予測しています。

 問題は、五輪開催期間、あるいはその前後に、新型コロナウイルスの感染が拡大するかどうか、各国、特に西側選手と中国当局の間で人権問題などを巡って何らかの摩擦が起きるか、「五輪と人権」をテーマに、中国と西側の間で対立や不信が激化するか、といったところでしょう。

 北京冬季五輪の開催そのものが、中国と西側諸国の関係悪化の引き金となるのであれば、特に、中国を製造や販売の拠点とする、日本を含めた西側の企業は間に挟まれて、供給網の再構築や経営再編といった課題に対応せざるを得なくなる可能性が高まるでしょう。

リスク5:バイデン米政権の対中政策

 2022年、米国との関係は引き続き習氏にとって最大の外的不安要素であり続けるでしょう。中国共産党指導部はもはや米国を信用していません。新疆(しんきょう)ウイグル自治区や香港における人権問題での批判や制裁、台湾の国際的行動への支援や軍事協力、言論の自由や市民社会への抑圧的政策、北京冬季五輪への「外交的ボイコット」、中国企業への制裁措置などあらゆる分野における米国の対中政策は、中国の発展を封じ込めること、場合によっては、中国共産党に対して政権転覆を狙っていること、を目的としているというのが党指導部における普遍的な認識です。

 実際に、米国は、中国の政治体制、発展モデル、産業政策、外交政策、国内の人権政策などを包括的に問題視し、それらが変わらなければ米中関係は安定も繁栄もしないという姿勢をあらわにしています。一方の中国は、それらは内政干渉、主権侵害だとして断固として譲りません。両者の言い分は平行線をたどるばかりで、今年を通じて予断を許さない緊張関係が続くでしょう。

 焦点となるのは、米中双方が内政に一大イベントを控えていること。共に秋の季節、中国では5年に一度の党大会が、米国では中間選挙が予定されています。互いに内政に時間や労力を割かなければならない、米中関係でもめている場合ではない、故に、両国関係は比較的静かに運行するのではないかという見方はできます。

 一方で、トランプ政権期の貿易戦争以降、新型コロナウイルスの発生源、香港、新疆ウイグルといった問題を含め、米国では対中強硬、中国では対米強硬が相当程度主流な世論になっているのもまた事実です。

 一大イベントを前に内政で権力基盤を固めたい習、バイデン両指導者が、国内での矛盾を相手国に転嫁すべく、反米や反中を利用しないとも限りません。そうなれば、米中関係はより一層の緊張関係と相互不信に見舞われるでしょう。

リスク6:米FRBによる利上げ

 昨年来、中国の政策関係者の間では、中国経済の安定的運営に影響する要素は、エネルギー価格の高騰、供給不足、新型コロナなどいろいろあるが、外的要因として最も警戒しているのが米国FRB(連邦準備制度理事会)による利上げ、すなわち金融の引き締めという議論がなされています。

 中国不動産大手・恒大集団の債務危機が表沙汰になってからも、海外から中国への資金流入は続きました。米FRBが利上げに踏み切れば、それらのマネーは米国に回帰する可能性が高く、資金流出に見舞われる中で、自国通貨は元安に傾くでしょう。

 そうなれば、ただでさえ石炭などの原材料不足で一定程度輸入に依存しなければならない状況下で、関連企業の収益は圧迫され、物価の上昇、その先には昨年末に一部緩和した金融政策を今度は引き締めるという可能性も否定できません。そうなれば、景気の動向は迷走するにちがいありません。

 私の理解では、これら考え得るリスクを中国の政策関係者は明確に認識し、必要な準備を整えているように見受けられますが、FRBが利上げに踏み切るとき、中国経済で何が起こるか、中国当局がどんなスタンスで対応していくかに同時に注目する必要があるでしょう。

リスク7:台湾問題

 習氏率いる共産党指導部は、引き続き台湾当局に対して、軍事的、外交的、経済的圧力をかけることで、台湾の独立志向的な動き、および米台間の軍事、国際レベルでの連携を抑止しようと動いていくことでしょう。そのたびに、台湾海峡には緊張が走るという局面が年間を通して続いていくと思います。

 例として、昨年12月、中米ニカラグアが台湾と国交を断絶、中国と国交を回復させました。これで、台湾と国交を結んでいる国は世界中で残り14となりました。中国としては、この数をゼロにすべく関連国に経済支援などをしていくでしょう。

 このような緊張状況にありながらも、私の見方では、秋に自らの続投を懸けた党大会を控える習氏としては、この年に大きな動き、例えば台湾への侵攻、周辺海域における米国との軍事衝突などは避けたいと考えているでしょう。

 仮に局面を制御できなければ、あるいは失敗すれば、言うまでもなく習氏本人の権力基盤だけでなく、共産党としての正統性にまでヒビが入る統治リスクに見舞われる可能性が高くなるということです。

 とはいうものの、仮に台湾当局が米国と連携する形で中国の「主権」を尊重しない、「一つの中国」政策を踏みにじっているという見方や印象が中国国内で広がっていけば、これまでも米国や台湾に断固とした姿勢で向き合ってきた習氏として、強硬的に出ざるを得なくなる。そうならないために、習氏はバイデン氏に対し、台湾問題で慎重に慎重を重ねるよう求めていくでしょう。

 2022年、台湾海峡を巡って、習氏は平和的管理を最も重視していくと私は見ています。

リスク8:対中包囲網

 2019年末から2020年初頭にかけて、武漢を発端に新型コロナウイルスが中国で広まり始めたころ、当局が最も懸念していた三つのリスクが(1)経済の低迷、(2)社会不安のまん延、(3)国際的孤立だったと分析しました。中国はコロナ禍において、「国内大循環」、「国内外双循環」、「共同富裕」などを掲げつつ、エネルギー、技術、食料、人材などの自給率、国産率を高めるべく政策を打ってきました。

 とはいうものの、中国経済と世界経済は密につながっている。外との連携、協力あっての中国経済という認識や主張は明確に見られる、ということから、習氏としても、中国は国際社会の中でどう生きるべきかという意識が強いと言えます。

 だからこそ、この期間、日米印豪からなる「QUAD」、米英豪からなる「AUKUS」、G7(主要7カ国)といった枠組みにおける議論や協議が、中国の海洋進出や国内外における高圧的行動に警戒心を露骨に示し、中国を名指しで批判するような局面に激しく反発すると同時に、対中包囲網が重層的に形成されることで、中国が国際的に孤立する局面を恐れているのです。

 中国としては、G7加盟国に加えて豪州やニュージーランドといったアングロサクソン系国家が同包囲網に加わるのは想定内として、そこにQUADの加盟国であるインド、ASEAN(東南アジア諸国連合)、EU(欧州連合)などの加盟国までが加わるようになれば、さすがに大きな外交圧力に見舞われるでしょう。

 そうならないように、習氏としては引き続き、経済協力などを二カ国関係で推し進め、G20を含めた多国間の枠組みに対して、中国が国際社会の平和と繁栄に貢献しているのだとアピールしていくことでしょう。

 2022年、習近平氏のリスク管理から目が離せません。

(加藤 嘉一)

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