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中国2021年GDP8.1%成長!習近平、ダボス準備会合で「経済成長に自信」

トウシル / 2022年1月20日 6時0分

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中国2021年GDP8.1%成長!習近平、ダボス準備会合で「経済成長に自信」

 2021年の中国実質GDP(国内総生産)成長率が8.1%だったという統計が、中国国家統計局から発表されました。新型コロナウイルス禍からのV字回復も作用したためこの数字自体は想定内で、肝心なのは今年どうなるかです。習近平(シー・ジンピン)国家主席率いる共産党指導部はこの数字、およびこれを受けた2022年の経済情勢をどう捉え、回していこうとしているのか。世界経済フォーラムによるオンライン形式の準備会合「ダボス・アジェンダ」で習氏が行った基調講演も参照しつつ、今回解説していきます。

2021年GDP8.1%成長が意味するもの

 中国国家統計局は17日、2021年10~12月の実質GDPが前年同期比4.0%増だったと発表しました。伸び率は7~9月の4.9%から鈍化し、結果、2021年通年の成長率は8.1%となりました。同局の寧吉喆(ニン・ジージャー)局長は同日記者会見にて、「2021年、我が国経済は持続的、安定的に回復し、経済成長と新型コロナ抑制は世界をリードしている。主要な指標は市場の期待を達成するものであった」と評価しています。

 一方で、次のようにも指摘しています。

「同時に、外部環境はより一層複雑、深刻、不確定になっている現実も見なければならない。国内経済は需要の縮小、供給の制約、見通し悪化という三重圧力に直面している」

 ポジティブ、ネガティブな側面を含め、基本的に2021年12月に開催された中央経済工作会議での審議を踏襲していると言えます。今回の統計結果を受けて、党指導部の中で経済情勢や政策への認識が変化したわけではないということです。それらは、3月に開催予定の全国人民代表大会(全人代)へと持ち越されることでしょう。

 最近の中国経済「低迷」を議論する際、その引き金として支柱産業の一つである不動産業界への規制強化、経済活動を犠牲にしてまでも感染拡大を徹底的に抑え込もうとする「ゼロコロナ」を挙げる見方はしばしばあります。私自身、それらの要素は軽視できないと考えています。

 例として、中国政府が経済成長にとって最大の原動力だと胸を張る消費動向をみてみましょう。2021年のスーパーやEC(電子商取引)などの売り上げを合計した社会消費品小売総額(小売売上高)は前年比12.5%増(2年平均3.9%増)でしたが、1~9月の前年同期比増加率16.4%増と比べると、成長は鈍化しています。

 また、雇用も社会の安定という観点から中国政府が特に重視する統計です。2021年、都市部の新規雇用数は1,269万人で、前年より7%増えましたが、1,300万人を超えていたコロナ前を下回っています。

 逆に、外需は好調でした。2021年は前年比で21.4%増(輸出21.2%増、輸入21.5%増)となっています。寧局長の紹介によると、2021年、消費、投資、輸出の成長率への寄与度はそれぞれ5.3、1.1、1.7(第四四半期は3.4、▲0.5、1.0)となり、外需の比重が高まっているのが分かります。投資の低迷が顕著に見られますが、党指導部は、2022年の経済政策として、財政出動、特にインフラ投資の強化を掲げており、その動向に注目です。

 近年の中国経済の特徴として、「国内大循環」という国家戦略にも体現されるように、内需重視が挙げられます。一方、上段の数字に見られるように、直近ではむしろ外需依存が強くなっている。「そうではないんだ」と言わんばかりに、寧局長は会見にて、2021年の小売売上高総額が前年比12.5%増の40兆元を超え、固定資産投資が同4.9%増の50兆元を超え、内需の経済成長への貢献率が前年比4.4ポイント増の79.1%となったことを強調。「経済成長はやはり内需によるものが主である」と主張しています。

 私自身は、関連産業も含めるとGDPの2~3割を占めるとされる不動産業界は、今年重視するインフラ投資や財政出動を含め、引き続き重視されるとみています。地域によって一部引き締め策も打ち出されるでしょうが、全体としては、不動産業界が経済成長に大いに寄与すべく、アクセルとブレーキを臨機応変に踏んでいくでしょう。

 問題はやはり新型コロナ対策です。感染力は強いが重症化リスクは低いとされる変異株オミクロン型が主流になろうという大勢において、経済活動を犠牲にしてでも感染拡大を完全に食い止めようとする「ゼロコロナ」が果たして功を奏するのか否か。最近、日本の機関投資家さんと議論をしていても、「中国政府はいつゼロコロナからウィズコロナに転換するのか?」という質問を頂きます。

 私の見方としては、党指導部は、コロナ抑制と経済成長はどちらかを取るというトレードオフの関係ではなく、両立させる以外に道はないという現実をよく理解しています。実際に、現地の知人らによれば、年末年始以降、陝西省西安市や河南省安陽市で実施されたロックダウンでも、当時の武漢に比べれば臨機応変で、段階的に一定の経済活動を許可する柔軟な対策になってきているようです。中国がコロナの完全抑え込みだけでなく、経済とコロナの両立でも「成功」を収められるのかどうか。動向を注視していきたいところです。

習近平はダボス準備会合で何を語ったか

 国家統計局が2021年の経済成長率を発表したのと同日、習氏が世界経済フォーラムによるオンライン形式の準備会議「ダボス・アジェンダ」で、会議初日、プログラムのトップバッターとして基調講演を行いました。

 中国という国はこのような順番や出方を極めて重視します。メンツという要素もありますが、それ以上に、世界の首脳らが集まり、世界経済や国際政治の行方に実質的な影響力を与える舞台で、中国が話題の中心にいる、世界で最も影響力のある国家である、といった印象を与える目的があります。ちなみに、各国の首脳としては、インドのモディ首相、日本の岸田文雄首相、インドネシアのウィドド大統領、オーストラリアのモリソン首相らが、習氏に続き残りの4日間で登壇することとなっています。

 習主席の講演の中で、私が着目した箇所が三つあります。発言を引用し、それぞれ分析していきます。

世界の産業チェーン、サプライチェーンは混乱し、コモディティ価格は持続的に高騰し、エネルギー供給も緊張するなどリスクが交錯している。経済回復の不確実性を強めている。世界デフレ環境には明らかな変化が生じ、複合型のインフレリスクが顕在化している。仮に主要経済国の金融政策が“アクセルを急いで踏む”、“急カーブする”とすれば、それらはマイナスの波及効果をもたらし、世界経済と金融の安定に課題を投げかけるに違いない。広範な途上国は率先してその打撃を受けることになる

 現状認識として、リスク要因を懸念している習氏の心境がみてとれます。サプライチェーン(供給網)という意味では中国のゼロコロナ策は懸念材料ですし、資源高、電力供給不足なども問題視されています。「アクセル」、「急カーブ」の部分は面白い表現ですが、特に米国の金融引き締めを懸念していることが分かります。中国として、米FRB(連邦準備制度理事会)に対し「利上げには慎重に慎重を期すように。拙速に進めれば、被害を受けるのは私たちだ」と警告しているのです。

中国経済は全体的に良好な勢いを保っている。昨年、中国GDP成長率は8%前後で、比較的高い成長と比較的低いインフレという二重の目標を達成した。国内外の経済環境変化がもたらした巨大な圧力を受けたが、中国経済は強靭(きょうじん)で、潜在力に富み、長期的に好転していくというファンダメンタルズは変わっていない。我々は中国経済成長の前途に自信を持っている

「二重の目標」というのは興味深い表現です。高めの成長率と低めのインフレ率という2点が、経済の安定に不可欠という認識を習主席がもっている現実がみてとれます。一方、上記の「三重圧力」にもみられるように、習主席がダボスの舞台で「巨大な圧力」という表現を使った事実は重いです。2022年という政治の季節、経済成長は並大抵の努力では達成されないという危機感を持っているのでしょう。

中国は統一的に開放し、秩序ある競争から成る市場体系を建設していく。全ての企業が法律の前での平等、市場の前で機会均等であることを確保する。中国はあらゆる資本が中国で合法的、ルールに則って経営し、中国の発展に前向きな役割を担うことを歓迎する。中国は引き続き高水準の対外開放を拡大していく。ルール、管理、標準などを重んじる制度型開放を徐々に開拓していく。外資系企業の国民待遇を実践していく

 2022年における一連の規制強化や、米中対立などを受けて、中国のビジネス・投資環境に懸念を強める外国企業、外国人投資家を強く意識した発言であることは明白です。中国の市場において、中国企業と外国企業が平等に扱われること、中国は引き続き外資を必要としていることを訴えています。

 また、「制度型開放」という、グローバルスタンダードでいえば当たり前のものを「徐々に開拓」と表現しているのは特筆に値します。習氏として、現状は「制度的開放」から程遠いと認識していることの裏返し、言い換えれば、今後より外国企業に受け入れられるような制度的環境を整備していく用意があると宣言しているということです。

 正直、私は安心しました。常に自信満々に言動を取っているように見える習氏が、中国市場をめぐる制度的環境はまだまだ未熟であり、そこに外国企業、外国人投資家がさまざまな不満や懸念を抱いてきた経緯を軽視していない、という内情を理解できたからです。

物議醸す「共同富裕」を弁明

 私からみて印象深かったのが、習氏がダボスという場を使って、中国経済と企業の成長という観点から物議を醸してきた「共同富裕」について“さりげなく”弁明をしていた光景です。

 習氏はまず次のように背景を説明します。

中国経済が長期的に十分な成長を遂げ、国民の生活水準は大幅に向上した。しかし、私たちは深く知っている。国民の豊かな生活への追求を満足させるためには長い、厳しい努力が必要なのだと。中国は人間の全面的発展を推進する、国民全体の共同富裕を実質的に進展させるという明確な目標を提起してきた

 その上で、次のように主張します。

中国が共同富裕を実現しなければならないが、それは平均主義をやるということではない。まずはパイを大きくして、その後合理的な制度設計でパイを分配することを意味する。水位が上がり、船の位置が高くなれば、各自しかるべき場所にたどり着くであろう。発展の成果をより多く、より公平な形で国民全体に享受してもらうことが目的なのだ

 水と船を使った比喩は目新しいと感じましたが、そのほかの文言は、表現は異なれ、党指導部が従来から主張している内容と何ら変わりはありません。日本においても、岸田政権の下、新しい資本主義という文脈の中で成長と分配をめぐるけんけんがくがくとした議論が行われていますが、習政権がここにきてより大々的に展開する共同富裕をめぐる議論も、結局は成長と分配の物語に帰結するのだと私は理解しています。

 具体的な方法、順序、調整などには差異があるのでしょうが、まずは経済全体を成長させて、その上で政府、市場、社会の作用を通じて分配、再分配していく、とりわけ中国においては、その過程で党・政府が指導的な役割を担っていくということです。

 共同富裕の核心は「経済の底上げ」であり、いまだ約13億人いる低所得者層、中間層の所得や生活水準を引き上げないことには、中国経済という巨大な船は持続的、長期的に前進していかない、どこかで沈んでしまうかもしれない。だからこそ、一部の人間・地域を率先して豊かにさせる鄧小平(ダン・シャオピン)時代の「先富論」ではなく、国民全体を豊かにするための「共同富裕」に大転換した。2021年という共産党結党百周年に当たる節目の年が、「共同富裕元年」にふさわしかったという政治的説明だと言えます。

 一方で、習氏は、共同富裕の実践と実現は、長く、厳しいプロセスを経るものと認めており、決して自信満々でいるわけではありません。今後の動向を注視してまいりましょう。

(加藤 嘉一)

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