2022年春、大きく変わるiDeCo 活用ポイントを解説
トウシル / 2022年1月25日 6時0分
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2022年春、大きく変わるiDeCo 活用ポイントを解説
iDeCoが大きく変わる2022年
楽天証券に口座をもつ皆さんの多くは、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)を利用していると思います。掛金の全額が所得控除の対象となり、所得税や住民税の軽減に資する制度はなかなかありません。これをフル活用することは、資産形成における合理的な判断です。
このiDeCo、2022年はいくつかの法律改正により内容が変わります。すでに2020年5月に成立済みの法律が、順次施行されているものです。2022年はiDeCoの利用範囲を大きく拡大する規制緩和が4月、5月、10月と連続して実行されます。
今回はそのポイントを「誰に活用のメリットがあるか」という視点から解説してみたいと思います。
2022年4月 受取開始時期を75歳まで遅らせることが可能に
現行では、確定拠出年金の受取開始時期を「60歳から70歳まで」の間で自由に決定できます。一人一人のライフプランに応じた選択ができるというのは画期的なことです。一方で、2001年に成立した法律が人生100年時代の社会を想定しきれていなかったという問題もありました。
法律を作った当時は、70歳まで受け取らないということは、自分の年金としての受け取りを考えていない、つまり、実質的には相続財産になるものを非課税投資することになる、という考えがあったようです。そのため、「70歳まで」に受け取るよう求めていたのです。
今回の法改正では、人生100年時代の到来を見据えて、75歳まで受取開始の時期を遅らせることができるようになります。これは、公的年金の繰り下げ受給が75歳まで引き上げられることともバランスがとれています。
75歳から20年間有期年金を受ければ95歳までですから、おおむね人生100年に対応した年金ということになります。
一方で、早く受け取るほうは変化がありません。例えば、以前紹介した繰り下げ受給への新アプローチ「WPP」では、「あえて老後の前半戦にiDeCoを解約し、公的年金の繰り下げを目指す方法もある」としていますが、今回の法改正はこうしたアプローチを邪魔することもないのです。
現行の「60~70歳の間で受取開始」という考えから「65~75歳」と時期をずらすのではなく、「60~75歳の間」と時期を拡大したことに、改正のポイントがあります。
この改正を活用するメリットがあるのは
- 働いて所得があるのでiDeCoの取り崩しを急ぐ必要がなく、先送りしたい人
- 老後の取り崩しの優先順位を検討し、iDeCoの資産を後回しにして非課税投資を継続したい人
といったところでしょうか。無理をして75歳まで受け取りを遅らせるというよりは「遅らせる自由もある」というふうに考えてみてください。
2022年5月 65歳までiDeCo加入・積み立てができるように
確定拠出年金が日本に誕生してから20年が経過し、わが国に起きた大きな変化の一つは「60歳代でも働く社会」の実現です。
これは60歳代が健康で元気な世代になったことと、公的年金の受給開始年齢の引き上げが行われたこと、そして高齢者雇用制度の整備が連動しています。
20年前、老後の資金準備というのは60歳までを上限とする発想だったわけですが、これはもう時代遅れです。
今回の法改正では、65歳になるまでiDeCoに加入し続け、積み立てを継続することができるようになります。
ただし、公的年金の保険料を納めている(つまり加入者である)ことが前提となっており、
- 60歳以降も、過去の未納期間を埋めるため国民年金保険料を納めている人(任意継続)
- 60歳以降も、会社員として働いており厚生年金の適用を受けている人
が基本的に対象となります。会社員で60歳以上であっても、60歳以降「働いているか」で判断するのではなく「厚生年金に加入しているか」が分岐点であることに注意が必要です。勤務時間が短く、厚生年金が適用されていない場合や、個人事業主として会社と嘱託契約などを結び、社会保険が適用されない場合などはiDeCoに加入することができません。
また、すでにiDeCoの資産を脱退一時金として受け取ってしまった人は、改めて加入することができませんので注意してください。
この改正では65歳まで積み立てを継続することで、iDeCoの老後資金を大きく上積みできることになります。例えば50歳になって慌ててiDeCoを始めて老後に備え始めた人は、10年ではなく15年積み立てができれば、老後資金が大きく増えます。
また60歳代でそれなりの収入を得られる人が増えており、こうした人にとってはiDeCo継続加入による所得税や住民税の軽減効果が得られるのもありがたいところです。
考えてみれば、65歳以降にiDeCoを受け取れば十分という人が増えています。定年退職が60歳だと退職金ももらえるので、60歳でiDeCoを慌てて崩す必要があまりないからです。公的年金を受け始める65歳まで加入し、iDeCoも65歳以降に受け取りを考えるのがスタンダードになりそうです。
2022年10月 重要!企業型DCとiDeCoの同時加入が可能に
最後にもう一つ、2022年の大きなiDeCoの変化は、企業型DC(確定拠出年金)とiDeCoに同時加入できるようになることです。こちらについては以前書いた記事「750万人がiDeCoに入れますよ!2022年10月から!」もあわせて確認してください。
拠出限度額は、次のように設定されます。
■企業型DCのみの場合
iDeCo掛金+企業型DC掛金 ≦ 月5万5,000円
iDeCo掛金 ≦ 月2万円
■企業型DCと確定給付型企業年金など他の制度に加入する場合
iDeCo掛金+企業型DC掛金 ≦ 月2万7,500円
iDeCo掛金 ≦ 月1万2,000円
掛金の枠は企業負担が優先されますので、昇格昇給に伴い企業型DC掛金がアップした場合は、iDeCo掛金を引き下げて限度額調整を行います。
また、企業型DCにおいて加入者掛け金の拠出「マッチング拠出」をしている人は、iDeCoと同種の制度ですから新たにiDeCoへ加入することはできません(マッチング拠出を停止し、iDeCoに加入することは可能)。
企業型DCに加入しているためにiDeCo加入を諦めていた人は、この機会に情報収集をしてみてください。
iDeCoを利用しないのはもったいない
「老後に2,000万円」問題で明らかになったように、公的年金にプラスして自助努力の資産形成を図ることはもはや国民的コンセンサスといえます。これは公的年金の力不足ではなく、豊かさやゆとりのための資金確保を自分でもやる、ということです(日常生活費は公的年金でなんとかやりくりでき、一生涯収入が保障されています)。
そうなればiDeCoの役割もおのずと高まっていきます。ぜひ今回の法改正を機に、iDeCo活用の幅を広げてみてください。
(山崎 俊輔)
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