値下がりした投資信託、本当に今が買い時?
トウシル / 2022年1月29日 8時0分
値下がりした投資信託、本当に今が買い時?
金利上昇で、株価が下がるメカニズム
前回の記事「値下がりが心配…投資信託の商品別リスク対策」では、足元の不安定な株式市場の動向を踏まえ、投資信託のタイプ別にリスクとの向き合い方と対処法について解説しました。その後も、世界の株式市場は依然として不安定な状況が続いています。
株式市場では一般的に、直近または52週の高値から終値が10%下落すると「調整局面」、同じく20%下落すると「弱気相場」に入ったと定義されます。ハイテク株が中心のナスダック主要銘柄で構成する指数「ナスダック100」は、米国金利の上昇が嫌気され、いち早く調整局面に入りました。
まずは、金利が上昇すると株価が下落するメカニズムからざっくりとご説明しましょう。小難しいと感じるかもしれませんが、お付き合いください。
株価の算出根拠となる企業価値は、将来獲得できるであろうキャッシュフローを、金利(これを割引率と呼びます)で割ることで求められます。キャッシュフローと発行済み株式数に変化がない場合、金利が上昇すると企業価値は低下し、理論株価も低下します。
これまで成長期待によって株価が押し上げられてきた米国のハイテク企業には、割高感が指摘されていました。低金利環境下では割高感も許容されていましたが、金利上昇に伴い、こうした銘柄は大きく売られ、「悪目立ち」してしまいました。
「レバレッジ型」投信が大幅下落。投資判断のポイントは
さて、ここからが本題です。
ナスダック100指数といえば、対象指数に対して数倍の値動きを目指す「レバレッジ型」の投資信託を思い浮かべる方が多いと思います。「楽天レバレッジNASDAQ-100」と「iFreeレバレッジ NASDAQ100」の二つは、いずれも昨年後半にかけて人気を集めましたが、年初からの基準価額の下落率は20%を超え、厳しい状況が続いています。
レバレッジ型は、先物取引などを活用して投資資金の2倍、3倍(商品によって異なります)の投資効果を追求するので、足元の下落幅は決して不自然なものではありません。
このように、基準価額が短期間で大きく下げると、下がったところを狙って追加購入を考える方も多いのではないでしょうか。しかし、レバレッジ型で焦りは禁物です。購入前に一呼吸置いて、以下の質問をご自身に投げかけてみてください。
「負の複利効果」に注意
グラフはあくまでもイメージですが、Bのような値動きを予想した方は、レバレッジ型の追加購入を踏みとどまった方がよいでしょう。これは、ナスダック100指数に限ったことではありません。
本連載で何度か言及してきましたが、レバレッジ型は、株価指数が上昇と下落を繰り返す、いわゆる「ボックス圏」の相場だと、「負の複利効果」が働いてしまい、基準価額が日々少しずつ下落してしまいます。
値動きの大きさを逆手に取って積立にするという選択肢もありますが、レバレッジ型自体は、株式市場が一方向に動かないとリターンが出にくいのです。レバレッジ型を「ほったらかし」にしてはいけない理由は、こうした点にあります。
つまり、上記A、または、2021年のような右肩上がりの上昇をイメージできない限り、いくら下がったところで購入しても、レバレッジ型で十分なリターンは期待できないため、注意が必要です。
調整局面にお薦めの投信は?
これまで右肩上がりで上昇する米国株を横目に、投資するタイミングを逃していた方にとって、足元の調整局面は良い投資機会と捉えることもできます。Bのような値動きを予想するなら、レバレッジの効いていない、指数連動型のインデックス型投信がお薦めです。
インデックス型の一括購入なら、仮に購入後に基準価額が下落しても、最終的に上昇すればリターンが期待できます。レバレッジ型とは異なり、運用の途中経過を気にする必要はありません。
なお、ナスダック100指数連動のインデックス型には、以下のような銘柄があります。
2022年は、これまでの金融相場・需給相場からの転換が不可避であり、短期的な市場の方向性を予測することはより難しくなると思われます。
上値を追うだけでなく、どのように市場のリスクと向き合うかを考えるよいタイミングと捉えた方がよいでしょう。
積み立てを行い、時間分散効果に期待するという方法はもちろんのこと、投信をどう使い分けるかという点にも注目してみてください。
(篠田 尚子)
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