これからの相続税対策(1)不動産より金融資産運用を勧める理由
トウシル / 2022年3月11日 6時0分
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これからの相続税対策(1)不動産より金融資産運用を勧める理由
相続税対策の定番といえば…
皆さんは、「相続税対策」といえばどんなことが思い浮かびますか? 多くの方がイメージするのが、不動産を使った対策なのでは、と思います。
キャッシュ(現金)を不動産に換えることで、キャッシュのまま保有するより相続税評価額が下がるため、相続税の節税につながります。
その不動産を賃貸に回せば、さらに評価額を下げることができます。
都心部か郊外か、地方都市かなど、エリアによって大きく差はあるものの、都心部であれば、キャッシュを賃貸用の不動産に換えるだけで相続税評価額は半分以下に圧縮できるケースが多いと思われます。
キャッシュ2億円は、そのまま相続税評価額2億円ですが、そのキャッシュで2億円の不動産を購入すると、相続税評価額は1億円に圧縮できるということです。
(なお、最近は過度な節税を防止するためにさまざまな規制がありますので、税理士に相談の上対策を実行することを強くお勧めします。)
とにかくトラブルが起こりやすい、不動産相続
筆者はあまり勧めませんが、今までこの不動産を使って相続税をゼロにしていた方に何人もお会いしたことがあります。
極端な話、借金をして不動産を買いまくれば、相続税はゼロにできます。
しかし、それはあくまでも「相続税を節税できる」というだけの話。キャッシュを不動産に換えると、のちのちトラブルが起こりやすいのが事実です。
例えば、賃貸用のマンション1棟しかないのに相続人が3人いるような場合、マンションを三つにスパッと分けるわけにはいきません。
そのため、誰がマンションを相続するかでもめる可能性が高いです。特に、マンション以外の金融資産があまりないのであれば、マンションを相続しなかった相続人は、相対的に少しの財産しか相続できないことになります。マンションを相続した人が、他の相続人に代償として自分の資産からお金を支払う「代償分割」などをしない限りは、なかなか話がまとまらないでしょう。
3人で1棟のマンションを共有するという方法もありますが、特に兄弟姉妹の間での共有はトラブルのもとになりますのでお勧めしません。例えば、1人が「売却したい」と言っても、残り2人が「売却したくない」と言えば売却は困難になります。
もし、無理に売却して全然関係のない第三者との共有にでもなれば、さらに兄弟姉妹の仲は悪くなり、口も利かない関係になってしまいかねません。
筆者も、不動産が相続人の共有になったことにより、売却したい相続人と売却したくない相続人とで訴訟にまで発展したケースをちょうど目の当たりにしているところです。
あなたは借金のついた不動産とキャッシュ、どちらが欲しいですか?
もし筆者が相続人だとして、1億円の借金がついた2億円の不動産と、1億円のキャッシュのどちらが欲しいかと言われたら、おそらく1億円のキャッシュを選びます。
実は、相続する側より相続させる側の方が、相続税対策に熱心な傾向があります。親がどんな財産を持っているか、どのような相続税対策をしているかを子供の方は全く知らない、ということもよくあります。
親御さんが善かれと思って相続税を節税するため、借金をして不動産を買ったとしても、果たしてそれを受け取る側がどう思うかをよく考えてあげているでしょうか?
確かに相続税は安くなったとしても、借金は返済していかなければいけませんから、特に金額が多額だと相続する側はかなりのプレッシャーになります。不動産賃貸はれっきとした「事業」ですから、失敗すれば最悪の場合自分自身が破産する可能性だってあります。筆者も実際そのような事例をみてきました。
不動産より金融資産を勧める理由
そこで筆者が提唱する相続税対策が、株式や投資信託など金融資産を用いたものです。
不動産とは異なり、キャッシュを株式や投資信託に換えても相続税評価額はあまり下がりません。そのため、ほとんどの方は株式や投資信託を相続税対策のために使うことはしていません。
でも、不動産は「評価を圧縮する」方法であるのに比べて、金融資産は「資産を増やす」方法である点が大きく異なります。
つまり、評価額を圧縮して税金を減らすのではなく、資産そのものを増やして、税金が取られても大した痛手にならないようにすればよいのです。
評価額を圧縮して税金を減らすことを続けていると、ファミリーの資産はなかなか増えません。その結果、何度も相続が起き、代替わりが進むにつれて、結局は資産が目減りしてしまうでしょう。
一方、株式や投資信託などの金融資産運用を長年かけて代々行っていけば、相続が起きたとしてもその時点で資産がかなり増えていますから、税金を払った後に残った財産そのものを増やすことも十分に可能です。また、換金性にも優れていますので、遺産分割でトラブルになることも防げます。
不動産を用いた「資産の圧縮」ももちろん有効ですが、それだけでなく、株式や投資信託など金融資産に投資して、「資産の極大化」をぜひ目指していただきたいと筆者は思っています。
金融資産運用により、相続税を支払っても問題ないほど資産を増やすことこそが、これからあるべき相続税対策なのではないでしょうか。
次回は、この金融資産運用による資産極大化を、生前贈与の仕組みにより行う方法についてお話ししていきたいと思います。
(足立 武志)
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