ウクライナ危機、原油高が世界経済に打撃。今週のマーケットは?
トウシル / 2022年3月14日 14時0分
![ウクライナ危機、原油高が世界経済に打撃。今週のマーケットは?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushiru/toushiru_36435_0-small.jpg)
ウクライナ危機、原油高が世界経済に打撃。今週のマーケットは?
今週の株式市場は、引き続きウクライナ危機で乱高下が続きそうです。ただ、米国が15~16日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で予定する利上げ開始により、雰囲気が変わる可能性もあります。
先週:原油高が経済に打撃。「スタグフレーション」の恐れ
先週の日本株は7日(月)に米国がロシア産原油の禁輸に踏み切るというニュースで急落。
原油価格の急騰もあり、9日(水)の日経平均株価は2万5,000円の大台を割り込み、1年4カ月ぶりの安値に沈みました。
同日、アラブ首長国連邦の駐米大使が原油増産支持を表明すると一転、10日(木)は原油安・株高の展開に。
しかし、ECB(欧州中央銀行)が10日夜、量的緩和策の縮小を早めると表明。米国の2月CPI(消費者物価指数)の伸びがさらに加速したことも悲観され、11日(金)は再び大きく下落しました。
11日の日経平均株価は前週比822円安の2万5,162円で取引を終えました。
さらにひどいのが東証マザーズ指数です。11日の東証マザーズ指数は、前日比3.8%下落。原油高による金利上昇懸念から、上昇機運は完全に消え失せました。2月24日につけた最安値更新も迫ってきました。
11日(金)夜の米国市場ではインフレ懸念が台頭して金利が上昇。金利上昇に弱いアップル(AAPL)やテスラ(TSLA)など大型ハイテク株が売られました。
多くの投資家が運用指標にするS&P500種株価指数は前週比で2.9%も続落。株価の底割れ懸念も台頭しています。
為替市場では安全資産といえる米国ドルが独歩高(単独の通貨のレートだけが上がること)。1ドル117円台まで急速なドル高円安が進んでいます。
先週、ロシアとウクライナの戦争は膠着(こうちゃく)状態が続きました。
それでも株価が大きく下げたのは、原油高が欧州をはじめとした世界経済に大きな打撃を与えるのではないかという懸念からです。
物価上昇と景気後退が同時進行する「スタグフレーション」の恐怖が、株価乱高下の元凶となりました。
週末の13日(日)には、ロシアがポーランド国境に近いウクライナ西部の町・リビウの軍事基地をミサイル攻撃するなど、戦争自体が「ロシア対 NATO(北大西洋条約機構)」へ激化する恐れすら出てきました。
今週:米利上げ開始へ。パウエル議長の発言に注目
今週も引き続きロシアとウクライナの戦争が最大のかく乱要因になりそうです。
ロシアのミサイル攻撃は、西側諸国からウクライナへの武器流入に対する明らかな警告です。
誰もがほぼ予期していないことが突如起こって株式市場が大混乱に陥る。そんな予期せぬ出来事のことを投資の世界では「ブラック・スワン(黒い白鳥)」と呼びます。
第3次世界大戦という「ブラック・スワン」だけは絶対、起こってほしくないものです。
今週の最大イベントは、日本時間17日(木)未明に終わる米国のFOMCです。
米国の金融政策を決定する今回のFOMCでは、40年ぶりのインフレを抑え込むため、0.25%の利上げが確実視されています。
FOMCは世界中の投資家が注目する一大イベントということもあり、パウエル議長の発言で市場の暗い雰囲気が少し変わる可能性もあります。
米国では、FOMC終了前の15日(火)に2月卸売物価指数、16日(水)に2月小売売上高が発表されます。ともに物価上昇やその影響を受ける個人消費の動向を示す指標なので、要注目です。
ただ、米国のCPIはウクライナ危機前の2月段階で、すでに前年同月比8%目前まで上昇。
「金融市場の神」とあがめられてきたFRB議長も物価がこれほどまで上昇すると、「株価対策のために金融引き締めを遅らせる」という手は打てません。
かといって、長期的な物価上昇が続くときに「株は怖い」と、銀行預金するのも得策ではありません。
なぜなら、物価が上昇するとその分、現金の価値が目減りしてしまうからです。銀行預金はインフレに一番弱い金融商品といえます。
そう考えると、コモディティ(商品)関連の投資信託やETF(上場投資信託)へ、資金を分散投資するのが賢明な判断でしょう。
世界中に原油の権益を持つINPEX(1605)、金や銅の鉱山権益を持つ住友金属鉱山(5713)、ロシアからの供給不安で価格が急騰するニッケルに強い大平洋金属(5541)など、現物株を少し買っておくのもいいでしょう。
むろん、今は急騰しすぎているので高値つかみには気をつけましょう。ある程度、価格上昇が落ち着いたら、というのが大前提です。
先週一週間の下落率をみると、サンバイオ(4592)が25%安、メルカリ(4385)が18%安など、東証マザーズ市場の大型成長株が大きく下落しました。今週も株価が割高な新興株や半導体関連株などの下げがきつくなりそうです。
あまりにも波乱続きの展開で不安を感じている投資家の方も多いと思います。ただ、「夜明け前が一番暗い」という言葉もあります。株式市場の混乱もいつかは終わる。それだけは確かです。
(トウシル編集チーム)
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