もらうな、稼げ!たくましく生きるための「本当のマネー学」
トウシル / 2022年5月2日 12時15分
もらうな、稼げ!たくましく生きるための「本当のマネー学」
君は、友達や家族と「お金」の話をしたことがあるかな? お金持ちになることが「なんとなく、ちょっとよくないこと」に見えていないかな? これって実は、本当はすごく変なことだ。「将来とか、お金のことが、ちょっと心配?」――大丈夫! それはお金の仕組みがよくわかっていないから、不安なだけ。
ジェームズ・スキナーさんは、世界的にも有名な「お金と会社をつくる達人」。君たちがこれから、もっと自由に、やりたいことを成し遂げていくために必要な、お金との付き合い方のキホンを聞いてみよう。
「お金」は正義!自分が価値を生んだ成果だ
「お金を稼ぐことは悪いこと。お金の話をするのは悪いこと」――日本にはそんな考え方が根強くあります。でも、お金を稼ぐことが良いことか悪いことかという話をするためには、「お金とは、何者なんだ?」をまず考えておかなければなりません。
お金とは「社会のために生みだした価値」のことです。例えば、あなたが近所のコンビニの時給1,000円のアルバイトに応募して1時間「働いた」とします。まずここで、あなたは「コンビニ運営の手助け」という、1,000円分の価値をつくり出したのです。
だから、コンビニのオーナーは、その価値を数字で表します。1,000円分を支払うのです。現金払いという約束なら1,000円分を渡してもいいし、500円玉を2枚渡してもいい。銀行振込という決まりなら後日、あなたの銀行口座に1,000円分を振り込みます。
つまり、あなたが与えた価値をお金に換算したということ。そして、そのお金で、あなたは何か好きなもの(例えばドーナッツ)を買うことができます。
この一連の流れを文章にすると、「この人(あなた)は先に社会のためになることをした(コンビニで働いた)ので、この人が何か(ドーナッツ)を欲しくなった時には、かなえてあげてね。ただし、価値の範囲内で」ということ。
これが社会の約束、「相互性(同じことをし合うこと)の原則」です。
次に、あなたは220円のドーナッツを買いました。消費した価値(220円)についても記録しなければならないという社会のルールがあるので、次の式で差額(残った価値)を計算します。
自分がつくり出した価値 - 人がつくり出した価値を消費した分 = 差額
1,000円-220円= 780円
この式を見ると、あなたは自分がつくり出した価値のうち、780円分の価値についてはまだ返してもらっていないことがわかります。
お金持ちのことを億万長者と言うでしょう? 1億円持っている億万長者は、1億円分の価値を社会のために生み出したのにもかかわらず、まだ社会から何も返してもらってない人のことだとわかります。たくさん働いて1億円の価値を生み出して、何もかなえてもらっていないなんてえらい。勲章ものだと思いませんか?
話を最初に戻して、「お金を稼ぐことは悪いこと?」なのか。あなたはコンビニで働いて、お客さまが欲しいものを提供した。お客さまに喜んでいただいた。その価値の対価としてお金をもらった。このように、お金を稼ぐプロセスは、人の喜ぶことをしてあげるプロセスなのです。
さあ、お金を稼ぐことは悪いことだと思いますか?
次は会社の話をしましょう。会社はいろいろな商品やサービスを売っていますよね。良い商品やサービスなら、お客さまは喜んでくれる。
「お金持ち」は効率よく、価値と利益を生んだ人
さて、会社は良い商品やサービス(価値)をつくるために、いろいろなところでお金を使います。モノなら材料が必要なので、材料を買います。電気やガス、石油のようなエネルギーも使います。
商品を納品するために車を買い、走らせるためにガソリンを使います。いろいろな「社会の資源」を消費して、お客さまに良い商品やサービスを届けます。
そこで必要なのが、会社はどのくらいの価値をつくり出したのか、その価値をつくるためにどのくらい資源を消費したのかということの記録です。
会社がお客さまのためにつくり出した価値 - 社会資源を消費した分 = 利益
この式を見ると、利益が大きい会社ほど、たくさんのお客さまが必要としているものを提供して、あんまり資源を使ってないということになるので、社会にとってありがたい存在だということがわかります。
そんな会社を経営してお金持ちになった人は、「効率よく、価値と利益を生んだ人」と言えるのです。
もう一つ注目して欲しいことは、この式が「社会の欠乏状態(みんなが欲しいのにない!)を解消する」システムになっているということです。
例えば、世の中にチョコレートが足らないとします。みんな食べたいだけのチョコレートが作られていません。チョコレートはカカオ豆から作るんだけど、カカオ豆の価格が安いから農家が作りたがらない。すると、私たちはチョコレートを食べたくても食べられない。
チョコレート会社はどうするかというと、チョコレートの価格を引き上げるのです。だって、欲しい人がたくさんいるのですから、値上げをしても買ってもらえるはずです。そうすると売り上げが大きくなる。
式の左側ですね。右側は変わらないから、利益が大きくなる。まだ、この時点ではチョコレートの量は足りていません。でも、会社は利益が増えたから、カカオ豆を高い値段でも買えるようになる。
それを見た別の農家が、それならうちもカカオ豆を作りたいと思う。カカオ豆の量が増えて、価格が下がり、私たちが食べたい量のチョコレートが買える値段で供給されるようになる。
このように価値を数値化させるメカニズムは、私たちの欠乏(もっと欲しい!)状態を解消し、必要なものが全部つくられている状態をつくり出すのです。
会社も農家もお客さまのためにいいことをして、社会全体が満足する。これって素晴らしいシステムでしょう?
「誰かのせいにしない」。年金にも政府にも期待するな
アルバイトの話に戻ると、あなたはたぶん、「バイト料をもらった」つもりでいるだろうけど、実際には価値をつくり出した対価として「稼いだ」ものであり、オーナーから「もらった」ものではないよね。
チョコレート会社の従業員たちも、給料を会社からもらっているのではなくて、製造現場でチョコレートを作ったり、カカオ豆を仕入れる係として働いたり、梱包したり、お店へ運んだりして価値をつくり、その対価としてお金を稼いだ。社長から給料をもらったわけではない。
ここが大切なところですが、「お金はもらうものではなく、稼ぐもの」なのです。もらうものだと思い込んでいるから、休みなく働かされるブラック企業に対して文句を言いつつ辞めることができない、なんてことが起きます。給料をもらえなくなるから、どんな状況に追い込まれても会社に依存してしまう。
でも給料を稼ぐ(稼ぐ能力が必要ですが)ことができれば、すぐに転職できます。会社と働く人の立場は、対等。価値を提供するのは、あなたです!
チョコレート会社に話を戻すと、「会社は全て自分たちでつくり出して利益を得たわけではない」ことも肝に銘じておかなければなりません。カカオ豆は農家が育てたし、チョコレート工場にある製造機械は機械製造会社が造り、チョコレートを運ぶ車は自動車会社が造り、その燃料は石油会社が精製した。
世の中はチームで動いているわけ。だから利益を独占しようと考えてはいけません。今のパナソニックの創業者で経営の神様と呼ばれた松下幸之助さんも、「自分の生み出した価値の10%が自分のものになればいい」という考え方を持っていました。会社として動いている以上、自分で全てをできるわけではないし、みんなで配分しようということですね。
さて、給料はもらうものではなく、自分で稼いだものという理屈がわかれば、老後に受け取る年金だってアテにしてはいけないことがわかるはずです。今の日本の公的年金制度は、加入を義務づけているから、それを否定するつもりはないけれど、頼る一方ではダメ。
公的年金制度の仕組みは、現役世代が納める保険料で、その時々の高齢者世代に年金を給付する「賦課(ふか)方式――世代間の支え合い」で成り立っています。
だからといって、現役世代に頼る、国に頼ると考えてはいけません。豊かな老後の生活を送るためには、自分が現役世代のうちに自分で稼いで十分な蓄えを持たなければなりません。
みんながそういう考えを持って「自立」すれば、社会にお金の余裕が生まれて、障害のある人のように社会的に不利な立場にある社会的弱者を助けることができます。
一日でも早く、バイトをして、実家を出て、欲しいものを買おう
では、君たちはいま、何をするべきでしょう?
自立するためには、早速最初のアルバイトをしてみて、人のために何か役立つ価値を生み出して、価値の対価としてお金を受け取って、そのお金を自分の欲しいものに使ってみることを体験してください。
大人になったら、一日も早く実家を出て、独り立ちしてください。そして、自分で稼いだお金で手に入れた部屋の家賃を払う喜びを味わってほしい。どんなに小さくても「my house」なんです。
豪華な部屋である必要はない。私は長い間、四畳半に住んでいましたよ。私が他の人と違いがあるとすると、11歳の時から土木作業の仕事をしていたということです。当時の時給は1ドル18セント。今なら100円くらい。私は100円の価値を知っていることが誇りであり強みだと思っています。
ところが、みんな働くうちに人生の本当の目的を忘れてしまって、たくさんお金を稼いで、楽になることを目指してしまう。
違いますよ。人生の本当の目的は、「より大きな意義のある存在になる」ことです。それは楽な道ではありません。苦しい道かもしれません。でも、苦しい時こそ喜ぶべき。なぜなら、楽をしているときは成長していないときだから。
アフリカのサバンナにいるライオンは、おなかが減ると、何度も狩りに失敗しつつ、ついにシマウマを倒します。それを見て、ハイエナを始めいろいろな動物がおこぼれに預かろうとやってきます。
ライオンは他の動物を追い払い、「これは私のシマウマだ」と宣言するのです。この喜びを知らずに、人生を送ってはいけません。
みなさんも、「もらおう、誰かが助けてくれる」「おこぼれに預かろう」などと考えず、自分で稼いだお金だと胸を張れる、「自立した存在」になってください。
<教えてくれたのは>
ジェームズ・スキナー
作家、経営コンサルタント、ヘッジファンド経営者
19歳のときに来日。早稲田大学で国際ビジネス論を学び、アメリカ合衆国大使館、NEC、社会経済生産性本部、財務広報ライター、アメリカ最大級の研修会社フランクリン・コヴィー社の日本支社長を歴任。ベストセラー『7つの習慣』(キングベアー出版)を日本に紹介したことやNHKやCNBCなどにおける評論家活動、自己啓発の名著『成功の9ステップ』(幻冬舎)や『図解成功の9ステップ』(中経出版)もよく知られ、『史上最強のCEO』(フローラル出版)は初版100万部で話題となった。
(トウシル編集チーム)
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