差がつくiDeCoの受け取り方法(後編)パターン別の有利な方法とは?
トウシル / 2022年5月23日 12時0分
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差がつくiDeCoの受け取り方法(後編)パターン別の有利な方法とは?
※本記事は2020年4月3日に初回公開したものです。情報を更新してお届けします。
前回(前編:分割か一括どっちがいいの?)iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)の積立金の受け取り方法について基本的な内容をお伝えしました。今回はそれを踏まえ、パターン別に有利な受け取り方法を考えてみたいと思います。
3人のケースでシミュレーション
今回は、Aさん、Bさん、Cさんの3人のケースで、iDeCoを一時金、年金、併給で受け取る場合の税額の違いをシミュレーションしてみたいと思います。
いずれも男性で65歳。勤続年数30年で退職、iDeCoの加入期間は20年。また、説明の便宜上単身とします。
さまざまな条件により金額は変わりますので、下記シミュレーションはあくまでも参考としてご覧ください。
Aさん
会社からの退職金1,000万円(一時金)
iDeCo 2,000万円
退職後の公的年金 年間200万円
Bさん
会社からの退職金 なし
iDeCo 1,000万円
退職後の公的年金 年間130万円
Cさん
会社からの退職金1,000万円(一時金)
iDeCo 2,000万円
退職後の公的年金 年間200万円
退職後に相続で取得した不動産の所得 年間500万円
全額を一時金で受け取る場合はどうなる?
全額を一時金で受け取る場合は、退職所得となります。
退職所得控除額は勤続30年の場合1,500万円、勤続(加入年数)20年の場合800万円です。
したがって、AさんとCさんの場合は退職により3,000万円を受け取ることになり、所得税・住民税を合わせて、かかる税金は約186万円となります。
Bさんの場合は退職により1,000万円を受け取ることになるので、所得税・住民税で支払う税金の合計は約15万円となります。
年金で受け取る場合は?
次に、iDeCoを年金で受け取る場合(20年間に分けて受け取る場合で考えます)はどうなるでしょうか?
この場合、一時金で受け取る場合と年金で受け取る場合の、社会保険料や所得税・住民税の金額は下記のようになります(一時金で受け取る場合は退職所得を除いた額)。
Aさん
・一時金の場合:22万1,000円
・年金の場合:46万8,000円
Bさん
・一時金の場合:6万5,000円
・年金の場合:16万1,000円
Cさん
・一時金の場合:171万8,000円
・年金の場合:208万8,000円
このように、年金で受け取った方が、毎年の負担額は増加します。そして、所得金額が大きいほど、負担額の増加も大きくなります。
退職所得にかかる税額はAさんとCさんが186万円、Bさんは15万円です。一方、年金で受け取ると退職所得にかかる税額は退職所得控除内なのでゼロですが、社会保険料や税金の負担額が大きくなります。
例えば、Aさんであれば、年間増加額468,000-221,000=24万7,000円ですから、これが20年続くとなると494万円となり、一時金でもらった場合の186万円よりかなり負担額が大きくなってしまいます。
年金で受け取った場合は、一時金で受け取った場合よりトータルの負担額が大きくなり、それは所得が大きいほど顕著になる、ということが言えます。
一時金と年金の併給の場合は
iDeCoの半分を一時金、半分を年金とした場合はどうなるでしょうか? この場合、AさんとCさんは毎年50万円を年金で、Bさんは毎年25万円を年金で受け取ることになります。
また、一時金に対する退職所得に係る税額は、退職金も加味すると、AさんとCさんが約41万円、Bさんはゼロです。
併給の場合の年間の保険料、税金の負担額は下記のとおりです。
Aさん:35万2,000円
Bさん:8万3,000円
Cさん:190万3,000円
このように、全額を年金で受け取るケースほどではありませんが、全額を一時金で受け取るよりも負担額は大きくなります。
Aさんの場合、一時金の場合の負担額186万円に対して、併給の場合は退職時の負担額41万円、年金受給時の負担増加額(352,000円-221,000円)×20=262万円の合計303万円となり、負担額は117万円増加します。
以上より、全額を一時金<併給<全額を年金の順で、負担額が小さくなり、かつ所得額が大きい人の方がその影響額が大きくなることが分かります。
重要!税金だけではなく自分のライフプランや性格も考慮して決めよう
最後に重要なことをお伝えしておきます。上記のように、税金の面からどの受け取り方法が有利かは決まります。しかし、それだけではなく、ご自身のライフプランや性格も考慮した上で、受け取り方法を決定するようにしましょう。
例えば、iDeCoを受け取る時点で、多額の住宅ローンが残っているような場合は、収入が少なくなる老後にまで住宅ローンを残すのではなく、一時金で受け取って返済する、という方が気分的に楽に老後を過ごせます。
一方、自分自身が浪費家である、お金があるとつい使ってしまう、という方は、iDeCoを一時金で受け取ってしまうと、大切な老後の生活資金を食いつぶしてしまう恐れがあります。年金や併給で受け取ることにより、老後の資金をしっかり確保することができます。
もちろん、税務面で有利な受け取り方法を選んでもよいですが、ご自身のライフプランや性格を考慮して、あえて税務面で不利な方法を選んだ方が、人生にとってプラスの可能性もあることを、ぜひ頭に入れておいてください。
>差がつくiDeCoの受け取り方法(前編)分割か一括どっちがいいの?
(足立 武志)
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