金融イベントで日本株どうなる?~インフレと景況感のバランスがカギ~
トウシル / 2022年6月20日 12時4分
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金融イベントで日本株どうなる?~インフレと景況感のバランスがカギ~
先週の日経平均は2万5,963円で終了
先週末6月17日(金)の日経平均株価は2万5,963円で取引を終えました。週足ベースでは5週ぶりに反落し、前週末終値(2万7,824円)からの下げ幅も1,861円と、急落と呼べるほどの大きさとなっています。
図1 日経平均(日足)とMACD (2022年6月17日取引終了時点)
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/b/9/-/img_b9f5ea80feefa125e63e0780afdd05d3172850.png)
あらためて先週の値動きを振り返ると、週初の13日(月)に、「窓」開けによる一段安で始まった日経平均はその後も下げ幅を広げて、節目の2万7,000円台や25日移動平均線を下抜ける展開となりました。
翌14日(火)もさらに窓を開けて下落し、75日移動平均線を下回りましたが、その後は15日(水)から16日(木)にかけて2万6,500円水準での攻防が続き、株価の下落がいったん落ち着きを見せる場面もありました。
ただし、週末の17日(金)に再び窓開けで下落してしまい、2万6,000円台をも下回り、週を通じて窓開けによる株価水準の切り下げが目立った印象です。
一般的に窓開けが目立つ展開というのは、米国株市場で大きく株価が動いた流れを日本株市場も引き継いでいたことを意味します。先週の国内外の株式市場では、14日(火)から15日(水)にかけて開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)の動向が注目されていました。
FOMC直前となる、前週末の10日(金)や13日(月)、そして14日(火)に、三つの窓開けが続いたわけですが、こうしたチャートの形状は「三空叩き込み」と呼ばれ、相場が反転しやすいサインとされています。「さすがに三つも窓を開けて下落するのは、下げの勢いが強過ぎではないか?」という考え方が背景にあります。
上の図1で三空叩き込みを描いていた場面は、前週末に公表された米5月消費者物価指数において、インフレの進行が止まっていない結果となったことや、それを受けて開催されるFOMCでは、利上げ幅が従来予想の0.5%ではなく、0.75%に引き上げられるのではないかという思惑を織り込んでいた局面でした。
つまり、その後に見せた2万6,500円台の攻防は、FOMCの動向を先取りして株価が下落し、FOMC通過による目先の株価反発シナリオを想定して様子をうかがっていたと考えることができます。
ただし、実際には17日(金)の取引でさらに窓開けの下落が出現してしまい、想定シナリオがいったん否定された格好となりました。
とはいえ、日経平均は5月12日の直近安値(2万5,688円)を下回ることなく、下げ幅を縮小させて2万6,000円台を回復する場面も見せており、このままどんどん下値を追っていくような形でもないため、目先の相場展開の判断が難しくなっています。
先週のNYダウをチェック
同様に、先週の米NYダウの動きについても確認していきます。
図2 米NYダウ(日足)とMACD (2022年6月17日取引終了時点)
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/9/f/-/img_9f2c1614d4bf8351755e2231fb36b52a145216.png)
先週末17日(金)のNYダウ(ダウ工業株30種平均)終値は2万9,888ドルとなり、2021年1月以来の3万ドル台割れで取引を終えました。NYダウもFOMC前に株価が下落し、5月20日の直近安値の水準で様子をうかがう場面があったのですが、週末にかけて一段安となっています。日経平均と異なるのは、直近安値を下回り、年初来安値を更新している点です。
また、これまでの当レポートにおいて、「NYダウの3万2,000ドル台割れ以下は、景況感の悪化を織り込む目安」として注目していましたが、先週末の株価水準はこの3万2,000ドルからかなり下に位置しており、景況感の悪化を織り込みつつあるという見方もできそうです。
先週は米FOMCだけでなく、日本銀行の金融政策決定会合や、英国やスイスなど、各国中央銀行の金融政策イベントが集中する週でしたが、日本を除いた多くの中央銀行がインフレを警戒する「タカ派スタンス」へとかじを切る動きが相次ぎました。
米国の利上げ幅拡大だけでなく、これまで「ハト派」として認知されていたスイスも15年ぶりの利上げに踏み切ったことも市場にインパクトを与えたと思われます。
こうした各国中央銀行の金融引き締め強化によって、「インフレを抑制する前に景気が減速してしまう」ことへの警戒感が高まりつつあるような印象です。そのため、しばらくはインフレと景況感のスピード感が焦点となり、相場の地合いが経済指標や企業業績の動向に敏感に反応しやすくなる可能性があります。
今週は国内で5月消費者物価指数、米国では5月の住宅関連指標(新築・中古住宅販売)などの経済指標の発表が予定され、全体的にイベントが少なめではありますが、来週からは国内2月決算企業の決算が発表され始めるほか、7月に入ると4-6月期決算の発表が相次ぐことになります。
景況感悪化とNYダウの関係を再確認
続いて、前述した、NYダウが景況感の悪化を織り込みつつあるという見方について、あらためて考えてみたいと思います。
図3 米ラッセル2000(日足)の動き(2022年6月17日取引終了時点)
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/a/0/-/img_a072be41e2433e996fb69efb3f95236670860.png)
上の図3は、米国の中小型株価指数の代表格とされる「ラッセル2000」の推移を表したものです。
このラッセル2000は、中小企業の銘柄が対象となっていることもあり、景気や業績の動向に敏感に反応しやすく、先行指標として意識されることの多い株価指数なのですが、先週末17日(金)時点の株価を見ると、図2のNYダウとは異なり、5月12日の安値を下回っておらず、景況感や業績悪化の織り込みはこれからと考えることができます。
もちろん、今週のラッセル2000が下げを加速させた場合には警戒感が高まることになります。
となると、先週のNYダウの年初来安値を更新する動きは、どちらかというと、「金融政策イベント通過によるアク抜けシナリオ」が崩れたことによる需給的なポジション調整などの揺らぎによるものと見た方が良いかもしれません。もし、この見方の通りであるならば、今週の株式市場は需給の整理に伴ってひとまず落ち着き、株価が反発していく展開が想定できます。
また、NYダウの動きを週足チャートで見ても、いったん株価が下げ止まる可能性があります。
図4 米NYダウ(週足)とMACD (2022年6月17日取引終了時点)
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/c/2/-/img_c225b5c1cbf29e553a05f66c9a65e96c140509.png)
上の図4はNYダウの週足チャートに、2020年3月のコロナ・ショック時の安値から、今年1月の高値までの上昇幅に対する「押し目」ラインをフィボナッチ・リトレースメントで描いたものです。
先週末時点の株価は38.2%押し水準(2万9,794ドル)で踏みとどまっていることが分かります。さらに、図4のチャートを過去にさかのぼると、この株価水準はコロナ・ショック前にもみ合っていた高値水準でもあり、市場のムードが余程悪化しない限りは、値ごろ感の買いが入りやすい株価水準として意識されそうです。
最後に、話を日経平均に戻して目先の値動きの目安についても考えていきます。
図5 日経平均(日足)のボリンジャーバンド (2022年6月17日取引終了時点)
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/3/c/-/img_3cf9eeb0b79a7b36e268679454419294191419.png)
上の図5は日経平均(日足)チャートにボリンジャーバンドを重ねたものです。先週末17日(金)時点の日経平均はちょうどマイナス2σ(シグマ)あたりに位置していることが分かります。ちなみに、ボリンジャーバンド内のMA(赤い線)は25日移動平均線を表しています。
チャートを過去にさかのぼると、株価がマイナス2σにタッチした後に株価が反発している場面がいくつか確認できますが、その多くはMAラインでの攻防となっています。先週末時点のMAは2万7,000円台の節目あたりでもあるため、仮に株価が戻していった場合には、この水準が上値の目標値として意識されることになりそうです。
反対に、先ほどの図1にあるように、5月12日の直近安値(2万5,688円)を下回ってしまった場合には、2万5,500円や2万5,000円割れとなった3月9日の安値(2万4,681円)が意識されることになりそうです。
(土信田 雅之)
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