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ちょっとややこしい株の損益計算ルール:税計算のポイント解説

トウシル / 2022年6月17日 6時0分

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ちょっとややこしい株の損益計算ルール:税計算のポイント解説

税金の計算では、損益を正確に出すことが必要

 言うまでもないことですが、株式投資で損益を正確に出すことが、税金を正しく計算するためには必要です。

 本来あるべき額より税金を少なく計算したら、後日税務署から指摘されて不足分を取り立てられるかもしれません。あるべき額より税金を多く計算しても、それに気付かなければ払う必要のなかった税金を払うことになってしまいます。

 ただ、この税金の計算が難解なのが証券税制の悩ましいところです。取引の形態や、口座の種類によって異なるルールがあるため、同じ株であっても損益の計算方法が異なります。

 そこで今回は、個人投資家の方が遭遇するであろうシチュエーションを想定し、具体例を挙げながらご説明していきたいと思います。

口座・取引形態ごとに「異なる銘柄」として考える(ただし例外あり)

 例えば、A社の株式を、次のような形態で100株買い、その後売却したとしましょう。実際にはこんなややこしい取引をする方はいないと思いますが、説明の便宜上このようにしています。

〇X証券会社
・NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座で購入および売却(1)
・一般口座の現物取引で購入および売却(2)
・一般口座の信用取引で購入および売却(3)
・特定口座の現物取引で購入および売却(4)
・特定口座の信用取引で購入および売却(5)

〇Y証券会社
・一般口座の現物取引で購入および売却(6)
・一般口座の信用取引で購入および売却(7)
・特定口座の現物取引で購入および売却(8)
・特定口座の信用取引で購入および売却(9)

 このように、二つの証券会社で延べ九つの形態で同じ銘柄を売買した場合、どのように計算すればよいと思いますか?

「一般口座かつ現物取引」以外はそれぞれ単独で計算する

 まず、NISA口座の(1)は、単独で損益を計算します。売却益は非課税となりますので、別枠で考えます。

 次に、信用取引で購入したものについては、それぞれを個々に計算します。

 また、特定口座で購入したものについては、証券会社が別々であれば、証券会社ごとにそれぞれ別個に計算します。

 これらをまとめると、(1)(3)(4)(5)(7)(8)(9)はそれぞれ別個の銘柄であるとみなして損益を計算します。

 ですから、それぞれいくらで買ったか、いくらで売ったかが把握できていれば計算できますし、特定口座の場合は証券会社が損益を計算してくれますから、その結果に従えばOKです。NISA口座であれば非課税なので何もする必要はありません。

 例えばX証券の(4)で100株買い、その後Y証券の(8)で100株買い、Y証券の(8)の100株だけを売却した場合は、Y証券の(8)の買値と売値の差額が損益となります。(4)は別枠扱いなので、(4)の買値は(8)の損益には何ら影響しません。

 ところが、一般口座かつ現物取引の場合は、これらとは考え方が異なります。一般口座かつ現物取引では、複数の証券会社の売買を一つにまとめて計算する必要があるのです。

一般口座かつ現物取引ではどのように計算するのか?

 例えば次のような時系列で考えてみましょう。購入する口座は全て一般口座で、現物取引とします。

〇1月 A社株100株をX証券にて1株1,000円で購入
〇2月 A社株100株をY証券にて1株600円で購入
〇3月 A社株100株をY証券にて1株800円で売却

 この場合、3月に売却した100株の売却損益はいくらになるでしょうか?

 答えは、800円×100株-(1,000円+600円)÷2×100株=ゼロです。

 Y証券だけでみれば、600円で買ったものを800円で売っているので、200円×100株=2万円の利益が出ているように見えます。しかし、損益計算上、X社で買った株も含めて購入単価を出しますから、平均単価800円で買ったものを800円で売ることになり、損益はゼロとなるのです。

 なお、3月の100株を売却したのがY証券ではなくX証券であっても、購入単価は800円なので、同様に損益はゼロとなります。

 これが特定口座の場合は、3月の100株売却がX証券であれば、損益は(800円-1,000円)×100株=2万円のマイナスとなります。100株売却がY証券であれば、損益は(800円-600円)×100株=2万円のプラスとなります。

 このように、一般口座と特定口座の場合とで、同じ株を買って売却したときの損益の額が異なることがお分かりいただけたのではないでしょうか。

税計算をややこしくしないためのポイント

 このように、特定口座であれば、同じ銘柄を異なる証券会社で保有していた場合、証券会社ごとに別々の銘柄とみなして損益を計算しますので、個人投資家の側に特に不都合はありません。

 ただし、上の例のように、自分の頭の中ではプラスマイナスゼロと思っていたにもかかわらず、どの証券会社の持ち株を売却するかにより実際の損益はプラスになったりマイナスになったりします。想定される損益も確認した上で、どの証券会社の持ち株を売却するかを考えるようにしましょう。

 また、一般口座で複数の証券会社を使い、同一銘柄を売買すると、全ての証券会社での購入・売却を記録して損益を計算しないといけないため、税計算が煩雑になってしまいます。

 複数の証券会社に口座がある場合は、できるだけ特定口座で取引し、かつ一つの証券会社だけで同一の銘柄を売買することが、税計算をややこしくしないためのポイントです。

(足立 武志)

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