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参院選どうなる?外国人投資家は日本の政治をどう見ている?

トウシル / 2022年6月23日 7時59分

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参院選どうなる?外国人投資家は日本の政治をどう見ている?

参院選公示、7月10日投開票

 第26回参議院議員選挙が22日公示され、7月10日の投開票に向けて18日間の選挙戦に入りました。

 日本株を動かしている外国人投資家にとって最大の注目点は、与党の政権基盤が「強化されるか弱体化するか」にあります。政権基盤が強化されると、外国人投資家からの買いが入りやすくなる、あるいは売りが出にくくなります。政権基盤が弱体化すると、外国人の売りが出やすくなります。

 岸田文雄政権が「勝敗ライン」に掲げる獲得議席は与党(自民党+公明党)で56議席です。56議席を獲得すれば、与党の非改選議席(69)【注】と合わせて、参院定数(248)の過半数(125)を確保することになります。

【注】参議院議員は任期6年で、3年ごとに半数が改選されます。今回の参院選では、主に前々回(6年前の2016年)の参院選の当選者が改選されます。前回(2019年)の参院選の当選者は改選されません(非改選)。非改選の議席数が与党(自民党+公明党)で69あります。今回の参院選で56議席獲得すると、非改選の69と合わせて、与党で過半数の125議席を獲得することになります。

 与党で56議席確保はハードルの低い目標です。今回の参院選で改選される124議席のうち与党は69議席を保有していたからです。69議席から56議席に議席を減らしても達成できる目標です。

 与党で56議席しか取れず、議席を減らしてぎりぎり過半数を確保するようならば、岸田政権の政権基盤は弱体化する可能性があります。改選される124議席の過半数である63議席以上を与党で確保しないと、岸田首相への求心力は高まらないと考えられます。

 選挙結果を予想するのは困難ですが、序盤の情勢を見る限り、与党に有利に進む可能性があります。岸田政権が「分配重視」の「新しい資本主義」を打ち出したため、争点が見えにくくなっている影響もあります。勝敗に大きく影響するのは当選者が1人の「1人区」で、全国に32あります。

 前回・前々回の参院選では、野党が1人区で統一候補者を出して与党に対抗する戦略をとってきました。ところが、今回の参院選では、自民党が野党の切り崩しに成功したため、野党が統一候補を出せた「1人区」は11に留まります。序盤の情勢では、与党が優勢と言うこともできると思います。

 念のため、申し添えますが、今日のレポートで私は特定の政党を応援する意図はまったくありません。ファンドマネージャー時代に欧米・中東・アジアの機関投資家としばしばディスカッションしてきた経験から、外国人が日本の政治をどう見ているか、選挙結果によって外国人がどう動くかについて、私の見解を述べるのみです。

外国人の日本株売買スタンス定まらず

 本コラムで繰り返しお伝えしている通り、日本株を動かしているのは過去30年、外国人投資家です。外国人は買う時は上値を追って買い、売る時は下値を叩いて売るので、

【1】外国人が買い越す月は日経平均が上昇し、外国人が売り越す月は日経平均株価が下落する傾向が鮮明です。
【2】日経平均が新高値を取るのは外国人の買い、新安値を取るのは外国人の売りによる傾向が鮮明です。

 日本株の動きを予想する時、「外国人から日本がどう見えているか」を常に考える必要があります。私はファンドマネージャー時代、欧米の年金基金や中東・アジアのソブリンウェルスファンドとしばしば日本株の見方について議論してきました。その経験からわかっていることを言いますと、まず外国人投資家は日本の政治を良く見ています。

 資本主義の構造改革・成長戦略を推進する自民党が選挙で勝って支持率が高まり強いリーダーシップを発揮する時に日本株を積極的に買ってきます。自民党の支持率が低下する時には、日本株を売ってきます。

 以下、外国人投資家の気持ちを咀嚼(そしゃく)しつつ解説しています。

外国人投資家は小泉内閣と第2次安倍内閣を高く評価

 ここで2001年4月以降の日経平均の動きと、日本の政権推移を振り返ります。

小泉政権発足以降の歴代首相と日経平均の動き:2001年4月~2021年9月(8日)

出所:各種資料より楽天証券経済研究所が作成

 上のグラフで、外国人投資家の大量の買いによって日経平均がダウ工業株30種平均(NYダウ)を大幅に上回る上昇率になった年が2回あります。赤丸をつけている、2005年と2013年です。2005年はNYダウが前年比0.6%下落する中で日経平均が40.2%上昇しました。2013年はNYダウが26.5%上昇する中で日経平均は56.7%も上昇しました。

 この2つの年の共通点は、「解散総選挙で自民が大勝、小泉純一郎首相・安倍晋三首相が強いリーダーシップを発揮」したことです。資本主義の構造改革・成長戦略が進む期待から、外国人が日本株を積極的に買ってきました。米国株以上に、日本株が魅力的になったと外国人が考えた年です。

 2012~2013年に日本株ファンドマネージャーだった私は、欧米・中東・中国・韓国の機関投資家とよく話しました。国が違っても、日本株をみている外国人投資家の考えには共通点がありました。アベノミクスがスタートした2013年によく聞かれたのは以下の言葉です(多数の外国人の言葉を筆者が要約)。

「社会主義的な政策を進める政党から資本主義政党に政権が戻ったので日本株のポジションを増やす」

 外国人がいかに日本の政治の変化をよく見ているかご理解いただくために、小泉政権以降の、解散総選挙前後の日経平均をお見せします。解散総選挙後の大きな動きは、外国人投資家が引き起こしています。

衆院解散総選挙前後の日経平均の動きを比較:総選挙の28営業日前から、58営業日後までの動き

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成。総選挙実施日直前の日経平均を100として指数化。▲28は28営業日前、30は30営業日後、50は50営業日後を示す

 2005年の第3次小泉政権による郵政解散選挙と、2012年12月の第2次安倍内閣がスタートした選挙の直後に、外国人投資家は、日本株を大量に買ってきました。

 一方、民主党政権が誕生した2009年、外国人は日本株を売ってきています。2021年岸田政権下の解散総選挙の後も、売ってきています。外国人の売りは、その時々の景況変化や国際情勢の影響も受けています。決して解散総選挙への評価だけで動いているわけではありません。ただし、解散総選挙も影響はしています。岸田政権が設立当初に表明した「金融所得への課税強化」「分配重視」の政策が、外国人投資家から見て「株式投資にネガティブ」ととらえられた可能性もあります。

 ただし、岸田首相が5月5日にロンドンでの講演で、「資産所得倍増プラン」を検討することを表明し「インベスト・イン・キシダ」と訴えたことで、外国人投資家の岸田政権を見る眼に変化が出た可能性があります。日本株は、以後、米国株が急落する中で、相対的に堅調に推移しています。

参院選後の日本株どうなる?

 最初の話に戻りますが、今回の参院選が政権基盤強化につながるか否かに、外国人は注目しています。かつての小泉政権・第二次安倍政権のように、強いリーダーシップを持つ政権になるか、あるいは、1年程度で首相がころころ変わる時代に戻るかに注目しています。今回の参院選の結果によって、岸田首相への求心力が高まるか否かが、大きく影響すると思います。

 ただし、今回の参院選の結果が日本株に与える影響は、短期的にはそんなに大きくない可能性もあります。というのは、今、外国人が注目しているのは、グローバルな投資環境の方だからです。

 米インフレショック、ウクライナショックが一段と深刻になるか、あるいは、不安が緩和する方向に進むかに注目しています。グローバルな環境の変化を見ながら、世界景気敏感株である日本株を買うか売るか見極めようとしているところです。

 その意味で、参院選の結果だけで外国人が日本株への投資スタンスをすぐに変えるとは考えられません。ただし、より長期の目線で見ると、参院選の結果および日本の政治の変化に、外国人の日本株投資スタンスは大きく影響すると考えています。

▼著者おすすめのバックナンバー

2021年10月7日:岸田政権への期待低下、外国人投資家の見る目は変わるか?

(窪田 真之)

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