物価高でも株高に転じた理由とは?あく抜け相場は続かない!?
トウシル / 2022年7月19日 14時14分
物価高でも株高に転じた理由とは?あく抜け相場は続かない!?
先週の日経平均株価は前週比271円高となり、米国の記録的な物価上昇にもかかわらず底堅く推移しました。今週7月19日(火)から22日(金)は米国の企業業績に対する不安感が台頭しそうです。
先週:米CPI加速も織り込み済み。新興国危機に注意!
今週は米国企業の2022年4-6月期の決算発表が本格化するほか、21日(木)には日本銀行、同日夜にはECB(欧州中央銀行)の金融政策が発表されます。
先週は13日(水)発表の米国6月CPI(消費者物価指数)、予想に反して前年同月比9.1%という衝撃的な伸びとなり、物価高が加速する最悪の結果でした。
※CPIに関して、詳しくはこちら:1分でわかる!インフレと株価の関係
しかし、この非常に悲観的な物価高に対しても、米国株は下げ渋りました。
多くの機関投資家が運用指針にするS&P500種指数は15日(金)に2%近く上昇。
物価高という悪材料はすでに織り込み済みと見なされ、あく抜けの反転上昇相場になりました。
インフレ加速で、7月27日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、1%の大幅利上げも危惧されています。
しかし、大幅利上げの連続で、金融引き締め期間が予想より短縮されるという希望的観測が、株価反転の理由のようです。
原油価格が一時1バレル100ドル割れするなど、落ち着きを見せたことも好材料でした。
ただ、週末16日(土)に中東訪問を終えた米ジョー・バイデン大統領は、人権問題で対立するサウジアラビアから原油増産の確約を得られず、18日(月)の原油価格は再び100ドル台に回帰。
また、16日(土)閉幕の*G20財務相会合も、ロシア問題を巡る西側諸国と新興国の対立のため、共同声明を採択できませんでした。
*G20…G7の7カ国にアルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、欧州連合・欧州中央銀行を加えた20カ国・地域
そんな中、経済危機に陥ったスリランカでは、国外逃亡していた大統領が15日(金)に正式辞任。
イタリアではマリオ・ドラギ首相が14日(木)に辞意を表明するなど、記録的な物価高で国内の政治・経済が混乱しています。
今後、G20の中でも経済力のない新興国がドル高による自国通貨安や物価の高騰で経済危機に見舞われるリスクも浮上してきました。
日本市場では14日(木)に、中国事業の回復で2022年8月期の業績を上方修正したファーストリテイリング(9983)が前週比11%以上も上昇。
同社は日経平均株価に対する寄与度が非常に高い銘柄のため、その業績回復は日本株全体にとっても明るい兆しです。
今週:アップルショックで下げ!日銀が波乱の芽に!?
日本が祝日だった18日(月)の米国株は大手金融機関ゴールドマン・サックス(GS)の予想を上回る決算で当初は勢いよく上昇。
しかし、午後に入って、時価総額世界一のアップル(AAPL)が来年、雇用や新規投資を抑制するという報道のせいで大きく反落しました。
米国の企業業績に対する不安感が台頭したこともあり、19日(火)の日本株は前週比横ばい前後で推移しそうです。
今週最大の注目は、21日(木)に日本と欧州で予定される中央銀行の金融政策発表です。
日銀は先進国では珍しく量的金融緩和策を続行すると見られています。
そうなると、今後も日米金利差の拡大が続くため、先週1ドル139円台に到達したドル/円レートが140円台に突入する可能性もあります。
ゆるやかな円安は日本株にとってポジティブです。
ただ、最近は国内の物価上昇を受け、日銀は金融政策を変更せざるをえないという思惑から、海外のヘッジファンドが日本国債に売りを浴びせ、日銀に戦いを仕掛けています。
新興国だけでなく、日本でも、インフレと金融緩和政策の矛盾が表面化し、際限のない円安や、その副作用の長期金利上昇でショックが発生するリスクがないとはいえません。
むろん、FRB(米連邦準備制度理事会)が7月に大幅利上げすることで、日米金利差の拡大もピークに達したという材料出尽くし感が広がり、円高に振れる可能性もあります。
急激な円高は、日本株にとってネガティブです。
続く欧州ECBの理事会では実に11年ぶりとなる0.25%の利上げが予想されています。一時、1ユーロ1ドルを割り込んだ、歴史的ユーロ安が収まるかどうかに注目です。
今週は米国企業の2022年4-6月期決算も本格化します。
今後の業績見通しを引き下げる企業が相次ぐと、あく抜け上昇しつつあった株式市場に暗雲が漂います。
19日(火)には、今年に入って株価が7割近く下落した映画・ドラマ配信のネットフリックス(NFLX)、20日(水)には同じく3割強下落した電気自動車のテスラ(TSLA)が発表予定です。
さすがに割安感から株価が反発してほしいところです。しかし、業績の落ち込みが深刻だと、18日(月)のアップルショックのような全体相場の急落につながるかもしれません。
21日(木)発表の日銀やECBの金融政策次第で為替相場が乱高下する可能性もあり、まだまだ油断ができない相場展開が続きそうです。
(トウシル編集チーム)
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