米景気、急降下。軟着陸かハードランディングか?タカ派FRBは景気後退も辞さず
トウシル / 2022年7月25日 7時45分
![米景気、急降下。軟着陸かハードランディングか?タカ派FRBは景気後退も辞さず](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushiru/toushiru_38179_0-small.jpg)
米景気、急降下。軟着陸かハードランディングか?タカ派FRBは景気後退も辞さず
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「【日本株】米景気、急降下。軟着陸?ハードランディング?タカ派FRBは景気後退も辞さず」
先週は、軟着陸の思惑で、米・日株ともに買い戻し
先週の日経平均株価は1週間で1,126円(4.2%)上昇し、2万7,914円となりました。米景気軟着陸(ソフトランディング)の期待が高まり、米国株が急反発した流れから、日本株にも外国人と見られる買いが入り、大きく上昇しました。先週の、日米独主要株価指数の騰落率は以下の通りです。
先週の日米独主要株価指数の騰落率:2022年7月18~22日
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/d/e/-/img_ded81865cf6889593f179b347690ff4d58780.jpg)
このコラムで毎週お伝えしている通り、世界の株式市場の最大の注目点は、急速に減速してきた米景気がソフトランディングするかハードランディングするか、に集中しています。先週は、ソフトランディングの可能性を感じ取った世界の投資家が米国株を急ぎ買い戻し、その流れで日本株も買い戻されました。
米国ナスダック・S&P500・NYダウの動き比較:2020年1月~2022年7月22日
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米6月の総合インフレ率(CPI・消費者物価指数前年比%)は9.1%となり、5月の8.6%より0.5%ポイント上昇しました。インフレに鎮静化の兆しがないことから、FRB(米連邦準備制度理事会)が7月26~27日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で大幅利上げを続けることがほぼ確実です。
こんな状況下で、米景気軟着陸を見込むのは早計かもしれません。ただし、足元、原油や穀物の先物下落、米景気の急減速、米長期金利の低下を受けて、先行きインフレがピークアウトする期待が出てきていて、先週の世界の株式はそれに反応した形です。
CPIは物価の遅行指数です。遅れていた小売価格への転嫁が進むことで、今、上昇が続いています。一方、物価の先行指標である、WTI原油先物はすでにピークアウトしている可能性があります。
WTI原油先物(期近):2020年1月~2022年7月22日
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/e/0/-/img_e0bf5bbbc32c1dab1c65424ae05b04ba56596.jpg)
世界景気減速が鮮明になってきたことを受けて、以下の通り、欧米の長期金利は低下しつつあります。
米・英・独・豪・日の長期(10年)金利推移:2007年1月~2022年7月(22日)
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/9/8/-/img_98141b561882fbbbc00a8d444932806b49489.jpg)
FRBが米景気をオーバーキルするリスクに注意
今週の注目は、7月26(火)・27日(水)に実施されるFOMCです。FRBは0.5%または0.75%の利上げをすると示唆しています。6月の米インフレ率が9.1%に上昇したことから、一部にFRBが1.00%の利上げをするとの思惑も出ました。
私は、FRBは事前に示唆した範囲で、0.75%の利上げをすると予想しています。それでも残る不安は、FRBが米景気をオーバーキル(必要以上に悪化させる)することです。ジェローム・パウエルFRB議長は、景気を犠牲にしてでもインフレを抑えることが重要との姿勢を鮮明にしています。今週は、FOMCを前に神経質な展開となりそうです。
米長期(10年)金利とFF金利、NYダウ推移:2018年1月~2022年7月(22日)
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/0/f/-/img_0fd169b8fc1a9b4b68cc58b385ceb28072944.jpg)
日本株へ、外国人の買いは続く?
過去30年以上、日本株を動かしているのは、外国人投資家です。その外国人投資家が7月4~8日の週に日本株を現物・先物合わせて1兆円超買い越したことから、7月の日経平均は22日までで5.8%上昇しています。米景気ソフトランディングの期待を受けて、世界景気敏感株の日本株を外国人が買い戻したことによります。
日経平均と外国人の売買動向(買越または売越額、株式現物と先物の合計):2021年1月~2022年7月22日(外国人売買動向は2022年7月15日まで)
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/d/2/-/img_d25e026e50c9257006a6994717971ab883844.jpg)
2021~2022年は外国人の日本株売買スタンスが定まらない状況が続いています。買い越し・売り越しがひんぱんに入れ替わっています。1兆1,834億円買い越した7月4~8日の次の週、7月11~15日は1,848億円の売り越しとなりました。
ただし、その次の週7月19~22日は、まだ統計が出ていませんが、外国人が買い越したと推定されます。日経平均が1,126円も上がっているからです。
ただし、このまま一本調子に外国人の買い、日経平均の上昇が続くとは考えられません。米景気の急降下から、このままハードランディングを不安視する声も強まっているからです。今週は、米景気後退への不安から外国人が日本株をまた売り越す可能性もあると思います。
割安な日本株を時間分散しながら買い増し
日本株の投資方針について、結論は毎回述べていることと変わりません。日本株は割安で、長期投資で良い買い場を迎えていると判断していますが、短期的なショック安が終わったとはまだ判断できません。
私は、米景気が軟着陸に向かう可能性が高いと思っていますが、ハードランディングのリスクも十分にあります。割安な日本株を、時間分散しながら買い増ししていくことが、長期の資産形成に寄与すると判断しています。
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(窪田 真之)
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