今週の日本株、ここからの「買い」は難しい?上値への意欲と注意したいムードの変化
トウシル / 2022年8月22日 12時10分
今週の日本株、ここからの「買い」は難しい?上値への意欲と注意したいムードの変化
日経平均、ここ3週間の上げ幅合計は1,000円超え
先週末8月19日(金)の日経平均株価は2万8,930円で取引を終えました。前週末終値(2万8,546円)比では384円高、週足ベースでも3週連続で上昇しています。ここ3週間の上げ幅の合計は1,000円を超えています。
図1 日経平均(日足)の動き (2022年8月19日取引終了時点)
あらためて、先週の日経平均の値動きを振り返ると、上の図1を見ても分かるように、一段高でスタートした後に、2万9,000円台をトライする展開となりました。とりわけ、17日(水)の取引では2万9,222円まで値を伸ばし、今年の高値(1月5日の2万9,388円)を射程圏内に捉える場面もありました。
週末にかけては、最近までの急ピッチな株価上昇による過熱感もあってか、売りに押されて2万9,000円台を少し下回って一週間の取引を終えています。ちょうど、前回のレポートでも指摘したように、「週初にもう一段高し、その後は上値が重たくなる」という展開でした。
図1を見る限りでは、「高値の更新意欲」を残している一方で、「上昇の一服感」も感じられつつあるため、今週は2万9,000円台の攻防から両者の綱引きによって方向感を探る展開が想定されます。
そこで、今週以降の値動きについてざっくりと探っていきたいと思います。
図2 日経平均(日足)の株価位置(2022年8月19日取引終了時点)
まずは、足元の株価位置についてです。上の図2は日経平均の日足チャートに、「ギャン・アングル(ピンク色の線)」と「フィボナッチ・リトレースメント(水色の線)」を重ね合わせたもので、両者ともに、昨年の高値(2021年9月14日)、と今年の安値(2022年3月9日)の下げ幅を基準に描かれています。
ごちゃごちゃしていて少し見づらいかと思いますが、先週17日(水)の高値(2万9,222円)は、ギャン・アングルの「8×1」ライン、フィボナッチ・リトレースメントの「76.4%戻し」あたりに位置していることが分かります。
チャートを過去にさかのぼると、1月5日や6月9日の時のように、株価はギャン・アングルとフィボナッチ・リトレースメントが交差する「節目」に差し掛かると、いったん上昇がストップする傾向が見られるため、ここから先の株価が上昇していくには、こうした一服感への意識を吹き飛ばす、材料や勢いが必要となりそうです。
今週の日経平均、2万9,500円超えも?
続いて、目先の上値や下値の目安についても考えていきます。
図3 日経平均25日移動平均線乖離率のボリンジャーバンド(2022年8月19日取引終了時点)
上の図3は、日経平均の25日移動平均線乖離(かいり)率の推移をボリンジャーバンド化したものです。
先週末19日(金)時点の乖離率はプラス3.42%でした。また、過去の傾向を見ると、乖離率プラス5%あたりがピークになることが多く、今回もこの考えに当てはめるのであれば、先週末時点の25日移動平均線(2万7,974円)からプラス5%乖離の2万9,372円が目先の上値の目安となります。
ちょうどこの株価水準は、先ほども紹介した1月5日の年初来高値(2万9,388円)や、フィボナッチ・リトレースメントの76.4%戻し(2万9,352円)とほぼ同じです。
もっとも、ボリンジャーバンドのプラス2σまでの上昇は十分にあり得るため、2万9,500円超えの場面も想定しておいた方が良さそうです。
続いて、下値の目安については、75日移動平均線乖離率のボリンジャーバンドで見ていきます(下の図4)。
図4 日経平均75日移動平均線乖離率のボリンジャーバンド(2022年8月19日取引終了時点)
19日(金)時点の75日移動平均線乖離率はプラス6.90%となっています。
先ほどの25日線の時と同様に、75日線についても乖離率プラス5%乖離が意識されやすい傾向があり、6月の時はプラス5%乖離で反落し、日経平均が高値をつけた昨年9月の時もプラス5%乖離のところでの攻防が見られた後、反落しています。
さらにチャートをさかのぼると、2020年11月から2021年3月までの時はプラス10%乖離まで進む場面も見られます。この期間の日経平均は2万6,000円台から3万円台まで一気に駆け上がっていた時期です。
最近の株価上昇がここでいったん終わるのか、それとも今後も続く大相場へとなっていくのかの判断は現時点では難しいところですが、少なくとも大相場に至るには、図4におけるプラス5%乖離ラインを維持する必要があります。
先週末19日(金)時点のプラス5%乖離は2万8,505円ですので、仮に今週の株価が下落していった場合には2万8,000円台半ばで踏みとどまれるかが注目され、ここが目先の下値の目安となりそうです。
米国株式市場、インフレのピークアウト感に期待
なお、「株価の節目で上昇が一服する」という展開は米国株市場でも見られます。
図5 米NYダウ(日足)の動き (2022年8月19日取引終了時点)
上の図5はNYダウ(ダウ工業株30種平均)の日足チャートになりますが、先週のNYダウは3万4,000ドルや200日移動平均線といった節目を超える場面があったものの、週末にこれらを下回って一週間の取引を終えています。
また、前回のレポートでも指摘したように、NYダウは6月17日の安値を底にして、さまざまなイベントをこなしつつ、順調に株価を回復させてきたわけですが、その背景にあるのが「インフレのピークアウト感」に対する期待です。
実際に、上の図5で大きな陽線が出現したところに注目すると、ミシガン大学消費者態度指数や、PCE(個人消費支出)などと重なるタイミングが多くなっていることが分かりますが、具体的には、ミシガン大学消費者態度指数における期待インフレの項目や、PCEのデフレーター(前年比)といったインフレ関連項目が低下傾向にあることが好感された格好です。
ちなみに、今週はこれら二つの経済指標がともに公表される予定です。
先週の米国株市場は、米小売り大手企業(ウォルマートなど)の堅調な決算や、7月開催分のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事録で「どこかの時点で利上げペースを落とすのが適切になる」という文言が公表され、今のところ、インフレのピークアウトに伴う利上げ減速で株式市場に資金が流入しやすくなるとの見方が強まったことが株高の原動力となりました。
そのため、今週はこうした見方に変化が生じるかが焦点になり、週末にかけて予定されている、ジャクソンホール会合(米カンザスシティー連邦銀行主催の経済シンポジウム)や、先ほどの経済指標の結果が注目されることになります。
このほか、決算が好感されたウォルマートについては、先日の段階ですでに業績見通しの下方修正を発表しており、決算の結果は積極的な買い材料というよりは、「思ったよりも悪くなかった」という程度の材料です。
今週は半導体関連企業のエヌビディアが決算を発表する予定ですが、エヌビディアも業績の下方修正を発表しているため、決算発表を機にウォルマートと同様に株高の反応となれるかも注目されそうです。
さらに、「利上げペースを落とす」というFOMC議事録の内容についても、前例のない急ピッチな利上げを開始してから半年が経過するタイミングで「いったん経済への影響を見極めたい」というのがFRB(米連邦準備制度理事会)のホンネだとすれば、足元で織り込んでいる金融政策の方針転換への期待はやや先走り感があるかもしれません。
需給的には株価の一段高の可能性は十分にあるものの、その後の展開を考えると、足元の株高の前提となっている、「インフレのピークアウト」、「米金融政策の緩む手綱さばき」、「景気・企業業績悪化のソフトランディング」に対する見方に揺らぎが生じると、市場のムードも変わってくることが考えられるため、今週は少し慎重な姿勢で相場に臨む必要がありそうです。
(土信田 雅之)
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