PBRで銘柄選び。「1倍割れ」が割安な理由とは?
トウシル / 2022年9月15日 6時0分
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PBRで銘柄選び。「1倍割れ」が割安な理由とは?
有名な指標の一つであるPBRとは?
株式投資の入門書や教科書には、PER(株価収益率)や配当利回りなどと共に必ず紹介されている「PBR(株価純資産倍率)」。でも、PERに比べるとだいぶ影の薄い存在となっているのも事実です。
今回はあまりに有名であるにもかかわらず注目度が低いPBRについて解説するとともに、PBRを用いた銘柄選びのポイントや注意点をお伝えしたいと思います。
PBRとは、株価がBPS(1株当たり純資産)の何倍の水準かを表したものです。
例えば株価が2,000円、BPSが1,000円の銘柄であればPBRは2,000円÷1,000円=2倍、株価が500円、BPSが1,000円の銘柄であれば、PBRは500円÷1,000円=0.5倍となります。
そしてPBRの説明でよくいわれるのが、「PBRが1倍を割れると割安」という点です。
このこと自体は聞いたことがあるという方も多いと思います。では、なぜPBRが1倍を割れると割安なのか説明できますか?
なぜPBRが1倍割れだと割安なのか説明できますか?
PBRが1倍を割り込むということは、株価がBPSよりも安くなっている状態を意味します。
株主には議決権(株主総会の決議に参加できる権利)や配当請求権(配当金を受け取る権利)などさまざまな権利がありますが、その中の一つに「残余財産分配請求権」というものがあります。これは、もし会社が解散したとき、会社にある財産は株主に分配され、これを受け取ることができるという権利です。
そして残余財産とは、理屈上では純資産のことを指します。
ですから、株価が500円でBPSが1,000円のケース(PBR0.5倍)でいえば、解散したら1,000円を受け取れる会社の株を500円で買うことができるということになります。
PBRが1倍割れというのは、上のケースでいえば、1,000円を受け取れる会社の株価が1,000円を割り込んでいる状態です。だからPBR1倍割れは特に割安といわれているのです。
PBR1倍割れ銘柄が多数存在するのはどうしてか
では、PBRが1倍を割れている銘柄を探して投資すれば株価は上昇するかと言えば、そうはならないというのが現状です。
現在、PBRが1倍割れとなっている銘柄は1,900銘柄近くあります。これは上場している銘柄の半分に当たります。筆者の感覚では、PBRが1倍割れとなっている銘柄は増加傾向にあると感じています。
このように、PBRが1倍を割れていれば教科書的には割安だし、理屈的にもそうなのですが、実際はPBR1倍割れだからといってその銘柄が買われるという状況には程遠いのが現実です。
なぜこのような状態になっているのかは、いくつかの要因があると思いますが、最大の理由は、多くの投資家がPBRの高低を銘柄選びの基準にしていないからだと考えられます。
毎年増収増益が続く銘柄や、利益をより多く稼ぐ銘柄の株価が上昇することが多いという事実からは、資産価値を基にした企業価値よりも、利益を基にした企業価値を重視して株価が形成されているといえます。
また、実際に上場企業が解散して、財産を株主に分配するということはめったになく(筆者は株式投資を25年間していますが1件しか知りません)、「解散したら純資産の額を株主が分配してもらえる」ということ自体が絵に描いた餅である、という点もあります。
じっくりと時間をかけて資産形成したいなら
では、PBRを用いた銘柄選びは全く役に立たないかと言えば、決してそんなことはないと思います。ただし、近年のPBR軽視の傾向からみると、低いPBRが是正されるためには、かなりの時間がかかる可能性がある点は注意すべきです。
PBRは純資産に企業価値を見いだすものですから、例えPBRが低くても、赤字続きだったり、工場閉鎖・リストラなどで将来大きな赤字が見込まれる銘柄は投資対象としない方が無難でしょう。赤字により純資産が減少すれば、その分PBRも上昇して割安とは言えなくなってしまうからです。
ですから、純資産が今後増加することが見込まれる銘柄を選択するのがよいでしょう。毎年しっかりと利益を上げることができている銘柄であれば、純資産も年々増加していきます。
例えば現時点でBPSが1,000円、株価が500円の銘柄があるとします。PBRは0.5倍です。
もし今後10年間の利益の蓄積により、BPSが2,000円になれば、株価が500円のままだとPBRは0.25倍に低下します。
でも現時点でこの銘柄はPBR0.5倍という評価をされているわけですから、この評価が変わらないのであれば、BPSが2,000円になれば、株価もPBR0.5倍の水準である1,000円にまで上昇しているはず、という考え方です。
実際にこのようになるかは分かりませんが、理屈上純資産が2倍になれば企業価値も2倍になるのは事実です。また、この間に利益が伸びるなどして株価が大きく上昇することもあるかもしれません。
PBRが低く、かつ毎年利益を上げている銘柄であれば、すでに現時点で割安ですから株価が大きく下がる可能性も低くなります。
成長株投資のように、成長が止まったら株価が5分の1、10分の1になるのは怖い、それならば株価の大きな上昇は見込めなくても、じっくりのんびりと資産形成をしていきたい…。そんな方は低PBR銘柄への投資も一つの選択肢だと思います。
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(足立 武志)
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