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米国株は下値固め?リーマンショックとの違いは

トウシル / 2022年10月28日 7時0分

米国株は下値固め?リーマンショックとの違いは

米国株は下値固め?リーマンショックとの違いは

米国株はいったん下値固めの動きに

 年初から先行き不安を織り込んで軟調だった米国株は、いったん下値固めの動きを示しています。図表1は、S&P500種指数と長期的なテクニカル・サポート(下値支持線)として意識されている200週移動平均線の推移を示したものです。

 S&P500は200週移動平均線(3,612ポイント)を一時割り込みましたが、徐々に下値を固め10月に入ってからは+6.8%の3,830ポイントに反発しています(26日)。

 この背景には、(1)来週開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)での大幅利上げ(+0.75%)に続き、12月FOMCに向け利上げ幅縮小が議論されるとの期待、(2)第3Q(7-9月期)決算発表の結果が予想よりも悪くないとの見方、(3)S&P500の予想PER(株価収益率)が16倍台まで低下したことによる割安感、などが挙げられます。

(1)に関しては、先物市場で試算されるFF金利見通しによるターミナルレート(利上げ打ち止め水準)は5%弱とみられ、政策金利見通しにめどが付くことが債券の利回り安定に寄与する可能性があります。

(2)に関しては、S&P500構成企業(500社)のうち189社が決算発表を済ませた時点で、売上高は前年同期比+9.5%増収、純利益は同3.2%減益となっており、ポジティブサプライズ(事前予想に対する発表値のプラス率)は、売上高が+1.2%、純利益が+0.9%となっています(26日)。

 ただ、S&P500の当面における上値抵抗線は4,000ポイント程度と想定され、短期的な戻り売りを消化する必要もありそうです。

<図表1:S&P500種指数の下値支持線と上値抵抗線のめど>

出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2020/1/1~2022/10/26)

リーマンショックでは信用市場が急悪化し流動性もひっ迫

 今年の米国株の下落途中では、「リーマンショック級の株価暴落」を恐れる悲観論が浮上してきました。そこで、過去の「弱気相場」(高値から2割以上の下落)での状況と今回の株価下落場面を「信用市場の悪化度合い」と「ドルの調達コストの上昇」の両面で比較したいと思います。

 図表2は、ハイイールド債(高利回り社債=ジャンク債)市場の信用スプレッドと、ドルの調達コストを示す「TEDスプレッド」の水準を、2008年(金融危機=リーマンショック)や2020年春(コロナ・パンデミック)当時と比較したものです。

 TEDスプレッドとは、LIBOR(銀行間取引)3カ月物金利から3カ月物米国短期国債金利を差し引いた値で、信用不安や資金繰り不安が高まるとドル(キャッシュ)需要が強まりTEDスプレッドは上昇します。

 ハイイールド債の発行企業には「非投資適格」に格付けされた企業が多く、2008年や2020年は事業継続の危機に直面しました。特にリーマンショック時(2008年)は、金融機関を中心に信用危機と流動性危機が同時的に増幅し、このことが株価暴落につながりました。

<図表2:米国市場で警戒されている信用リスク悪化と流動性危機>

出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2007/1/1~2022/10/26)

 図表2でみるとおり、最近のハイイールド債の信用スプレッドもTEDスプレッドも2008年の金融危機時と比較するとその上昇(悪化)は限定的にとどまっています。2008年当時は、投資銀行を中心に金融機関が経営破綻の危機に直面しましたが、今年の株価下落の要因は信用危機とは言いにくいと思われます。

 ただ、今後景気の鈍化が深刻化し、経営破綻やデフォルト(債務不履行)が続発する事態となれば、貸し倒れリスクに備えてきた金融機関も経営リスクに晒される可能性は否定できず注視を怠るべきではないでしょう。

来週のFOMCで「利上げ減速期待」が広まるか

 図表1で示したように、米国株が底堅い動きに転じた要因として、当面の政策金利(FF金利)について、「12月FOMCでの利上げ幅縮小」が意識されはじめたことが挙げられます。

 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙は21日、FRB(米連邦準備制度理事会)が11月1日と2日に開催するFOMCで0.75%の追加利上げを決定する際、次回FOMC(12月13~14日開催)で「利上げペースを緩める可能性を巡りどのようにシグナルを発するべきかを討議する公算が大きい」と報じました。

 つまり、4会合連続での大幅利上げを経て、(今後のインフレ動向や景気動向次第で)市場が「FRBのピボット」(ピボット=金融政策の軸足=利上げペース)を変更させる観測が広まったということです。

 図表3は、政策金利の行方に敏感とされる米国の短期債金利(2年国債利回り)、長期債金利(10年国債利回り)、政策金利(FF金利の誘導目標上限)、米国株(S&P500)の推移を示したものです。来週開催されるFOMCで4.0%に引き上げられるであろうFF金利は債券市場利回りと接近する可能性が高まっています。

 12月FOMCでの利上げ幅縮小が視野に入り、債券市場金利と政策金利が並ぶか逆転するようなことがあれば、「オーバーキル」(過度の景気抑制)効果を見込み、債券利回りの低下がみられるかもしれません。

 これは、2018年後半に下落した米国株が同年12月に底入れした環境と似た事象にみえます。参考までに、翌年の2019年にS&P500は28%上昇しました。2023年は「不景気の株高」が期待できるかもしれません。

<図表3:来週のFOMCでFF金利は4.0%に引き上げられる見通し>

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2021/10/1~2022/10/26)

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(香川 睦)

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