金(ゴールド)急反発!さあリベンジ開始!?
トウシル / 2022年11月15日 5時0分
金(ゴールド)急反発!さあリベンジ開始!?
「反撃の狼煙(のろし)」が出現!?
足元、金(ゴールド)相場が騰勢を強めています。ウクライナ危機勃発直後に瞬間的に2,000ドルをつけた後、下落の一途をたどっていましたが、11月に入り、急反発しています。急反発する金(ゴールド)のチャートは、「反撃の狼煙(のろし)」が上がったかのような形状をしています。(狼煙は、モノを焼いて上げた煙によって、遠くに情報を知らせる手段)
図:NY金(ゴールド)先物の推移 単位:ドル/トロイオンス
「反撃の狼煙が上がった」とは、劣勢に立たされていたものの、形勢逆転に成功し、反撃が始まったことの例えです。ウクライナ危機という「有事」、急激な金融引締めによる「株安」という、金(ゴールド)相場を押し上げる材料があったにもかかわらず、下落してきた金(ゴールド)相場が、反撃に転じつつあるわけです。
また、他の銘柄と比べても、金(ゴールド)の騰勢が強いことがわかります。10月末と11月11日を比べると、ドル建ての金(ゴールド)は7.8%上昇、円建ての金(ゴールド)は2.8%上昇しました。その他、同じ貴金属の銀、プラチナ、パラジウムも上昇しました。貴金属の中で最も人気がある金(ゴールド)が、他の貴金属のけん引役になったと、考えられます。
図:主要銘柄の騰落率(2022年10月31日と11月11日を比較)
振り返ってみれば、この間、「欧州50」「上海総合指数」「NYダウ先物」「日経225」など、世界各地の主要株価指数が上昇しました。「株高・金(ゴールド)高」だったわけです。
今は、株・有事よりも「ドル」の動向が重要
しばしば、「株価が上昇している時、金(ゴールド)価格は下落する傾向がある」と耳にしますが、足元、そのような値動きにはなっていません。また、「有事(戦争や大規模な何らかの危機)が起きた時、金(ゴールド)価格は上昇する傾向がある」とも言われますが、足元、やはりそのようにはなっていません。
現代の金(ゴールド)相場が、以前のようなシンプルな作りでないことは、ウクライナ危機勃発後に下落したことが証明してくれています。「有事の強弱」だけ、「株との比較」だけで説明できるのであれば、ウクライナ危機勃発後、金(ゴールド)相場は大暴騰しているはずです。(有事と株安の相乗効果)
以前の「侵攻半年、金(ゴールド)相場高止まりは長期化へ」で述べたとおり、短中期的な金(ゴールド)価格の動向を考える上で必要なことは、「有事ムード」、「代替資産(株の代わり)」、「代替通貨(ドルの代わり)」の「三つの側面から同時に観察する」ことです。ゆめゆめ、わかりやすいから、直感で、などの理由でどれか一つだけを切り取ってはいけません。
図:ドル指数、ドル建て金(ゴールド)、CRB指数の推移(2022年6月1日を100)
上のグラフのとおり、今年6月から10月まで、金(ゴールド)相場が下落したのは、「有事ムード」と「代替資産」起因の上昇圧力を、「代替通貨」起因の下落圧力が上回ったためです。上昇圧力は確かに存在した、しかしそれを上回る下落圧力が存在した、だから(有事でも株安でも)金(ゴールド)相場が下落した、という説明です。
11月に入り、金(ゴールド)相場が急反発しています。株高でも金(ゴールド)相場が急反発しているのは、株高由来の下落圧力を上回る上昇圧力が存在しているためです。上昇圧力は主に「ドル安(代替通貨)」由来です。
市場は「ドル安」の兆しを創造した
11月に入り、株高の中、金(ゴールド)相場が反発していることを確認した上で、その背景に「ドル安」が存在すると書きました。
「ドル安」は、ドル建てのコモディティ(国際商品)の価格上昇要因の一つです。ドル安時、ドル建ての商品が、他の通貨建ての同一商品と比べて、割安に映るためです。
先ほどのグラフ「ドル指数、ドル建て金(ゴールド)、CRB指数の推移」で、11月に入り、金(ゴールドと同様)コモディティ市場の総合的な値動きを示す指数の一つ、CRB指数も反発していることを確認することができます。
また、金(ゴールド)は、ドルと同様、「世界のお金」という側面を持っています。貿易の決済時に最も多く使われる通貨「米ドル」と、世界各地でお金として用いられてきた歴史を持つ「金(ゴールド)」。片方に注目が集まる時、相対的にもう片方の注目度が下がることがあります。
「ドル安」は、「代替通貨」に関わる二つの経路(他通貨建て金(ゴールド)との比較、米ドルとの比較)で、金(ゴールド)相場に上昇圧力をかける要因であると、言えます(逆にドル高時は、二つの経路で下落圧力がかかる)。
こうした背景があるため、足元、株高でも金(ゴールド)相場は反発しているのです。(株高(代替資産由来の下落圧力)よりも、ドル安(代替通貨由来の上昇圧力)の方が、影響が大きい。ウクライナ危機由来の有事ムードも一定の上昇圧力をかけている)
その「ドル安」はどこからきたのか、引締め一辺倒の米国の金融政策に対抗するように、「市場が緩む兆しを創造」したことが大きいと、考えられます。
以下のグラフは、先物市場をもとに作られたFF金利(Federal Funds Rate米国の代表的な短期金利。米国の政策金利)見通しです。2022年12月から2024年1月までの、合計10回のFOMC(米連邦公開市場委員会)時点での金利見通しの推移を示しています。そしてその上限が、「ターミナルレート(金利上昇時の最高到達地点)」の見通しです。
図:先物市場のFF金利見通し(市場予想平均)
利上げは来年5月まで続くものの、2022年6月ごろから行われてきた「三倍速(通常の0.25%の3倍にあたる0.75%)」と揶揄(やゆ)される急速な利上げが起きないことや、来年半ばにターミナルレートが下がること、来年後半に利下げが始まることなどが、「見通されて」います。
米CPI(消費者物価指数)が、事前予想よりも弱かったことを受け、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ方針が緩むとの見方が強まり、「見通しの緩和」が、さらに、進みました(CPI発表前の11月9日よりも発表後の10日のほうが緩和的)。先日のCPIを機に楽観的見通しが加速したと言えます。
「米国の金融政策見通しが緩和方向に加速していること」が、ドルの先安観を強めているとみられます。そしてそれを受け、金(ゴールド)相場の反発傾向が鮮明になっています(反撃の狼煙上がる)。今後もこのような「見通しの緩和」が進めば、ドルのさらなる下落、同時に金(ゴールド)相場のさらなる反発が起きる可能性があります。
「まし」がカギ。「最悪回避」に市場は満足
先述のFF金利の予想は、市場が作り出した予想であり、実際のところ、その通りになるかはその時になってみなければわかりません。
足元の、緩和傾向にある予想と、各種経済指標から読み取れる実態を見比べて言えることは、市場は「最悪の状況が回避されること」、つまり「まし」な状態が続くことを期待しているのではないか、ということです。(市場は、自らが作り出した妄想にすがっているとも言える。「実態」がよくないことの裏返しか)
「まし」の具体例は、事前予想に比べて「まし」なCPI、三倍速の利上げ(0.75%の利上げ)に比べて「まし」な利上げ、です。今のところ、市場はこれで満足しているように見えます。
図:来年前半までのコモディティ(商品)市場を取り巻く環境(筆者予想)
「ドル高」修正強まれば、リベンジ本格化か
こうした、「まし」をよしとするムードが続けば、「ドル安・金(ゴールド)をはじめとしたコモディティ高」が続く可能性があります。金(ゴールド)においては、「反撃の狼煙」がより高く上がる可能性があります。(短期的には1,800ドル回復もあるか)
くしくも、先月の「金(ゴールド)復活は11月上旬!?」で、「ドル」の動向次第では、短期視点の反発が起きる可能性がある(特に金(ゴールド)は)と考えます、とした点が、現実のものになりつつあります。
図:NY金(ゴールド)先物の推移 単位:ドル/トロイオンス
引き続き、市場がどれだけ「まし」を重要視するか(市場の金利見通しと各種経済指標が示す実態にどれだけ差が生じるか、3倍速でない利上げを市場がどれだけ好感するか)、ドルの動向、そしてこれらから影響を受ける金(ゴールド)相場の動向に、注目したいと思います。
[参考]貴金属関連の具体的な投資商品例
※級は筆者の主観
初級:純金積立、投資信託(当社では、楽天ポイントで投資信託を購入することが可能)
純金積立・スポット購入
ステートストリート・ゴールドファンド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
三菱UFJ 純金ファンド
UBSゴールド・ファンド(為替ヘッジあり)
中級:関連ETF、関連個別株
SPDRゴールド・シェア(1326)
NF金価格連動型上場投資信託(1328)
純金上場信託(金の果実)(1540)
NN金先物ダブルブルETN(2036)
NN金先物ベアETN(2037)
SPDR ゴールド・ミニシェアーズ・トラスト(GLDM)
iシェアーズ ゴールド・トラスト(IAU)
ヴァンエック・金鉱株ETF(GDX)
バリック・ゴールド(GOLD)
アングロゴールド・アシャンティ(AU)
アグニコ・イーグル・マインズ(AEM)
フランコネバダ・コーポレーション(FNV)
ゴールド・フィールズ(GFI)
上級:商品先物、CFD
(吉田 哲)
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