小さな一歩が幸せへ繋がっていく『インベスターZ』番外編―第5話
トウシル / 2022年12月23日 11時0分
小さな一歩が幸せへ繋がっていく『インベスターZ』番外編―第5話
*この記事は2022年12月23日に公開された記事です。
『ドラゴン桜』などの著書で知られる三田紀房氏。連載当初から大きな話題となった投資マンガ『インベスターZ』は、中学1年生の主人公・財前孝史が、ひょんなことから投資知識を身につけ、数億円の資産を運用しながら社会と、そして自分の人生と深くかかわっていく壮大なマンガです。
トウシルでは、この『インベスターZ』の番外編の書下ろしマンガを短期連載。さえない人生を予感して腐っている先輩に、財前孝史は何を説くのか…。先輩と財前の対話から、何から手をつけていいのかすら分からない若者が、まず何をすべきか、何を考えるべきかが見えてきます!
全5話、不定期・金曜日に更新中です。要チェック!
小さな一歩が幸せへ繋がっていく
5話完結です!ありがとうございました!
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高校の家庭科に加わった金融教育に合わせ、「人生を変える!令和の投資教育」として始まった、投資マンガの金字塔『インベスターZ』の番外編。
第5回目は、いよいよ最終回です。
この企画に関わっていただいている元トレーダーで社会的金融教育家の田内学さんに、「まず転がしてみる」について詳しくお話をうかがいました。
「悩んだらきつい方を選べ」
高校時代の数学の先生が、授業の最後に話した言葉で、僕もいつも心がけていることです。悩むということは、本当にやりたいのはきつい方。きついから、選ぼうか悩むんじゃないの?と。だとしたら、答えは決まってるだろうと。
大きな雪だるまを目指すには、まずは、転がしてみる。
そこから、全ては始まります。
経験が価値になる
皆さんが動く前に悩むのはどういうときでしょうか?
「しんどいな、面倒だな」みたいなふわっとした理由で迷うのだとしたら、一歩踏み出してみてほしい。一歩踏み出すことで、見えることがあるからです。
僕が仕事を辞めてからしばらく、あまり気力が湧かずにいた時期がありました。励まそうと声をかけてくれた友人の、何気ない「やりたいことないの?」の一言。この時、誰にも話したことのなかった「経済の本を書きたい」という夢を、初めて言葉にしました。
最初の小さな雪玉を作った瞬間でした。
すると、目の前の友人が「大学時代の友だちが編集者をやってるけど、紹介しようか?」と、思いがけない返事をしたのです。
こうして、編集者の佐渡島庸平さんと会うことになり、雪玉を少しずつ転がし始めました。
お会いして、トントン拍子に本を作り始めた……なんてことはなくて、漫画「ドラゴン桜2」の制作を手伝ったり、高校の「公共」の教科書作りをしたり、最初は思ってもみなかった経験をたくさんしました。
もし自分の本を作ることにはたどりつかなかったとしても、「編集者はこんな考えをするんだ」「漫画はこうやって作られるんだ」と、良い経験だったと思えていたでしょう。
「何かに生かせそうだから」「作った雪だるまを誰かに売ってもうけよう」ではなくて、「雪だるまを作ることそのものが楽しい!」。この感覚を持ちながら、いろいろな経験をしていく。
やるかやらないか迷って、やってみたけど、意味がなかったな、結果に結びつかなかったな、と思うこともあるかもしれません。でも、経験して得たことは、きっと自分の財産になっていくんだと思います。
自分にとっての幸せを考える
自分にとっての幸せはどんなことで、そこへつながる道はなんだろうと考えていく。迷った末にやらない方を選択すると、道はつながっていきません。行動した末に、実現できる可能性が0.1%しかなかったとしても、やらなかったらゼロなんです。
同時に、ただ動くのではなくて、動きながらどんな人生を歩みたいかを考えることが大切だと思います。
僕もいた投資の世界では、成果目標やゴールが細かく設定されていましたが、人生のゴールは、こういう目標とは少し違うのではないでしょうか。
「月収◯◯万円!」「投資で◯◯万円達成したい」「老後のために貯蓄を◯◯円」など、何かを達成することだけを目標にしていても、達成できなかったとしたら「今まで歩いてきた道はなんだったんだろう…」と虚しさを感じてしまうかもしれません。
この漫画の主人公が、株で稼ぐことに成功したとします。でも、友だちとの時間や部活、行事など学生時代の時間を全て、株の数字だけを追いかけることに費やしたら、どうなっていくでしょうか。気づいたら、彼の周りには友人がいなくなってしまっているかもしれません。
そもそも、第1回でもお話ししたように、投資の上がり下がりの予測を当てるのは、プロでも本当に難しいことですから。
「雪を見に行きたい」と思ったとします。北か南のどちらかに歩くとしたら、やはり最初は北に進む人がほとんどでしょう。歩きながら、人や情報に触れていく。
北海道に行くか、青森に行くか。アラスカもいいかもしれない。鈍行列車に乗ってみようか。一つずつ選んで行動していくと、人生の楽しみが増えていく。自分の思い描いた未来に向かって、どんな道を選ぶとしても、その道筋が楽しければ、想像していたゴールと違ったとしても、充実感があるんだと思います。
自分がこっちだと信じた方向に進み、いろんな経験をする。いろんな経験を積み重ねる中で、自分の中での「幸せ」も見えてきて、気づいたら、そこにたどり着くはずです。そして、なにより、その経験自体も「幸せ」なんです。
道を進むためにはお金が必要になるから、投資でお金をもうけることはあっても、投資でお金をもうけること自体を進むべき道にしては意味がありません。
若い皆さんには、投資でお金を増やすことに時間を使うよりも、いろいろな経験をして充実した時間を過ごすことが幸せにつながるはずです。はっきりとはしていなくてもいいから、まずは雪だるまを転がしてみながら、自分がどんな未来を目指したいのか、考えてみてほしいなと思います。
田内学(たうち・まなぶ)
『お金のむこうに人がいる 元ゴールドマン・サックス金利トレーダーが書いた 予備知識のいらない経済新入門』著者。
1978年生まれ。東京大学入学後、プログラミングにはまり、国際大学対抗プログラミングコンテストアジア大会入賞。同大学院情報理工学系研究科修士課程修了。
2003年ゴールドマン・サックス証券株式会社入社。以後16年間、日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーディングに従事。日銀による金利指標改革にも携わる。2019年退職。現在は、社会的金融教育家として、学生や社会人向けの講演・執筆活動や財政政策などの政策提言を行なっている。
Twitter:@mnbtauchi
note:note.com/mnbtauchi/
Instagram:@tauchimnb
(構成:片岡由衣)
『インベスターZ』とは!
『モーニング』(講談社)にて2013年28号から2017年29号まで連載され、100万部のベストセラーとなった投資マンガ。作者は『ドラゴン桜』などでも知られる三田紀房氏。
主人公の財前孝史は中学1年生。北海道の進学校である道塾学園に満点かつトップの成績で入学する。野球部に入ろうとしていた財前は、校内の図書館奥の地下室に連れこまれる。
秘密の地下室で麻雀をして遊んでいた先輩たち5人は、なんと、学費を無料にするため、道塾学園の資産3,000億円を投資で運用し、学校の運営資金を稼ぎ出す「投資部」の面々だった!
成績トップの入学者を入部させる、という代々のしきたりに従って、半ば無理やり、得体のしれない「投資部」に所属することになった財前。投資のイロハを先輩から教わりながら、自分なりのロジックで投資を開始する。しかし、道塾学園の創設者一族である、アメリカ在住の高校2年生・藤田慎司と口論になり、投資部の存続を賭けた三番勝負を行うことに。最初の勝負はFX(外国為替証拠金取引)取引。元手は1億円、期間は3日間で、元手を増やしたほうが勝ち、というルールだが、アメリカ在住で為替通、しかもFX取引に強い慎司に、はたして財前は勝利することができるのか!?
(トウシル編集チーム)
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