先取り!米国株の「ダウの犬」投資戦略。高配当上位10銘柄の成績は?
トウシル / 2022年12月23日 7時49分
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先取り!米国株の「ダウの犬」投資戦略。高配当上位10銘柄の成績は?
米国市場が直面する景気減速懸念
米国株式は今週、金融引き締めと景気の先行きを巡る思惑で乱高下する動きをみせています。前週にFRB(米連邦準備制度理事会)やECB(欧州中央銀行)が予想通り利上げ幅を(0.75%から)0.5%に縮小した一方、パウエルFRB議長もラガルドECB総裁も記者会見で「継続的に利上げすることが適切である」とのタカ派的な方針を表明しました。
また、複数のマクロ指標が市場予想を下回ったことで、欧米の景気減速懸念が高まったことが株価の上値を抑えました。
図表1は、米国のコンファレンスボード(民間調査機関)が発表している景気先行指数とFRBが発表しているマネーサプライ(M2)の前年同月比伸びを示したものです。景気先行指数の伸びは▲2.7%(10月)とすでにマイナス圏入りしており、景気の減速傾向を予兆しています。
2020年のコロナ・ショック直後にもマイナス圏となりましたが、当時はFRBと財務省が金融緩和と資金供給を拡大。2020年後半はマネーサプライが20%を超える伸びとなり、景気と株価の反転回復を支えました。
ただ、現在のマネーサプライの伸びは、金融引き締めの影響を受け低調となっています。インフレ動向を示すCPI(消費者物価指数)の前年同月比伸びは5カ月連続で減速を示しています(11月)。12月に入っての株価調整は、金融当局に対して「早期の利上げ打ち止め」を催促している動きにもみえます。
<図表1>金融引き締めで米国景気は減速基調
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/4/1/-/img_41111db3559dba87bb22c27715b272c818973.png)
「ダウの犬」投資戦略にあらためて注目
2022年は株価が平均的に下落したことで、個別銘柄の予想配当利回りは総じて上昇しています。そうした視点を含め、来年に向けた投資戦略として「ダウの犬」投資戦略にあらためて注目したいと思います。
「ダウの犬」(Dogs of the Dow)とは、1990年代に米著名投資家(マイケル・B・オヒギンズ)が著書の「Beating the Dow」(ダウ平均に勝つ)で紹介したシンプルな投資手法のことです。
その手順は、(1)年末時点でダウ平均(ダウ工業株30種平均)に採用されている30銘柄から「配当利回り」の高い順に上位10銘柄を選別する。(2)選別した10銘柄それぞれに均等額分散投資を行い、そのまま1年間保有する。(3)1年後の年末に、再びダウ平均採用銘柄から配当利回りの高い上位10銘柄を選別して均等額分散投資を繰り返す(リバランスする)というもの。
こうして、「1年に一度の売買」を年末もしくは年始に行うのみで、10銘柄から比較的利回りの高い配当を得ていくことになります。
<図表2>ダウ平均・高利回り10銘柄はダウ平均よりも優勢
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/e/b/-/img_eb93a116adab7e6f0a0d1b59508d9d4a19747.png)
図表2は、配当利回りの高さで選別した10銘柄の総収益を示す「ダウ平均・高利回り10銘柄指数」(Dow Jones High Yield Select 10 Index TR)とダウ平均の総収益の推移を比較したグラフです。今年は「ダウの犬」投資戦略で選別した銘柄群がダウ平均に対して優勢であったことがわかります(12月21日時点)。
投資戦略というと、難しそうに聞こえるかもしれませんが、「ルール」(手順)通りに米国で「ブルーチップ」と呼ばれる優良株(ダウ平均採用銘柄)の中から、配当利回りが高い10銘柄を選ぶことを毎年繰り返すだけとなります。実際、年に一度の売買ですので、売買コストも抑制できる現実的な投資手法とも言えるでしょう。
年末を控え「ダウの犬」銘柄を先取りする
上述した手順に従い、ダウ平均採用銘柄から「配当利回り」が高い順番に10銘柄を選別した一覧が図表3となります(21日時点)。それぞれの「配当利回り」は、「来期予想配当(市場予想平均)÷直近株価」で算出したものです。配当利回りが比較的高い銘柄群の中には、予想配当に比べて株価の出遅れが顕著である銘柄が多いと言えます。
こうした銘柄を選別してポートフォリオを構築することで、「配当利回りを重視した米国優良株への分散投資」を実践することが可能です。もちろん、個別銘柄の株価は年末までに多少上下する可能性がありますが、図表3で示した上位10銘柄の「顔ぶれ」に大きな変化はないと見込まれます。
2023年の株式を取り巻く環境には景気後退懸念、ウクライナ戦争、米中対立激化など不透明な要因が多々受け継がれるでしょう。株価の値上がり期待に確信を持ちにくい中、2022年と同様に「配当利回りを重視したバリュー投資」が2023年も優勢を続ける可能性は高いと考えられ、「ダウの犬」投資戦略にあらためて注目したいと思います。
<図表3>「ダウの犬」投資戦略を先取りしてみる
ダウ平均の高配当利回り銘柄(予想) | ▼ | ||||
ティッカー | 銘柄名 | 直近 株価($) |
今期予想 配当($) |
来期予想 配当($) |
来期予想 配当利回り |
---|---|---|---|---|---|
VZ | ベライゾン・コミュニケーションズ | 37.78 | 2.58 | 2.63 | 6.97% |
DOW | ダウ | 50.67 | 2.80 | 2.87 | 5.66% |
INTC | インテル | 26.83 | 1.45 | 1.47 | 5.48% |
WBA | ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス | 38.60 | 1.96 | 2.02 | 5.22% |
MMM | 3M | 123.46 | 5.96 | 6.23 | 5.05% |
IBM | IBM | 142.14 | 6.65 | 6.82 | 4.80% |
CVX | シェブロン | 174.70 | 5.69 | 5.98 | 3.42% |
CSCO | シスコシステムズ | 47.66 | 1.54 | 1.59 | 3.33% |
JPM | JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー | 132.16 | 4.01 | 4.15 | 3.14% |
AMGN | アムジェン | 266.26 | 7.75 | 8.20 | 3.08% |
*ダウ平均採用銘柄のうち来期予想配当利回りが高い順に10銘柄のみを一覧にしたものです。 (出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2022年12月21日) |
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(香川 睦)
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