ドル円の売買タイミングはこう捉えろ!好況不況の移ろいに注目
トウシル / 2023年1月12日 7時30分
ドル円の売買タイミングはこう捉えろ!好況不況の移ろいに注目
円安?円高?どう判断したらいい?
今後のドル/円の為替相場について、皆さんはどのように動いていくとお考えでしょうか?
いろいろ情報を集めていくと、これから円安になるとの見方や、円高に進むとみる真逆の意見があり、聞けば聞くほど分からなくなってくるという方も多いのではないでしょうか?
そして、円安、円高の両方が考えられるため、自分が買うべきなのか、売るべきなのか判断ができずに、結局、何もしないままになってしまう方も多いのではないでしょうか?
一見、捉えどころのないようにみえるドル/円の相場ですが、景気循環という視点からみると、ある傾向が分かります。そして私は、その傾向を元にして売買タイミングを決めています。
今回、その傾向と売買タイミングについて、お伝えをしていきたいと思います。
まずは、ドル/円の為替の動きについて、見てみましょう。
(グラフ1)ドル/円為替と景気循環の関係(1)
2012年から2015年にかけてドル/円は1ドル=70円台から120円台へと大きく円安に動きました。
その後、2021年までの長い間、100円から120円の間を行ったり来たりしながら徐々に105円から110円あたりに収れんするような動きをして、2022年3月以降は一時150円台を付けるまで一気に円安に動き、直近では130円台と円高に戻す動きとなっています。
次に、このドル/円の動きと景気循環との関係についてみていきたいと思います。
為替ではなく、株価の話になりますが、私は株価の動きを景気循環と関連付けてみていて、次のようにイメージしています。
(図1)景気循環に伴う株価のイメージ
株価は不況期の半ばから上昇し始め、景気回復期から好況期にかけて大きく伸びていきますが、その後、好況期の半ばをピークに下がり始め、景気後退でさらに下落して、不況を迎えるという循環です。おおむね3年半のサイクルを繰り返しています。
この景気循環について、(図1)のように、おのおのの局面を独自分析に基づいて「春」「夏」「秋」「冬」という季節になぞらえています。
そして、この「春」「夏」「秋」「冬」の局面における傾向が、株価だけではなく、ドル/円にもあるのです。(グラフ1)において冬の局面のみをグレー掛けすると、次のようになっています。
(グラフ2)ドル/円為替と景気循環の関係(2)
まず、グレー掛けしていない「春」「夏」「秋」を通して眺めると、円安に動く傾向があることが見て取れます。特に、2013年から2015年にかけてと2021年から2022年にかけては大幅な円安となっています。
次に、グレー掛けをした「冬」を見てみると、円高に動く傾向があることがつかめます。その中でも、2013年から2015年、2021年から2022年のように大きく円安に動いた後には、大きく円高に動いていることが分かります。
では、「冬」から「春」、「秋」から「冬」という変わり目をどのように見分けるのかというと、私は、日経平均株価の予想EPS(1株当たり利益)の4週前比増減率を手掛かりに捉えています。
「季節」の変わり目は日経平均予想EPSから捉える
(グラフ3)ドル/円為替と日経平均の予想EPSの4週前比増減率(1)
(グラフ3)において丸印で示したところは、3カ月以上マイナスが続いた後にプラス転換した時期です。そのうち、青丸は「冬(後半)」にプラス転換した時期で、この青丸を「冬」から「春」に変わる時期と定義付けしています。
この青丸はざっくりお伝えすると、企業業績が良くなってくる最初のシグナルと言えます。
次に、もう一方の「秋」から「冬」の方も見ていきましょう。
(グラフ4)ドル/円為替と日経平均の予想EPSの4週前比増減率(2)
(グラフ4)において丸印で示したところは、3カ月以上プラスが続いた後にマイナス転換した時期です。そのうち、赤丸は「秋」にマイナス転換した時期で、この赤丸を「秋」から「冬」に変わる時期と定義付けしています。
この赤丸は青丸とは逆で、企業業績に悪化の兆しが出てくる最初のシグナルと言えます。
この「冬」から「春」、「秋」から「冬」に変わるタイミングを、(グラフ2)において矢印で示すと次のようになります。
(グラフ5)ドル/円為替と景気循環の関係(3)
(グラフ5)でみて取れるように、「春」「夏」「秋」は円安、「冬」は円高という傾向を利用して、「冬」から「春」に変わる青矢印のタイミングで円を売って米ドルに投資をし、「秋」から「冬」に変わる赤矢印のタイミングで米ドルを円に換えていくのです。
これを繰り返していけばうまくいくというイメージは、皆さんも持てるのではないでしょうか?
では、実際にそのように動いたときのパフォーマンスをみてみましょう。
(表1)ドル/円為替の売買タイミングとパフォーマンス
投資タイミングは目先の相場ではなく、景気循環から見定める
この約10年のパフォーマンスを複利計算すると、2.21倍(1.49×1.10×1.35=2.21)となっています。
今後のドル/円の動きを判断するときに、円安がいくらまで進むのか、もしくは、円高にどれだけ振れるのかということばかり考えてしまいがちです。その結果として、何もできずに固まってしまう、もしくは、タイミングが悪かったという方も多いのではないかと思います。
現時点においても、円安に戻るとしても、1ドル=135円止まりなのか、140円台を付けるのか、はたまた150円台にもう一度トライしに行くのか、逆に円高に行くとしたら130円あたりで止まるのか、120円、110円と進んでいくのか、考えれば考えるほど迷ってしまうでしょう。
そうではなく、私は、ドル/円がいくらであろうが、円を売って米ドルに投資をする時期は「冬」から「春」に変わったタイミング、米ドルを円に換える時期は「秋」から「冬」に変わったタイミングと決めています。
ドル/円の水準ではなく、景気循環の変わり目というタイミングを見定めて取引をしていけば、動けずじまいということにならず、より良いパフォーマンスを得られると私は考えていますが、いかがでしょうか?
投資はあくまでも自己責任で。
(白石 定之)
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