[今週の日本株]トレンド発生を意味する「バンド・ウォーク」登場、右肩上がりの可能性ある?
トウシル / 2023年2月13日 13時0分
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[今週の日本株]トレンド発生を意味する「バンド・ウォーク」登場、右肩上がりの可能性ある?
先週の日経平均は2万7,670円で終了
先週末2月10日(金)の日経平均株価終値は2万7,670円でした。先週末終値(2万7,509円)からは161円高と小幅な上昇だったものの、週足ベースでは5週連続で上昇しています。
図1 日経平均(日足)とMACDの動き(2023年2月10日取引終了時点)
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/1/a/-/img_1ae9aa4d6afa1152518c0ccbdcd0e0ed62228.png)
あらためて先週の日経平均の値動きを上の図1で振り返ってみると、週初の6日(月)に一段高で2万7,500円台をクリアするスタートでしたが、その後は再び2万7,500円割れの場面があったほか、ローソク足の並びを見ても、陰線が多くなっているなど、上値を伸ばせない展開が続きました。
とはいえ、前週は抵抗(レジスタンス)となっていた2万7,500円の「節目」が、先週は支持(サポート)として機能し始めているようにも見え、いわゆる「レジ・サポ」と呼ばれる格好になっており、終わってみれば堅調だったと言えます。
さらに、先週末の株価は、昨年8月と11月の高値を結んだ「上値ライン」を十分にうかがえるところに位置しているほか、今後の値動きによっては、上向きを強めている25日移動平均線が75日と200日移動平均線を上抜ける可能性もあり、確かに買いの勢いは感じられないものの、上方向への目線は維持していると見て良さそうです。
この日経平均の上方向への目線については、ボリンジャーバンドでも確認していきます。
図2 日経平均(日足)のボリンジャーバンド(25日)(2023年2月10日取引終了時点)
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/1/2/-/img_125f1a8f4e6cdb5457ffc1eb747a60e065400.png)
ここ2週間程度の日経平均の値動きは、ボリンジャーバンドの「プラス2σ(シグマ)」と「プラス1σ」の範囲内での推移が続いていることがわかります。また、バンドの傾きに注目すると、プラス2σからマイナス2σまでの5本の線が全て右肩上がりとなっています。
このように、バンドの線の傾きがそろっていて、かつプラスマイナス2σと1σのあいだで株価が推移する状況は「バンド・ウォーク」と呼ばれ、トレンドが発生している時に表れる形とされています。上の図2のチャートを過去にさかのぼってみても、バンド・ウォークの中で上値を伸ばしている場面がありました。
今後の株価がプラス2σに向かっていくのであれば、2万8,000円台超えもあり得るわけですが、気になるのは、バンド・ウォークを維持し、「このまま順調に上値を伸ばせるのか?」です。
そこで、今週の株式市場を取り巻く環境をざっくり整理してみます。主なポイントは以下の三つが挙げられます。
[1]週初は日本銀行(日銀)総裁の人事をめぐる報道を消化
[2]インフレ&景況感のスピード感と、金融政策への思惑という視点は続く
[3]「偵察気球」問題の影響(米中関係の悪化など)
まず、[1]についてですが、任期満了を迎える黒田東彦日銀総裁の後任として、当初名前が挙がっていた雨宮正佳副総裁ではなく、元日銀審議委員の植田和男氏となる方針が、先週末に報じられました。今週の14日(火)に人事案が国会に提示される予定です。
サプライズな人事案でしたが、その後の報道などで、植田氏は金融緩和維持の姿勢とされており、今後の相場の方向性が大きく変わることはなさそうです。
ただ、過去に「長期金利のコントロールは政策微調整には向かない」と発言していたことや、誰が黒田総裁の後任となっても、金融政策の修正議論がつきまとうことに変わりはなく、今後もニュースの見出しなどに相場が反応する場面は多そうです。
続く[2]については、国内の企業決算ラッシュが今週の13日(月)と14日(火)でピークアウトすることや、米国では14日のCPI(消費者物価指数)や小売売上高(15日)、16日のPPI(生産者物価指数)など、1月分の経済指標の発表が相次ぐスケジュール感となっています。
次回の3月21~22日のFOMC(米連邦公開市場委員会)までには、かなりの時間があるため、今週も経済指標の結果や、それを受けた景況感と金融政策への思惑に、敏感に反応しやすい相場地合いが続くことが想定されます。
とりわけ、最近までの米国株市場は、先日のFOMC後の記者会見で、パウエル米FRB(連邦準備制度理事会)議長が「ディスインフレが始まった」と語ったことをきっかけに、上昇する場面が目立っていました。
しかし、先週あたりからパウエルFRB議長をはじめとするFRB要人の発言トーンが、再びタカ派姿勢に傾き始めているなど、不安定となっており、それに伴って株価も伸び悩んでいます。
その米国株市場の動きについても確認していきます。
中国「偵察気球問題」の米国市況影響を要警戒
図3 米NYダウ(日足)の動き(2023年2月10日取引終了時点)
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/0/4/-/img_04d546817db42a7cf516a1e6ddad93ae61394.png)
先週末のNYダウ(ダウ工業株30種平均)の終値は3万3,869ドルでした。上の図3を見ても分かるように、日々の株価が上下するもみ合いの動きが続き、前週末終値(3万3,926ドル)比で57ドル安と、週足ベースでは小幅ながら下落となっています。
トレンドの観点からは、昨年1月高値と10月安値を起点としたギャン・アングルの「4×1」ラインで上値が抑えられる格好が続いたほか、下段のMACDも線の傾きが横ばいとなる中で、シグナルとのクロスを繰り返しており、方向感が出ていません。
もっとも、25日移動平均線が50日移動平均線を上抜ける「ゴールデン・クロス」が出ていて、上方向の意識は保っています。
今週発表される経済指標の結果次第では、ギャン・アングルの4×1ラインの上抜けなど、株価の一段高が期待できる状況ではありますが、先ほどの相場環境の不安定さを考慮すると、株価の上振れが一時的となる可能性は高そうです。
図4 米NASDAQ(日足)の動き(2023年2月10日取引終了時点)
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/b/6/-/img_b627c3dadeef32ba72ccaacd9f20c12b64250.png)
先週のナスダック(ナスダック総合指数)も上値の重たい展開となりましたが、もみ合いの印象が強かったNYダウと比べ、上の図4を見てもわかるように、上値からの株価失速が感じられる印象です。
ナスダックは、グロース株をはじめとする高PER(株価収益率)の銘柄が多く上場しているため、金融政策をめぐる思惑に振り回されやすい側面が表れたと思われます。
また、ナスダックについては、昨年12月28日を底にした株価反発の強さが影響し、25日移動平均線が勢いよく回復しています。
足元では50日移動平均線を上抜け、200日移動平均線もトライしそうな状況ではあるのですが、その一方で株価の上値が、ギャン・アングルの2×1ラインが抵抗となっているほか、下段のMACDがシグナルを下抜けしそうなど、上昇の一服感を示すサインも増えていて、今後の展開が読みにくくなっています。
よって、今週のナスダックは、積極的な上値トライというよりも、昨年末からの株価上昇の一服感を確認しつつ、株価が下落した際に200日移動平均線がサポートとして機能できるかの方が注目されやすいかもしれません。
さらに、[3]の米中関係ついても注意が必要です。いわゆる「偵察気球」の騒動は、ブリンケン米国務長官の中国訪問の延期から、中国の6団体を貿易ブラックリストに追加といった米国側の対応が拡大する一方、中国側からも核弾頭の増強を検討する方針が示されるなど、現在のところ状況が改善する兆しは見られていません。
今後もエスカレートするような事態となれば、相場にも影響が出てくるかもしれません。
このように、日米株価指数のチャートの形状は悪くはないのですが、相場環境は強気に傾きにくい状況のため、今週の日本株は、一時的な株価の上振れや下振れの場面がありそうなものの、中長期のトレンドに発展する可能性は低く、先週に続いて「統一感」のない展開がメインシナリオになりそうです。
(土信田 雅之)
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