これだけは最低限知っておきたい!医療費控除の基礎知識(その2)
トウシル / 2023年2月10日 11時0分
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これだけは最低限知っておきたい!医療費控除の基礎知識(その2)
基礎知識(4)家族の医療費は所得が多い人にまとめる
今回は、前々回に引き続き、医療費控除においてこれだけは知っておきたいという基礎知識をお伝えいたします。
関連記事:これだけは知っておきたい!医療費控除の基礎知識(その1)
筆者の本業は税理士ですが、新規に関与するお客さまが、過去ご自身でなされていた確定申告書をみると、ご家族それぞれが1人ずつ医療費控除を行っているケースをたまに見かけます。
しかしこれは、家族単位でみて余計な税金を払ってしまっている可能性が高いです。
所得税法第73条第1項《医療費控除》において、医療費控除は、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費を支払った場合に適用することとされています。
この「生計を一にする」の定義は結構難しいのですが、少なくとも同居している家族同士は生計を一にする親族として扱われるのが通常です。
例えば夫婦共働きで、夫婦がそれぞれ医療費を自分で支払い、それぞれ別々に医療費控除を受けているとすると、二つの点で税金上不利になります。
なぜ夫婦別々に医療費控除を適用すると税金面で不利になるのか?
一つは、医療費控除適用時に差し引かれる「10万円・もしくは総所得金額等の5%」です。総所得金額等が200万円以上の場合は、医療費控除適用額は、支払った医療費から10万円を差し引いた額ですが、もし夫婦それぞれが医療費控除の適用を受けようとすると、夫からも10万円、妻からも10万円、合計20万円が引かれることになってしまいます。
でも、妻の医療費も夫が支払い、夫がまとめて医療費控除の適用を受ければ、差し引かれる額は10万円で済みます。
つまりこの場合、10万円×税率だけ、税金を払いすぎることを回避できるのです。
もう一つは、医療費控除が「所得控除」であるという点から生じる点です。例えば夫、妻とも年間の医療費が30万円だとします。そして夫の所得税率は40%、妻の所得税率は20%とします。
もし、夫と妻が別々に医療費を払い、別々に医療費控除を適用すると、医療費控除による節税額は次のようになります。
・夫:(30万円-10万円)×40%=8万円
・妻:(30万円-10万円)×20%=4万円
計12万円
一方、夫が妻の分の医療費も支払い、夫が1人で医療費控除を適用した場合は次のようになります。
・夫:(30万円+30万円-10万円)×40%=20万円
このように、夫婦合算して、所得の高い方がまとめて医療費控除を受けた方が、節税できる金額が大きくなるのです。
基礎知識(5)確定申告期日を過ぎても医療費控除の適用を受けられる
確定申告書の申告期日は、例年2月16日~3月15日までです。2022年分の確定申告であれば、2023年2月16日~2023年3月15日となります。
しかし、例えば確定申告の必要のない会社員であれば、医療費控除は還付申告となるので、2022年分の確定申告は2023年1月1日から提出が可能です。
また、2023年3月15日を過ぎてしまっても、2022年12月末から5年後の2027年12月末まで提出することができます。
これは過去の医療費でも同様で、例えば2018年分の確定申告書を提出していない方が、2018年分の医療費控除を受けたい場合は、2023年12月末までに確定申告書を提出すればよいことになります。
事業所得、不動産所得や、株式の配当金・譲渡所得などがあり、確定申告をすでに済ませた後に、医療費控除の適用を追加で受けたい、もしくは医療費控除の申告をしたが追加で医療費の領収書が発見された…という場合は、更正の請求という手続きをとることになります。この場合の期限は、法定申告期限の5年後となっています。
ですから、2022年分の確定申告を行った後、医療費控除を追加で受けたい場合は、2028年3月15日までに更正の請求を行えばよいことになります。
このように、通常の確定申告書の提出期限が過ぎてもあわてることはありませんが、期日はありますから忘れないうちに早めに手続きをしておくのがよいでしょう。
基礎知識(6)どの年の医療費控除になるかは実際に支払った日付で判定
2022年の年末に病院から医療費の請求書をもらったが、支払いは翌年2023年となった場合、この医療費は2022年に含めるのか、それとも2023年のものか、どちらになるのでしょうか?
正解は、「2023年の医療費」です。医療費控除は、請求書の日付ではなく、実際に支払った日の属する年がいつかにより判定されます。
ですから、レアケースではありますが、2022年に支払った医療費がすでに医療費控除の限度額である200万円を超えていて、2022年末に医療費の請求が来た場合、2022年中に支払うとその分は全く医療費控除を受けられなくなります。
そこで、もし可能であれば2023年の支払いに回すことで、2023年分の医療費控除の枠を使うことができます。
それ以外にも、何らかの理由で翌年の医療費控除の対象にしたいという場合は、年が明けてから支払う、という対応を取ることができます。
この点に関連し、クレジットカードで年末近くに医療費を支払った場合はどうなるのか?という疑問を抱く方もいらっしゃるかもしれません。年末にクレジットカードを使った場合、引き落としは翌年になってしまうからです。
結論から申し上げると、クレジットカードを使った日が属する年の医療費控除の対象となります。例えば2022年12月29日にクレジットカードで医療費を支払った場合は、2022年の医療費控除に含めることになります。
税金の知識というのは、知らないと税金の納付漏れとなってしまうケースと、知らないと余計な税金を払ってしまうケースがありますので、いずれのケースにも陥らないように、最低限の知識は持っておくようにしてくださいね。
(足立 武志)
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