趣味や生きがいの「資産価値」
トウシル / 2023年2月21日 11時0分
![趣味や生きがいの「資産価値」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushiru/toushiru_40566_0-small.jpg)
趣味や生きがいの「資産価値」
趣味や生きがいに「資産価値」はあるのか
今日はちょっと資産運用の「隣の畑」のような話をしてみたいと思います。それは趣味や生きがいの資産価値です。
私たちは資産運用を通じて、手元資金の価値を向上させようとしています。経済成長の果実が私たちの投資資金の評価額を高めてくれることで、私たちは経済的余裕を獲得し、それにより趣味や生きがいにかける予算を獲得する、というのが基本的なイメージです。
とはいえ、趣味や生きがいを金食い虫として否定的に捉える向きもあります。ひどいテレビ番組などは夫の長年にわたるコレクションを不在時に妻と娘が売り飛ばし、帰宅しぼうぜんとなった夫の姿を笑いものとして収録しますが、趣味や生きがいはそこまであざけりの対象となるべきものでしょうか。
私たちの人生にとってもっと価値があるのではないでしょうか。
モノに値がつく「価値」はなかなか生まれない
この問題、まずは資産価値の有無をダイレクトに検証してみましょう。例えば、「趣味のコレクションを売ったら価値があるか」という形で資産価値を評価することが考えられます。
ソフビ人形のコレクターがいて、いくつかの絶版の商品は、鑑定団の番組に出れば数十万円の価値がつくことがあるかもしれません。
しかし、一般的にいってコレクションのほとんどは、総購入額を上回る価値を生み出すことはないでしょうし、そもそも売却して差益を生み出すためにコレクションをする人は多くないはずです。むしろ、売りたくないという気持ちが起こるのが趣味人の発想です。
私も年末に倉庫を整理していて、学生時代に遊んだレトロゲーム(主に1990年代のゲームソフト)を発見、今ならいくらになるか検索してみましたが、ほとんどは100〜200円、むしろ値つかずの品のほうが多い印象でした。数十本に1本ほど、数千円の価値がありましたが、これすら購入価格と同額か半額程度でした。
一つだけ4万円の価値があるゲームがあって「おお!」と思いましたが、愛着があるので売る気にはなれず、「なるほど保有者は同じことを考え、欲しい人は一定数いるので、この値段がつくのか」と納得した次第です。
そもそも、購入価格より高く売る目的で買い集める人はコレクターというよりは「せどり」を目的とすることになってしまいます。やはり、純粋な資産価値で趣味を語ることは避けておいたほうがよさそうです。
趣味や生きがいは健康と幸福度に影響する!特に老後に重要性が増す
そうなると、趣味や生きがいが生み出す「資産価値」はあなたの健康や幸福をキープするための財産ということになります。
まず、趣味や生きがいの存在は、メンタルヘルスおよび身体の健康にプラスに影響します。例えば老後の健康寿命をできるだけ長くするためのキーワードとして食事(栄養バランス)、身体活動(運動)、社会的活動(趣味やボランティアなど)が重要だと言われます。趣味や生きがいの問題は三つ目のキーワードに分類されます。
運動や食事が重要なのはもう誰でも理解していることです。しかし、趣味や生きがいについてはどうでしょうか。
「推し活」にハマっているような人が生き生きしているのは、支出がかさんでも、むしろメンタルの健康を買っている、ともいえます。よく、「推しにエネルギーをわけてもらった!」といいますが、まさにそうだと思います。実はこれ、とても価値のあることだったわけです。
楽しそうに「推し活」している人は幸福そうでもあります。実際、「推し」を持っている人は主観的な幸福度が高まるという分析もあるそうです。
生きがいは「推し活」だけではありません。いろんなところに現れます。家族とのつながりにもありますし、地域でのちょっとした貢献にも見いだすことができます。もちろんガッツリ趣味に突き進んでもいいでしょう。
ただし、仕事とは離れて持てることが大切です(人のつながりも会社と別に持てるといい)。私のFacebookはつながりの半分が「マネー系(仕事つながり)」ですが、半分が「趣味系(まちあるき仲間)」です。仕事つながりの知人の近況を知るのと同時に、仕事とはまったく無縁の「同じ趣味を持つ同志」の近況を知り、コメントするのはとても楽しいものです。
老後は特に、仕事という大きな生きがい(働きがい)と人とのつながりがゼロになります。そのときに備えて、自分の趣味や生きがいという「資産」を持っておきたいものです。
とはいえ、基本的に趣味や生きがいへの支出はマイナスですから、コスト管理も重要です。「推し活」が危ういのは無制限に資本注入(という名の支出)をしてしまうリスクです。生きがいや満足をバランス良く「買う」感覚を持って趣味の支出を心がけていきたいものです。
それでは、「投資が生きがい」という人はどうか
ところで、本コラムの読者には「私は投資が趣味のようなもの」「毎日マーケットウオッチをすることが生きがいですね」のような人が少なからずいるでしょう。これはどう考えるべきでしょうか。
こちらは資産価値の向上がその「趣味」の本質的目的にあることが一般的な趣味と大きく異なります。
投資の本質は資産価値の向上にあります。お金が全額戻ってこないという投資行動を好んで取る人はまずいません。お金を増やすことを前提としつつも、投資を楽しんでいる人は一定数いると思います。
投資は社会とのゆるいつながりでもあります。あなたのお金が企業や社会経済とつながっていき、世の中のために用いられていますし、いろんな企業のニュースをチェックするのはとても知的な行為で、脳を活性化させてくれます。
「投資が趣味」という人は、変に入れ込みすぎて「大きく下がっているけれど、好きな会社だから買い増す」のようなことがないように注意しつつ、投資を楽しんでいくといいでしょう。
長期保有を前提に値下がり時期の株を保有し続けることや初購入するようなことは資産の余裕があれば悪くはありません。ただ、ナンピン買いを続けて資産の多くを個別企業が支配することはあまりオススメしないので、バランス感覚を持って「投資を趣味」としたいところです。
「投資の趣味」はリアルの人とつながりにくいのが唯一の難点です。コミュニティに参加して仲間を見つけるのもいいアイデアです。ただし、仲良くなったところを見計らってあやしい金融商品や商材を営業してくる「偽の仲間」もいますのでご注意を。
(山崎 俊輔)
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