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自分の世界を広げるには?『インベスターZ』番外編ー第4話

トウシル / 2023年11月8日 16時30分

自分の世界を広げるには?『インベスターZ』番外編ー第4話

自分の世界を広げるには?『インベスターZ』番外編ー第4話

*この記事は2022年12月15日に公開された記事です。

ドラゴン桜』などの著書で知られる三田紀房氏。連載当初から大きな話題となった投資マンガ『インベスターZ』は、中学1年生の主人公・財前孝史が、ひょんなことから投資知識を身につけ、数億円の資産を運用しながら社会と、そして自分の人生と深くかかわっていく壮大なマンガです。

 トウシルでは、この『インベスターZ』の番外編の書下ろしマンガを短期連載。さえない人生を予感して腐っている先輩に、財前孝史は何を説くのか…。先輩と財前の対話から、何から手をつけていいのかすら分からない若者が、まず何をすべきか、何を考えるべきかが見えてきます!

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 高校の家庭科に加わった金融教育に合わせ、「人生を変える!令和の投資教育」として始まった、投資マンガの金字塔『インベスターZ』の番外編。

 第4回目では「自分の世界を広げる」をテーマに考えていきます!

 この企画に関わっていただいている元トレーダーで社会的金融教育家の田内学さん。金融のプロは、どういう風に自分の世界を広げていったのでしょうか?

「ベビーカーって、こんなに街中にあるの?」と、子育てをするようになって感じる。受験生になってカフェに行くと、勉強する人ばかりいるように思える……。ささいなことかもしれませんが、自分の中に新しい興味が加わり世界の見え方が変わった経験が、皆さんにもあるのではないでしょうか。

 今回は、僕自身の世界が広がった、見え方が変わった経験について、少しお話ししたいと思います。

興味があるものを見つけないとダメ?

 少し前に、とあるスポーツチームのユニフォームが、国内メーカーから米国のメーカーに変わったというニュースを見ました。

「お金が外に流れていっちゃうな……」

 以前なら、さほど気に止めないニュースでしたが、国の外にお金が出ていくことに対して、自分の財布からお金が出ていくような感覚があると気付きました。

 なぜ僕は、これまでであれば、関係ないと思っていたニュースを、自分の財布のこととして捉えられるようになったのでしょうか?

 それは家族という大切な存在を意識したからです。

 僕は、自分という存在から離れ、国視点でものごとを見る一番の理由は、大切な人がいるからだと思っています。

 もし、世界にいるのが自分だけであれば、自分のことだけを気にしていればいいのかもしれません。でも、家族や恋人といった大切な人がいる場合、自分で彼・彼女たちの全てを支えることは難しい。

 大切な人とずっと一緒にいるわけにも、見張ってもいられません。いつか自分が死んだとき、子どものいる世界そのものがよくならないと安心できません。

 経済的な話はもちろん、モラルや治安含めて国全体がよりよくなる必要があります。

 そんな意識の変化によって、「自分」が気にしないといけない範囲が、「自分」だけでなく、「この国全体」になっていったのです。

 主人公の「先輩」のように、そもそも自分が興味のあるものを見つけるのは、もちろん素晴らしいことです。

 ただ、「そんなもの見つからないよ」という人は、自分の大切な人、守りたいものを考えてみるのもいいことだと思います。

 そして、何かニュースがあったときに、ふと立ち止まって、自分だけでなく、その人やその環境にどんな影響があるのか考えてみる。

 それだけで、見える世界が、今より広がるかもしれません。

お金は増えているのではなく、ただ流れているだけ

 世界が広がるきっかけとして、外資系金融企業でトレーダーをしていたころの経験も、欠かすことはできません。

 お金を預けていると、金利が生まれ、お金は増えるものと一般的には思われがちです。

 しかし、20年近くの金融トレーダー生活で感じたことは、「お金はただ流れている」ということです。金利も含めて、お金は増えません。誰かの財布から誰かの財布への移動です。

 お金がただ流れているだけなのだとすると、国全体で最大化するものはなんでしょうか。

 お金の量を増やすことではなさそうです。

 経済活動の中で、私たちの生活を豊かにするのは物やサービスであり、それらを生み出す社会基盤をよくしていくことが大切です。

 アフリカなどへの支援活動をする知人が、「服などの物資を直接送ってはいけない」と話していました。服をもらうのが当たり前になってしまうと、産業が発達しなくなるからで、どれだけお金や物資を支援したところで、彼らが使うだけでは意味がありません。それぞれの国で物が作れるようになる必要があります。

 暮らしが豊かになるために必要なのは、お金ではなくて産業が発展することなのです。

金融トレーダーが「公共」の教科書作りに参加してみて

 もう一つ世界を広げたのは、教科書を作ったことです。前職を辞めた後、本を書く前に、2022年4月から高校公民科で新しく始まった「公共」の教科書作りに関わりました。

 最初は、自分のトレーダーとしての経験が、「公共」の教科書をつくることに役立つのか、正直不安でした。

 しかし、実際、教科書作りに参加してみると、改めて、お金というシステムを通して、人々が社会を支えていることを実感させられました。

 教科書作りに自分がどこまで貢献できたのかはわかりませんが、これをきっかけに自分の経験を考え、役割に気づけたことは、最初にこのプロジェクトに参加したときに予想していたよりも、圧倒的に自分の糧になっています。

 僕らはお金=資産と見ているけれど、言葉と同じように、コミュニケーションを取るためのツールの一つでしかない。お金は社会を支えるために存在しているシステムでしかないと気づいたのは、教科書作りに関わったからです。

 1976年にノーベル経済学賞を受賞した、米国の経済学者ミルトン・フリードマンがこんな話をしていました。

 消しゴム付きの鉛筆を一人で作っている人は、世界に存在しない。木材や芯、消しゴム、塗料など、原材料は世界各地から集められ、それぞれを作っている人々がいる。多数の人たちが鉛筆になることを知らずに製造した結果だと。

 彼らはお互いを知らないし、もし出会うことがあったら、憎しみ合うかもしれない。でも、市場経済を通じて彼らは協力できている。市場経済が、世界に平和や調和を生み出すと。

 僕が今伝えたいのは、市場経済の向こう側には人がいるということです。

 そして、あなたの世界もまた、人でつながっています。

 世界を広げたいと思うのなら、まずは自分の大切な人のことを考えてみるといいのではないでしょうか。

田内学(たうち・まなぶ)
お金のむこうに人がいる 元ゴールドマン・サックス金利トレーダーが書いた 予備知識のいらない経済新入門著者。

 1978年生まれ。東京大学入学後、プログラミングにはまり、国際大学対抗プログラミングコンテストアジア大会入賞。同大学院情報理工学系研究科修士課程修了。

 2003年ゴールドマン・サックス証券株式会社入社。以後16年間、日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーディングに従事。日銀による金利指標改革にも携わる。2019年退職。現在は、社会的金融教育家として、学生や社会人向けの講演・執筆活動や財政政策などの政策提言を行なっている。

Twitter:@mnbtauchi
note:note.com/mnbtauchi/
Instagram:@tauchimnb

(構成:片岡由衣)

三田紀房公式サイト

『インベスターZ』とは!

『モーニング』(講談社)にて2013年28号から2017年29号まで連載され、100万部のベストセラーとなった投資マンガ。作者は『ドラゴン桜』などでも知られる三田紀房氏。

 主人公の財前孝史は中学1年生。北海道の進学校である道塾学園に満点かつトップの成績で入学する。野球部に入ろうとしていた財前は、校内の図書館奥の地下室に連れこまれる。

 秘密の地下室で麻雀をして遊んでいた先輩たち5人は、なんと、学費を無料にするため、道塾学園の資産3,000億円を投資で運用し、学校の運営資金を稼ぎ出す「投資部」の面々だった!

 成績トップの入学者を入部させる、という代々のしきたりに従って、半ば無理やり、得体のしれない「投資部」に所属することになった財前。投資のイロハを先輩から教わりながら、自分なりのロジックで投資を開始する。しかし、道塾学園の創設者一族である、アメリカ在住の高校2年生・藤田慎司と口論になり、投資部の存続を賭けた三番勝負を行うことに。最初の勝負はFX(外国為替証拠金取引)取引。元手は1億円、期間は3日間で、元手を増やしたほうが勝ち、というルールだが、アメリカ在住で為替通、しかもFX取引に強い慎司に、はたして財前は勝利することができるのか!?

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(トウシル編集チーム)

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