バフェットが日本株買い増しをまた表明。米国株の不安続く中、日本株は堅調
トウシル / 2023年5月8日 7時55分
バフェットが日本株買い増しをまた表明。米国株の不安続く中、日本株は堅調
米国株は下値不安が払しょくできないが、日本株は強い
ゴールデンウイークの谷間となった先週(5月1~2日)の日経平均株価は、4月28日の終値2万8,856円と比較し、5月2日の終値2万9,157円と、2日間で、301円上昇しました。米国株が四つの不安で上値が重くなる中、日経平均の強さが目立ちました。
米国株の四つの不安とは、【1】地方銀行の信用不安、【2】利上げが続く不安、【3】米景気悪化の不安、【4】米債務上限の不安のことです。
日経平均とナスダック総合指数の動き比較:2021年末~2023年5月5日(日経平均は5月2日まで)
外国人投資家が足元、米国株よりも日本株を選好している可能性があります。その機運を表しているのが、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏の言動です。
バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハザウェイは6日、2023年1-3月の決算を発表しました。同社は1-3月に米国株を104億ドル(約1兆4,000億円)売り越したことがわかりました。米国株が好きで米国株に強気のバフェット氏も、短期的には米国株に懸念を持っていると考えられます。
ところが、バフェット氏は日本株に強気発言を繰り返しています。6日の株主総会でも、日本株を引き続き買い増しする方針を語りました。
5月1日:ファースト・リパブリック・バンク破綻、米銀で過去2番目の規模
信用不安で預金流出が止まらず、株価が急落していたファースト・リパブリック・バンクが5月1日、経営破綻しました。米銀で過去2番目の規模の破綻です。JPモルガン・チェースが同行の預金と資産の買収を発表したため、動揺の拡大は抑えられましたが、米国の銀行不安が簡単には終わらないことがわかりました。
3月10日にシリコンバレー銀行、3月12日にシグネチャー銀行の破綻で高まった米地方銀行の信用不安は、米金融当局が預金の全額保護を発表したために、一時収束しつつありました。
ところが、ファースト・リパブリック・バンクの破綻によって、再び銀行不安が高まりました。5月2日から4日にかけて、次の破綻候補を探す動きが株式市場に広がりました。財務の弱い地方銀行をねらって空売りをしかけて株価を急落させる動きが広がり、パック・ウエスト、ファースト・ホライゾン、ウエスタン・アライアンスなどの株価が急落しました。
ただし、空売り残高が急増する中、金融当局が空売りの実態を調査するとの思惑が広がると、5月5日は一転して地方銀行株が急反発しました。空売り勢の一部に買い戻しが広がりました。
地方銀行株の急反発で安心感が広がり、5月1日から4日にかけて下落していたダウ工業株30種平均、ナスダックは5日に急反発しました。
ただし、これで米銀の信用不安が収束すると考えるのは早計です。低金利下で放漫経営におちいっていた地方銀行の財務悪化は根が深く、簡単には解決しません。
米地方銀行の財務悪化が生じている要因は二つあります。
一つはFRB(米連邦準備制度理事会)による急激な利上げ。これで、保有債券に巨額の含み損が発生しています。
もう一つは、米オフィス市況の下落です。金余りで貸出先が不足していた米地方銀行は、オフィスローンの残高を軒並み拡大させていたため、オフィス市況の下落で、不良債権が増加しつつあります。
米国では在宅勤務の普及で都市部の空洞化が進み、オフィス需給が悪化しています。リオープンが進んでも、その傾向に変化はありません。例えばニューヨークで、オフィス街のミッドタウンはリオープンで米景気が活況を取り戻しても閑散としたままです。いずれ、オフィスの解約が進む可能性もあります。
バフェット氏も、こうした米国の現状に懸念を抱いていると考えられます。
5月3日:FRBが0.25%の利上げを発表
FRBは3日、0.25%の利上げを発表しました。政策金利であるFF金利の誘導水準を4.75~5.00%から、5.00~5.25%に引き上げました。これで、長期金利との逆ザヤは一段と拡大し、先行き米景気を悪化させる不安が高まりました。
米長短金利(10年・2年・FF金利)推移:2021年1月4日~2023年5月5日
パウエルFRB議長は記者会見で、米銀行システムは健全であると銀行不安を否定する一方、インフレとの戦いは続くと表明しています。FRBがタカ派姿勢を変えていないことが、株式市場にとって不安材料となっています。ただし、今後の利上げについては、経済環境によっては停止する可能性も示しました。
米債務上限問題が再燃
米国の二大政党である共和党と民主党の政争の材料に、しばしば債務上限問題【注】が表れます。何度も繰り返してきたことですが、再び、債務上限問題が米国債の不安を高めています。
5月9日までに債務上限引き上げで決着しないと、米国債のデフォルト不安が生じます。実際にデフォルトすることは考えられませんが、目先、金融市場にとって波乱材料となる可能性があります。
【注】債務上限問題
債務上限とは、米連邦政府が国債発行などで借金できる枠のことです。政府債務が法定上限に達すると、議会の承認を得て上限を引き上げない限り、新規の国債発行ができなくなります。民主党が政権を握っている間、共和党が支配する議会が、政策の違いを理由に上限引き上げを拒否すると、一時的に米国債のデフォルト懸念が持ち上がります。
実際にデフォルトすることは考えられませんが、この問題が持ち上がると、金融市場に不安が広がり、株価は不安定な動きになります。
5月5日:4月の米雇用統計発表、雇用は強い
5日発表の4月雇用統計は、市場予想以上に強い内容でした。非農業部門の雇用者は前月比25万3,000人増加しました。失業率は3.4%と、コロナショック前の3.5%を下回り、実質完全雇用状態が続いていることがわかりました。
米雇用統計、非農業部門雇用者数(前月比):2019年1月~2023年4月
米雇用統計、完全失業率:2014年1月~2023年4月
雇用が強いため、米景気悪化の不安はやや低下しましたが、インフレが高止まりする懸念は続きます。
どうなる日本株?
米国株の下値不安は払拭(ふっしょく)できませんが、日本株は相対的に堅調と予想します。四つの理由があります。
【1】米国の銀行不安は続くが、日本の銀行の財務は健全
【2】米国の利上げが続いているが、日本は大規模金融緩和が継続されている
【3】米景気悪化不安があるが、日本にはリオープンによる内需回復期待がある
【4】債務上限問題で米国に不安があるが、日本には債務上限問題はない
結論は、いつも述べていることと同じです。日本株は割安で長期的には良い買い場と考えますが、米国株の下値不安が続く間は、警戒が必要です。時間分散しながら、割安な日本株を少しずつ買い増ししていくことが、長期的な資産形成に寄与すると判断しています。
なお、私は5月10日テレビ東京の Newsモーニングサテライト「深読みリサーチ」に出演して、バフェット氏が投資する日本株の予想について解説する予定です。ご覧いただけると幸いです。
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(窪田 真之)
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