日本株の上昇期待高まる。米国株の下値不安は続く
トウシル / 2023年5月15日 7時45分
日本株の上昇期待高まる。米国株の下値不安は続く
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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「日本株上昇期待高まる、米国株下値不安続く」
外国人投資家が米国株より日本株を選好している可能性も
先週(5月8~12日)の日経平均株価は、5月2日終値(2万9,157円)と比較して、1週間で約231円上昇して2万9,388円となりました。年初来高値の更新が続きました。米国株が四つの不安で上値が重い中、日経平均の強さが目立ちます。
日経平均とナスダック総合指数の動き比較:2021年末~2023年5月12日
米国株の四つの不安とは、【1】銀行システムの信用不安、【2】金融引き締めが続く不安、【3】景気悪化の不安、【4】債務上限問題のことです。これと比較すると、日本の投資環境は相対的に良好です。
日米の投資環境比較
こうした環境の差を見て、外国人投資家が足元、米国株よりも日本株を選好している可能性があります。四つ以降の日本株の上昇をけん引しているのは、外国人です。外国人は4月に入ってから5月2日までで、日本株(現物)を約2兆3,000億円、買い越しています。
外国人の気持ちを表しているのが、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏の言動です。
バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハサウェイは6日、2023年1-3月の決算を発表しました。同社は1-3月に米国株を104億ドル(約1兆4,000億円)売り越したことがわかりました。
米国株が好きで米国株に強気のバフェット氏も、短期的に米国株に懸念を持っています。そのバフット氏は日本株に強気発言を繰り返しています。6日の株主総会でも、日本株を引き続き買い増しする方針を語りました。
米国より日本の方が景況良好
米国で景気失速懸念が出ています。コロナ禍からの回復が早かった米国は、2021年にリベンジ消費で景気が過熱したために深刻なインフレが起こり、2022年からは急激な利上げとインフレによって、景気が減速してきています。
一方、コロナ禍からの回復が遅かった日本は、相対的に景況が良好です。新型コロナが5月8日に5類へ移行したことで、やっと消費回復が期待されるようになりました。外国人観光客が増加することによる、インバウンド消費の回復も期待されています。その差が、日米の景況指数の差に表れています。
先日発表になった、4月の米ISM景況指数は3月よりやや持ち直したものの、米国の景況が冷え込んだ状況が続いていることがわかりました。製造業は50割れが続き、好調だった非製造業も、インフレ・金利上昇の影響から景況分かれ目の50近くまで低下しています。
米ISM景況指数:2018年1月~2023年3月
一方、3月の日銀短観(日本銀行の短期経済観測)の大企業DI(業況判断指数)を見ると、日本の方が相対的に景況が良好であることがわかります。
日銀短観、大企業製造業・非製造業DIの推移:2018年3月~2023年3月
世界的な製造業の景況低下を受けて、日本の大企業・製造業DIも低下していますが、まだプラスで、マイナス圏に沈んではいません。大企業・非製造業は+20と非常に好調です。製造業と非製造業を合わせた、大企業DIは+10と景況は「良好」といえます。
米国は依然深刻なインフレが続いている。日本のインフレは相対的に軽微
先週発表になった4月の米CPI(消費者物価指数)から、米インフレが依然深刻な状況にあることが分かりました。総合インフレ率は4.9%まで低下しましたが、エネルギー・食料品の影響を除いたコア・インフレ率が5.5%と高止まっていることが問題です。
米長短金利(10年・2年・FF金利)推移:2021年1月4日~2023年5月5日
一方、日本のインフレ率も上昇してきていますが、米国ほど深刻ではありません。日本のCPIはまだ4月が出ていませんが、3月までは以下の通り推移しています。
日本のインフレ率:2023年3月
日本の総合インフレ率、コアコア・インフレ率推移:2020年1月~2023年3月
日本にもやっとインフレの風が吹き始めました。コアコア・インフレが3.8%まで上昇したのは、企業業績に追い風です。値下げばかりで値上げができない国だったのに、値上げが通る国になったことは、企業業績にとって干天の慈雨です。エネルギー価格上昇の輸入インフレがマイナスになる中、コアコア・インフレの高止まりが続けば、企業業績・株価にプラスと考えています。
日本株の投資判断
結論は、いつも述べていることと同じです。日本株は割安で長期的に良い買い場と考えています。米国で金融危機が起こらない限り、日本株は年初来高値を更新していく展開が続くと考えています。
私は、米国の金融システム全体に危機が及ぶとは考えていませんが、それでも財務の悪化した米国地方銀行の危機には注意が必要です。低金利下で放漫経営におちいっていた地方銀行の財務悪化は根が深く、簡単には解決しません。
米地方銀行の財務悪化が生じている要因は二つあります。一つはFRB(米連邦準備制度理事会)による急激な利上げ。これで、保有債券に巨額の含み損が発生しています。
もう一つは、米オフィス市況の下落です。金余りで貸出先が不足していた米地方銀行は、オフィスローンの残高を軒並み拡大させていたため、オフィス市況の下落で、不良債権が増加しつつあります。
米国では在宅勤務の普及で都市部の空洞化が進み、オフィス需給が悪化しています。リオープンが進んでも、その傾向に変化はありません。例えばニューヨークのオフィス街のミッドタウンは、リオープンで米景気が活況を取り戻しても閑散としたままです。いずれ、オフィスの解約が進む可能性もあります。
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(窪田 真之)
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